【2019年読まれた記事】くりぃむ上田晋也が“芸能人の政権批判NG”に敢然と反論!「安倍総理の風刺がダメなら、総理が吉本に出るのはどうなの」

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2019年12月29日 23:40  リテラ

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リテラ

TBSテレビ公式サイトより

 2019年も、残すところあとわずか。本サイトで今年報じた記事のなかで、反響の多かった記事をあらためてお届けしたい。

(編集部)

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【2019.06.13初出】

 ワイドショーや情報番組では、お笑い芸人がMCやコメンテーターとして跋扈しているが、本サイトがつねづね指摘しているように、そのほとんどは、松本人志を筆頭に、報道やジャーナリズムの役割など一顧だにせず政権擁護を垂れ流したり、あるいはせいぜい“俺はわかってる”気取りでどっちもどっち論をぶつような輩ばかりだ。



 しかし、そんななか、売れっこ芸人でありながら、政権批判にも踏み込み、異彩を放っているのが上田晋也(くりぃむしちゅー)だ。



 上田はこれまで『上田晋也のサタデージャーナル』(TBS)のなかで、「赤坂自民亭」問題を「えひめ丸の事故のとき、森喜朗首相がゴルフやってて退陣まで追い込まれたじゃないですか。僕はまったく同レベルの話だと思うんですよ」と一刀両断したり、沖縄県民投票の結果を無視して辺野古埋め立て工事を続行することに対し「真摯に受け止めるっていうのは無視することなのか」と述べるなど、政権に批判的な発言も臆せず口にしてきた。



 そして、6月8日放送回の『サタデージャーナル』でも、さらに突っ込んだ鋭い指摘を繰り出した。



「芸能人の政治的発言」をテーマにしたこの回では、「封じ込められているのは『政治的発言』ではなく『政権批判』である」という、テレビはおろか、新聞や週刊誌ですらほとんど指摘できていない構造に踏み込んだのである。



 まず番組はVTRで、佐藤浩市、村本大輔(ウーマンラッシュアワー)、りゅうちぇる、ローラといった、ここ最近に起きた芸能人の政治的発言が原因の炎上案件を紹介する。



 このVTRを受けたスタジオでは、パックンことパトリック・ハーラン(パックンマックン)が、メリル・ストリープ、テイラー・スウィフトといったトランプ大統領批判で話題となった芸能人の名前を出しつつ、アメリカでは体制批判をしたところで仕事がやりづらくなるようなことはないと解説した。



 翻って日本では、前述したとおり、佐藤浩市、村本大輔、ローラらのように「政治的発言をした芸能人」が攻撃を受け炎上するのが恒例となっている。これについて「日本では芸能人の政治的発言が忌避される」との解説がよくなされるが、上田はそうした見方に次のように疑問を呈した。



「なんで最近芸能人が政治的発言をしちゃいけないって言われ出したのかも、そもそもがよくわからないんですよ。別に民主党政権のときだっていっぱい言ってたし、その前の麻生政権、福田政権、その前の安倍政権のときも言ってた。でも、そのときの安倍政権って別にこんな空気はなかったですよね」



 この上田の指摘は重要だろう。「日本では芸能人の政治的発言が忌避される」とは巷間言われてきたことだが、上田はそうした「芸能人は政治的発言するな」という風潮が、実は単に「日本では」ということだけではなく、「第二次安倍政権下」特有のものであると、いまの安倍政権下の異様な言論状況を喝破したのだ。



 これを受けて、劇作家の鴻上尚史氏は「『政治的発言が問題視されている』という認識自体に誤りがある」と解説した。



●上田の番組が喝破した「芸能人の政治発言でなく政権批判がNG」という本質



「政治的発言が問題なんじゃなくて、実はよく見ると、政権を批判してるっていうか、反体制側の人たちが問題になっているわけで。要は、首相と一緒に飯食ってるのは誰も炎上してないわけですよ。すごい慎重に言わなければいけないのは、政治的発言がまずいんじゃなくて、政権に対する批判に対してすごく炎上するようになっているのは、すごくヤバいと思いますね」

 

 鴻上氏の言及も非常に重要かつ本質的なものだ。確かに、佐藤浩市にせよ、村本大輔にせよ、りゅうちぇるにせよ、ローラにせよ、ここ最近「政治的発言」で炎上した芸能人たちは全員が安倍政権あるいは安倍政権の政策に対して批判的な発言をした人たちだ。



 その一方で、安倍政権に媚びへつらう芸能人たちが炎上することはない。



 たとえば、TOKIO、大泉洋、高畑充希といった安倍首相と会食を共にした芸能人たちが叩かれることはないし、安倍首相をゲストに呼んで喜々として共演してみせた吉本新喜劇が批判に晒されることもなかった。



 また、松本人志、千原せいじ、つるの剛士、小籔千豊のように、政権側が主張する暴論を後押ししたり、排外主義を煽ったりする人たちの「政治的発言」が大きな問題となることもない。



 鴻上氏の言う通り、これまで炎上してきた発言はそのすべてが「政権批判」であり、逆に、安倍政権に利する発言が問題視されたことなどただの一つもないのである。また、上田の指摘した通り、民主党政権時代や安倍以前の自民党政権でも、現在ほど政権批判が問題視されたことなどなかった。



