上白石萌歌「何か新しい顔を見せたい」 同世代からの刺激を受けて立つ、次の舞台

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2020年01月02日 08:11  リアルサウンド

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上白石萌歌

 リアルサウンド映画部では、2020年新春特別企画として、連日に渡り、今注目したい俳優たちのインタビューをお届け。今回は、昨年、『3年A組ー今から皆さんは、人質ですー』(日本テレビ系、以下『3年A組』)、大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)〜』(NHK総合、以下『いだてん』)に出演し、インパクトを残した上白石萌歌。


 トーク番組『A-Studio』(TBS系)の11代目サブMCに就任から、「adieu」名義での音楽活動を本格スタートなど、昨年は役者以外の新しいフィールドでの挑戦もあったという上白石。今年は、本日1月2日放送の『義母と娘のブルース 2020年 謹賀新年スペシャル』(TBS系)への出演を皮切りに、映画やドラマの出演がすでにいくつも発表されている。


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 そして、上白石が昨年から思いを温めてきたのが、江戸川乱歩の『お勢登場』を原案にした倉持裕の作・演出による舞台『お勢、断行』だ。上白石が演じるのは、とある資産家の“娘”役で、大人たちの狡猾な思惑が錯綜する中、彼女もまたその渦の中に飲み込まれていく。インタビュー当時は、稽古開始まではまだ時間があり、脚本も上がっていない時期ながらも、かねてより“倉持ファン”であった上白石の本作への意気込み、そして上演初日2月28日に運命的にも二十歳を迎える彼女の現在の心境について話を聞いた。


■2019年は時間の流れが今まで生きてきた中で一番短い


ーー昨年は『3年A組 』だけでなく、大河ドラマ『いだてん』の前畑秀子役、『A-Studio』でサブMCを務めている姿も印象的でした。


上白石萌歌(以下、上白石):2019年は時間の流れが今まで生きてきた中で一番短くて、毎日が風のように走り去っていく感覚でした。その中でも、作品だったり、役からもらうものがすごく多くて、二十歳を迎える前の最後の一年の、良い蓄えの時期になっていると感じています。


ーー振り返ってみると、お姉さんの上白石萌音さんと姉妹共演された『羊と鋼の森』や『3D彼女 リアルガール』など、去年から映像のお仕事が一気に増えてきた印象です。


上白石:最近は映像中心にやらせていただいていて、今回の舞台が2年弱ぶりになります。それまで舞台は、1年に1本ペースくらいでコンスタントにやってきました。『3年A組』や『いだてん』など、映像作品で私を知ってくださった私と同世代の方にこそ、舞台という芸術作品に触れて欲しいという思いがあります。


ーー上白石さんの活動を多くの方に知ってもらうという意味では、バラエティ番組に出ているというのも大きそうです。


上白石:バラエティ番組は、お芝居をするのとはまた難しさが全然違います。なので、インタビューで聞き手をされていること、すごく尊敬しています。下調べも大変だと思いますし、聞き役に回ることで、その苦労が分かった気がします。自分自身も変わってきそうです。アシスタントを始めて半年くらいになるんですけど、色んなジャンルのステキな方に出会わせていただいて、そこで聞くお話が、何物にも代えがたい財産になっています。


■少女から大人への移ろいをテーマに演っていきたい


ーーそして2月から上演されるのが『お勢、断行』です。上白石さんはかねてより倉持さんのファンだと聞きました。


上白石:そうなんです。昨年、姉(上白石萌音)が竹中直人さんと生瀬勝久さんがタッグを組んだ演劇ユニット「竹生企画」による『火星の二人』に出演したので、観に行ったんです。その演出を倉持さんが手がけていたのですが、面白くて二回も観ました。一度では理解しきれない、何度も味わいたくなるところが魅力で、倉持さんの言葉の遊びの面白さだったり、とても面白いのだけど、そこに冷酷さを含んでいたり。そんなところが好きだったので、今回の台本が上がってくるのがすごく楽しみです。


ーープロットを読んでみたのですが、かなり禍々しい、愛憎渦巻く惨劇が繰り広げられそうですね。今回の役どころを演じるにあたって、どんな印象を持っていますか?


