■収入は多くはないけれど…
ケンイチさん(42歳)は4年前、7歳年下の女性との結婚を本気で考えていた。その時点で交際期間は約2年。彼女はわがままなところもあるが、それも許せてしまう。自分の意見をはっきり口にするところも好きだった。
「ところがプロポーズしたとき、彼女が『悪いけど、あなたの年収ってどのくらい?』と尋ねてきたんです。結婚するにあたってはやはり収入が不安だと。その気持ちもわかるので、正直に答えました。有名企業ではないけれど、サラリーマンの平均年収くらいです。そうしたら彼女、わかった、プロポーズの返事は2,3日まってほしいと」
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ロマンティックな雰囲気にならなかったプロポーズだが、彼はそれでも彼女がOKしてくれると信じていた。ところが3日後、返事はノーだったのだ。
「結婚したら専業主婦として家庭におさまりたい。でもあなたの年収だと子どもふたりを育てるのはむずかしいでしょ。結婚は生活そのものだから、冷静に考えたの」
それが彼女の言い分だった。
「2年もつきあってきて、今さらなんだよと当時は荒れましたね。毎晩、酒飲んでグダグダ愚痴ばかり言って。友人知人に毎晩慰められていました」
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ようやく立ち直った彼は、ここ数年、結婚相談所を通して多くの女性たちに出会ってきた。だが、当時の彼女以上に愛せる女性は見つからない。だんだん焦りが強くなり、40歳を越えてからは焦りがあきらめに変わっていった。
■彼女から突然の連絡
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1年ほど前のことだ。ある日突然、その元カノから連絡があった。
「会いたいと言われて、僕自身も彼女への思いが募っていたので、シッポ振って会いに行ったんです(笑)。そうしたら彼女、なんだかやつれていたんですよね。離婚したのとぽつりとつぶやいて涙を流して。思わず、どこのどいつだ、きみと離婚するなんて許せないと叫んでしまいました」
ケンイチさん、どこまでも“いい人”なのである。話を聞くと、ケンイチさんと別れた直後、彼女はそれまでに粉をまいていた別の高収入男性に突撃。ようやく結婚にはこぎつけたものの、夫の横暴ぶりに耐えかねて1年ともたずに離婚となったのだという。
「しかも実は婚姻届を出していなかった、と。彼女はてっきり出されていると思っていたそうです。自分の免許証などは名義変更しなかったのと聞くと、『めんどうだったからあとでやろうと先延ばししていた』そう。夫は自営業だったので、いろいろな手続きはやっておくからと言われたんだそうです。たまたま彼女が健康で病気にならなかったからいいようなものの、健康保険さえ空白になっていたようです。彼女は仕事を辞めてしまったから」
彼は彼女から話を聞いて怒りを抑えられなかったのだが、彼女は、最初に泣いてからは案外平気そうな顔で話を続けた。
「そして言ったんです。『やっぱりあなたみたいにそうやって、私のために怒ってくれる人がいい』と。あんなにあっさり年収で人を捨てておいて。ただ、僕も彼女には本当に弱いので、もう一度つきあいたいなと思ってしまった。でも数日後、彼女の友人から連絡が来たんです。『あの子、あなたのことをやっぱり扱いやすい男だわって言ってたよ』と。彼女は僕を下に見ているんですね。だから平気でブーメランみたいに戻ってきた」
彼は意を決して彼女を呼び出した。「きみが僕のことを本気で好きなわけではないのはわかっている」と。彼女はチッと舌打ちしたという。それが決定的だった。
本当はその後、「それでも僕はきみが好きだ」と言おうとしていたのだという。だが彼女の舌打ちが彼の心を覆した。
「あのままもう一度つきあって結婚していたら、今ごろ僕の毎日は地獄だったかもしれません」
今は彼女への未練もまったくないそうだ。