【2019年読まれた記事】ピエール瀧逮捕で石野卓球にワイドショーが「謝れ」攻撃! 同調圧力、連帯責任…日本の異常性を突いた卓球のツイートは間違ってない

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2019年12月30日 07:00  リテラ

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リテラ

Twitterで石野らしいリアクション!  なのにワイドショーは…

 2019年も、残すところあとわずか。本サイトで今年報じた記事のなかで、反響の多かった記事をあらためてお届けしたい。

(編集部)

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【2019.03.28.初出】

 手を替え品を替え、いまだワイドショーを賑わせ続けるピエール瀧の逮捕報道。明確な被害者もいない薬物事件にもかかわらず極悪人のように騒ぎ立てる「ヘル日本」ぶりは本サイトでも指摘してきた。



 そんななか、ワイドショーの新たな標的となっているのが、ピエール瀧ともに電気グルーヴを長年やってきた石野卓球だ。



 事件後の石野卓球の言動をあげつらってワイドショーは「謝罪のひとつもないなんて、どうしようもない大人だ」といった論を振りかざしているのである。



 3月12日にピエール瀧が逮捕されてから、石野卓球はこれといったコメントを出してこなかった。



 14日に、電気グルーヴとしてではなく石野卓球ソロとして出演予定だったイベント「Pump It Presents Takkyu Ishino」への出演が中止になったことを伝えるリリース文に、自身のツイッターアカウントで〈だとよ〉とコメントしたのが事件後の唯一のリアクションだった。



 それが、ここ数日になって石野卓球のツイッターアカウントが大きく動き始める。



 21日には、人気アニメ『ポプテピピック』と電気グルーヴがコラボしたパロディキャラが、泣きながらでんでん太鼓を叩いて走り、「容疑者!!」と叫んでいる画像をツイートした。23日にはサングラスをかけた自撮り写真に〈頭丸めてないよ〉とのコメントをつけてツイート。



 また、同日には、腕に「電」と書かれたタトゥーを入れた写真とともに、〈あと51歳初Tattoo入れました!“Zin-sayは電気グルーヴ、電気グルーヴは人生”真似すんなよ〉とのコメントを添えてツイートした。ちなみに、「人生」は1980年代後半にピエール瀧と共に組んでいた電気グルーヴの前身バンドの名前である。



 翌日には、〈電気グルーヴは出荷停止だけど石野卓球ソロは売ってる(容疑者がいないので)〉という皮肉なコメント付きで、AmazonやTOWER RECORDSといった小売店、Apple MusicやSpotifyといったストリーミングサービスのリンクをつけたツイートを投稿。



 同日にはさらに、電気グルーヴが『アナザースカイ』(日本テレビ/2019年1月11日放送)に出演した際、ベルリンで撮影したピエール瀧との2ショットとまったく同じロケーション・構図のまま1人で撮り直した写真をアップ。そこには〈容疑者部分をカットして撮り直し〉という、これまた皮肉なコメントが添えられていた。



 非常に石野卓球らしい、毒気に満ちたリアクションにファンは喜びとともに、胸を撫で下ろした。



 しかし、ワイドショーが言う「世間」は違ったようだ。



 25日放送『バイキング』(フジテレビ)でMCの坂上忍は一連のツイートを見て、苦々しげに言い放った。



「これはなに? よくわかんないんだけど、ブラックジョークみたいなもんなの? なんなの?」

「二十歳そこそこの(人)だったらさ、『バカじゃないのか? お前』って言って済むんだけど、同い年なんだよね、俺。やっぱり、ねぇ」

「結局、ピエール瀧容疑者が逮捕されたことによって、ピエールさんが携わっていた仕事関係の人たち、いまもなお、色々な思いを抱えながら後始末に追われているわけじゃないですか。で、もしかしたら、石野さんも被害を被ったひとりなのかもしれない。でも、ピエールさんの相方って考えたときに、これはね、やっぱり、違ったアプローチの仕方をしないと、納得は得られないし、まあ納得させる気もないからこういったことをね、ツイートしたりしているのかもしれないですけど、誰も得しないようなことをよくおやりになるんですね、この方は」



●TOKIO、純烈…メンバーの不祥事を謝罪会見までする必要はあったのか



 スタジオにいる他のコメンテーターも一様に似たような反応を見せた。ガダルカナル・タカは「本当にコアなファンの間だけで、『俺はへこたれずに頑張るよ』っていう意味のブラックジョークをちょっとずつ発信する分にはいいのかもしれないですけれども、不特定多数の人が見ることのできるようなツイートでこれをやると、さすがに、『この時期にこれはないよね』って言われるでしょうね、絶対」と発言。石野卓球も謝罪をし、殊勝な態度で生活するべきであると述べたのだ。



 IKKOも同じだ。IKKOは「やっぱり、私はちょっと理解できなかったですよね。やっぱりあの、社会人としてね、すごい迷惑をかけているわけじゃないですか。みんなに。こういうことではなくて、ちゃんと真摯に受け止めて。やっぱり、メンバーですからね」と語り、ガダルカナル・タカよりも明確に石野卓球が謝罪する必要性を説いた。