 つまり、巷間言われる「芸能人は政治的発言をするべきではない」という意見は、「芸能人は安倍政権の批判をするべきではない」という意味なのである。



 そして、安倍政権への批判はいっさい許さないという社会の風潮は、発言のみならず「創作」「表現」の領域にまで侵出しつつある。



『サタデージャーナル』ではその一例として、『笑点』(日本テレビ)の炎上騒動をあげた。



●上田晋也「『笑点』の安倍総理風刺がけしからんのなら総理が吉本新喜劇に出るのはどうなの」



 昨年5月に起きた『笑点』の炎上騒動については、当時本サイトも取り上げているが(https://lite-ra.com/2018/05/post-4041.html)、この日の『笑点』では、三遊亭円楽がトランプ大統領の言いなりになる安倍首相を、林家たい平が国民の声に耳を傾けようともしない麻生太郎を、そして、林家木久扇が沖縄の米軍基地問題を風刺し、ネトウヨ層から炎上攻撃を受けた。



 アシスタントの古谷有美アナウンサーからこの炎上騒動が紹介されると、上田は「え〜! 大喜利にまで(文句を)言い始めたの!?」としたうえで、すぐさま「『笑点』で『安倍晋三です』と(風刺を)語るのはけしからんと言うんだったら、安倍総理自身が吉本新喜劇に出るのはどうなのって僕は思いますね」と、大喜利で安倍首相を風刺した『笑点』より、安倍首相を出演させ選挙対策に協力した吉本新喜劇のほうこそおかしいと、吉本と安倍政権の癒着を批判した。



 上田の言うことはもっともである。しかし、現在の暗澹たるメディア状況において、これは『サタデージャーナル』だから言うことができた発言であるかもしれない。鴻上氏は上田の発言に頷きつつも、このように語るのだった。



「そういうのがゴールデン(の時間帯)で言えない現状になっているのがヤバいわけですよ。こういう早朝のね、いまなら言えるんだけど。もうだって、(安倍首相は)ジャニーズさん(のアイドル)と飯食って、吉本さんの舞台に出たわけでしょ。無敵ですよ」



『上田晋也のサタデージャーナル』は毎週土曜日の朝5時30分から6時15分に放送されている番組。土曜早朝とあって、時間帯的には注目度の高い時間帯ではない。



 そうでなければ、上田もここまで自由な発言が許されることはないのかもしれないし、ネトウヨからの電凸の嵐で番組の存続自体を危ぶまれる状況になっていてもおかしくないのかもしれない。



●政権批判への圧力に気を使うパックンに上田が「気持ちはわかる」



 実際、『サタデージャーナル』のMCをやることは楽な仕事ではないのだろう。それは、「圧力」をテーマにしたパックンとのやり取りでこぼれた上田の一言からもよくわかった。



 上田からの「正直、圧力を感じたりとかしますか?」という質問に、パックンは「まあ、正直、僕は『政治的発言に気をつけてください』と言われたことは何回かあります。ディレクター、あとは、事務所。ぶっちゃけ、弱小事務所なんですよ。かばいきれないのは事実なんです。やっぱり、気をつかうんです。言い切らないで疑問形にしたりして。『こういう政策に対して、こういう批判の声も世の中から出てきてるような気がしなくはないんですけど、そういうことをおっしゃる方に対してはどう答えますか?』(とか)。『(意見を言っているのは)俺じゃないよ』という雰囲気を(出す)」と答える。



 ジョーク混じりのパックンの答えに上田はいつものガハハ笑いを交えつつ「どんだけ守ってんだよ!」「汚いな手法が(笑)」とツッコミを入れるが、その後に、ポツリとこうつぶやいたのだ。



「まあ、気持ちはわかるけどね」



 実際、本稿冒頭で紹介したような上田の「赤坂自民亭」や沖縄に関する発言は、ネトウヨに噛み付かれて炎上している。その状況は本人も重々認識しているだろう。



 しかし、上田が『サタデージャーナル』でおこなっている仕事は、現在の地上波テレビにおいて稀有なもので、上田のような芸人が存在してくれていることは数少ない希望ともいえる。



 上田にはこれからもなんとか頑張ってもらいたいが、そんなことは上田自身も十分わかっていることなのだろう。この日の『サタデージャーナル』の最後に上田は、カメラに向かってこのように語ったのだ。



「自由闊達な議論を許さない空気というのは世の中をどんどん萎縮させ、閉塞感のある社会を生み出してしまいます。自分と考えの違う意見を封殺しようとすることは、ひいては自分自身の首を締めることになる。後々、自分も意見を言えない世の中を生み出してしまうのではないでしょうか。自分と考えの違う人の意見を寛容な心で受け止めて、さらに、客観的に自分の考えは果たして正しいんだろうかという疑いの心をもつことも大切ではないかと思います」



 自由闊達な議論がなされる社会をつくるためには、『サタデージャーナル』のような番組が絶対に必要だ。ネトウヨ層の炎上攻撃に負けず、長く続く番組になってほしい。そして、願わくば、もっと多くの人が見る時間帯に放送される番組になってほしい。

(編集部)

【2019.06.13初出】


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  • 考えの違う人の意見を寛容な心で受け止めて、客観的に自分の考えは正しいのかという疑いの心を持っていければと思います
    • イイネ!9
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