DVDの終焉は近い? ストリーミングの影響でフィジカルメディアに異変

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2019年12月25日 07:11  リアルサウンド

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 ついに海外では「DVDの終焉」が騒がれ始めた。


(参考:Netflix、YouTubeが失速? Apple、ディズニー参戦で新時代迎える“動画ストリーミング戦争”の裏側


 映画産業大国であるアメリカでは、DVDの落ち込みが加速し、スタジオやホームエンタテインメント産業は頭を抱えている。DVD購入者離れがアメリカでは深刻で、2018年はDVDとBlu-rayなどフィジカルメディアの売上高は前年比15%も減少した。


参照:https://arstechnica.com/gadgets/2019/04/dvd-and-blu-ray-sales-nearly-halved-over-five-years-mpaa-report-says/


 2010年代を見れば、DVD売上総額は2011年から2018年で67%も減少している。さらに2008年から過去10年を遡ると実に86%も落ち込んだ。


参照:The death of the DVD: Why sales dropped more than 86% in 13 years


 2019年も減少傾向は続いた。1月から9月の9カ月間の売上実績は前年比マイナス18.5%とさらに減少し、フィジカルメディア人気が遠のいている。


 かつて映画産業で欠かせない存在だったDVD市場の衰退を受けて、サムスンはアメリカ市場向けに4K Ultra HD Blu-ray対応や1080p対応のプレーヤーの製造を中止することを明らかにするなど、ハードウェア側も徐々に対応を始めている。


参照:Samsung to stop making Blu-ray players – CNET


 映画スタジオやエンタテインメント企業にとって、最もDVDやBlu-rayのセールスが伸ばせる時期だったはずの年末商戦時期もかつての勢いは無くなり、販売状況が変化しつつある。これまでマス向けにプロモーションを行ってきたスタジオは、出来る限りの特典を付ける戦略で、コアなコレクター向けのプロモーションを優先するスタジオが増えてきているのが現状だ。


 DVD市場と反対に、2011年からこれまででNetflixやHuluなど映像ストリーミング市場は1,231%という驚異的な勢いで成長を遂げ、市場規模も約130億ドル(約1兆4000億円)にまで拡大したという消費メディアの変容が背景にはある。


 アメリカでは現在、映像ストリーミング同士の競争が過熱しているが、映画スタジオやホームエンタテインメント産業はその影響を直接的に受けて、フィジカルメディアに依存してきた事業モデルから、ストリーミングを中心としたライセンスビジネスや広告ビジネスにシフトしている。映像ストリーミングでは2019年にApple TV+とDisney+(日本未上陸)が正式ローンチ。2020年にはHBO MaxとPeacockと大手メディア会社のサービスインが確定しているため、映画やドラマ、ドキュメンタリー、アニメなど人気コンテンツの配信に加えて、オリジナル・ドラマや映画の製作やライセンス獲得に各社が注力することが予想される。


 アメリカではこれまで大手メディア企業同士の合併や買収が相次ぎ、地上波TV局やケーブルテレビのビジネスとデジタル配信サービスが混在しながら競争してきた。それが最近ではディズニーのように単一企業で複数の映像ストリーミングサービスを運営するような大手企業も生まれている。大資本を軸にした巨大エンターテイメントの産業構造において、今後は映像ストリーミングビジネスが中心的役割を占めることは疑問の余地もない。


 アメリカのエンタメ・メディアでは、このような競争乱立の映像ストリーミングの現状を「ストリーミング戦争」と呼んだり、中には「ストリーミング・アポカリプス」(ストリーミング終末世界)と呼ぶジャーナリストもいるほどだ。


 アメリカのエンタメメディア「Variety」では、この「ストリーミング・アポカリプス」状態におけるDVD市場の行く末についてレポートしている。記事では、2010年代におけるDVDとストリーミングの消費傾向とビジネスモデルの移り変わりが書かれている。またDVD全体の売上低下は加速し続けているが、4K Ultra DH Blu-rayはニッチながら一定の需要があるという。


参照:How Home Entertainment Companies Are Navigating the Streaming Apocalypse – Variety


 DVD市場の低迷は独立系の映画製作者達にとっても大打撃だとする。映画製作の資金源としてDVDの売上が寄与していたからだ。


 こうした中、DVD売上の今後の見通しもやはり厳しいものとなっている。しかし一方では、アナログレコードのようにフィジカルフォーマットの人気が復活した音楽業界のように、DVDやBlu-rayに対しても所有欲やノスタルジーを喚起するフォーマットとして期待する少数意見もある。


 大手スタジオは、DVDやBlu-rayなどの高額商品をフィジカルディスクだけでなく、デジタルダウンロードやパッケージ販売と商品のラインナップを増やして、コレクター向けに販売する戦略にシフトしているという。そして自社または提携する映像ストリーミング・プラットフォームによるコンテンツ配信ビジネスを将来と見据えて、すでに動き始めている。


 例えばディズニーが配信する『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』では、オリジナルの映像をDisney+用に再編集して配信している。この編集はジョージ・ルーカス自らが関わったことが明らかになった。DVDやBlu-rayでは実現不可能でも、コンテンツのデータにアクセスできるストリーミングであれば、オリジナル作品を再編集して配信するといった映像技術はさらに進化するだろう。


 先日、日本でもアニメ産業の売上規模が「配信」が「ビデオパッケージ」を追い抜くという報道もあり、映像ストリーミングの利用が広がる日本でもDVDの役割は徐々に変化していくはずだ。


参照:アニメ産業の市場規模 過去最高更新 「海外展開」初の1兆円超 | NHKニュース


(ジェイ・コウガミ)


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  • 結局は配信側の胸先三寸で「昨日まで普通に聞けた・観られたものが突然だめになる」が普通にあるのがな…
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