 さらに坂上はバカにしたような様子で「石野さんにしたら、『なにが社会人だよ、ロックなんだよ〜!』って気持ちかもね」と言い出し、この坂上のおじさんぶりには「電気グルーヴってロックなのか」「卓球がやってるのは、テクノであってロックじゃないのでは……」とネット上で多くのツッコミが上がった。



 挙げ句、「ピエールさんは素直に取り調べに応じているのに」と、なぜか逮捕されたピエール瀧よりも石野の対応のほうが重大問題くらいの、転倒した論調にすらなっていた。



 とはいえ、こういった論調は『バイキング』に限ったものではない。同日放送の『直撃LIVEグッディ!』(フジテレビ)でもコメンテーターの口から同様の主張がなされた。



 エコノミストの伊藤洋一は「漫才のカップルだって片方がなんかしたら片方が謝っているケースが多いよね、常識的にはそういう対応なのかなと僕は思います」と発言。



 また、教育評論家の尾木直樹も「今回30周年のツアーの最中なわけでしょ。それが中止になって、少なくともファンには迷惑をかけているわけですから、そういうところはね、ちゃんと説明して、『ごめんなさい』と言うのは、あったほうがいいんじゃないかなという気はしますけどね」とカメラの前で語った。



 コメンテーターたちは石野の対応に対し、「グループの誰かが不祥事を起こしたら、他のメンバーも謝罪するべき」と「連帯責任論」を振りかざしているのだ。



 実際、そのような対応をとるグループは数多い。とくにここ最近は、山口達也が強制わいせつ容疑で書類送検された際には他のTOKIOのメンバーが会見を開いているし、また、友井雄亮が過去に交際していた女性に対するDVを「週刊文春」に報じられた際には純烈の他のメンバーも謝罪会見を開いている。同じグループのメンバーも謝罪会見するのが、スタンダード化しつつあるのだ。



 TOKIOのケースにしろ、純烈のケースにしろ、明確な被害者のいる事例であり、加害者である当人は真摯に謝罪する必要があるだろう。しかし、なぜ、何の関係もない他のメンバーまで、スーツを着て公の場に立ち、深々と頭を下げて謝らなければならないのだろうか。



●石野卓球のツイートはピエール瀧逮捕をめぐる日本の異常性を突いたもの



 ましてや、ピエール瀧の場合は被害者のいない薬物事犯だ。「同じグループに所属する者」が、いったい誰に何を謝罪する必要があるのか。



 ワイドショーでは「仕事上、多大な迷惑をかけているのに」などと言っていたが、ライブ中止や販売中止、撮り直しなどという過剰な対応のほうこそが問題なのであって、石野が謝るような話ではないだろう。



 石野卓球に謝罪を要求している者たちが主張していることは、つまるところ、「他のみんなはそのようにしているのだから、お前もそうしろ」という同調圧力の強制でしかない。



 石野卓球のツイートは、皮肉や毒気に満ちたブラックユーモアでありながら、まさに今回の事件によって起きているこうした事象に対して、本質的な問いをぶつけているものだ。



〈電気グルーヴは出荷停止だけど石野卓球ソロは売ってる(容疑者がいないので)〉というコメントつきで小売店やストリーミングサイトのURLを貼ったツイートは、事件を受けて電気グルーヴの作品を流通できなくさせた音楽業界への疑問だ。



 また、〈容疑者部分をカットして撮り直し〉のコメントでベルリンの写真を撮り直したツイートも、ピエール瀧出演部分に代役を立てて撮り直しをしているテレビ業界や映画界への疑問である。



 悪ふざけではあるが、何の考えもなく悪ふざけをしているわけではない。彼のツイートには、悪ふざけを通じて伝えようとしている確固とした思いがある。



 26日、宇川直宏主宰のライブストリーミングサイト・DOMMUNEは「電気グルーヴ“だけ”の5時間!電気グルーヴ“だらけ”の300分!」と題し、電気グルーヴの楽曲をかけるDJイベント企画を放送した。DJ WADA、KEN ISHII、SUGIURUMN、Licaxxxといった著名なDJが参加したこの放送は大反響を呼び、日本のツイッターではトレンド1位になり、46万人以上の視聴者が集まった。



 それを受けて石野卓球はDOMMUNEのツイッターアカウントに〈宇川くん、WADAさん、イシイくん、Licaxxx、スギちゃん、そしてViewerのみなさん、本当にありがとう!心から感謝〉とリプライを送り、放送に関わった人たちに感謝を述べた。



 これこそが「自分の頭で考える」メディアの批評性であろう。



 坂上をはじめとしたワイドショーのコメンテーターは「なぜピエール瀧の関わる作品が自粛しなければならないのか?」「なぜ石野卓球が謝罪しなければならないのか?」ということへの論理的な説明ができるだろうか。おそらく「みんなもそうしているから」以上の説明はできないだろう。



 今回のピエール瀧の騒動は、地上波テレビを始めとしたオールドメディア(ラジオは除く。TBSラジオを筆頭に、この件に対してラジオの報道は真摯である)のどうしようもなさを改めて浮き彫りにしている。

【2019.03.28.初出】

(編集部)


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