上白石:すごく無垢な少女が、色んな人や事件に巻き込まれ、違う色に染まっていく移ろいを演じられたらいいなと思っています。ちょうど私、この舞台の初日に二十歳になるんです。


ーー運命的なものを感じますね。


上白石:はい、運命的なものを……(笑)。私の役は、少女から大人への移ろいをテーマに演じていきたいなと思っているんですけど、私自身もちょうど年齢が変わるその境にこの作品があるので、すごいなと感じています。


ーー“少女から大人への移ろい”は、誰かとの話し合いで出てきたものではなく、上白石さん自身が感じているものですか?


上白石:大人になるということは、正しいものだけでなく、正義じゃないものも知っていくことだと思うので、そういうテーマをこの作品が提示してくれているのかなと現段階では考えています。


ーーなるほど。本作で演じられるのは「娘」という役で、抽象的な存在ですが、演じる役の名前に対する想いは作品ごとに持っていますか?


上白石:持っています。今年出演したドラマ『3年A組』(日本テレビ系)で言うと、私が演じた景山澪奈は、劇中で何度も名前が出てくる役でした。なかなかフルネームで呼ばれる役ってないですよね。いつも私は、名前の漢字一つひとつにもきっと意図があってつけられていると思っているので、そこから読み取ることができる印象を大事にしています。でも今回は「娘」なので(笑)、自分のイメージで補完して作っていく必要があるのかなと感じています。


ーー映像と舞台だと、共同制作していく方々との時間のかけ方が違いますよね。


上白石:ドラマとかだと、長くて3カ月ありますが、まったくお会いしない方もいます。それに比べ舞台は、最初から最後まで同じメンバー全員で作っていくので、誰が真ん中というわけでもなく、みなさんで回していくという感じが好きです。今回はある種の群像劇といった印象で、たくさんの先輩方もいます。


ーー本作の共演者は、ガチガチな演劇畑の方が多いですよね。


上白石:プレッシャーを感じています。最近は映像作品への出演が続いていたので、また違うアプローチが必要だと思っていますし、ストレートプレイはこれがまだ二度目なんです。一度目のときに劇団出身の方から得るものが多かったので、今回も良い意味で自分をゼロの状態にして、たくさん吸収していけたらと思っています。


ーーこれから準備していこうと思っていることはありますか?


上白石:江戸川乱歩さんの『お勢登場』を読んでいて、そこからイメージを得ています。今日倉持さんに初めてお会いしたんですけど、「ちょっと歌ってもらうかもしれない」と言われ……身構えています(笑)。


ーーでも、歌はお得意ではないですか。


上白石:うーん……まさかストレートプレイでも歌うとは思ってもみなかったので。


ーー脚本が上がって、実際に稽古が始まってから決まってくるものかもしれないですね。役者同士の化学反応の中から生まれてくるものもありそうです。


上白石:何より倉持さんの演出をみなさんが「面白い」と言うので、早く受けたいです。倉持さんの演出を受けるのが今回で二度目の倉科カナさんも「面白いよ」と言っていますし、それこそ姉からも、当時お稽古中に色々聞いていたので。絶対にたくさんの収穫があるだろうなと思っています。


ーーそれはまた翻って、今後の映像作品にも反映されてきそうです。舞台は観るのも演るのも、もともとかなり好きなんですか?


上白石:好きです。ここ最近ストレートプレイにハマっているので、やりたいと思っていました。昨年は、『3年A組』で共演した萩原利久くんが出演した『お気に召すまま』を観ました。友人の出演する舞台を観に行って、刺激を受けることもたくさんあります。


ーー『3年A組』は出演者の方がほぼ同世代でしたが、経験値が大きく違う方たちに囲まれる現場と、同世代が多い現場とでは違いがありますか?


上白石:同世代の方がいっぱいいる現場は、「悔しいな」とか、「この人良いな」という刺激がたくさんあります。それはお芝居もそうですけど、現場での佇まいだったり。生きている時間はほぼ変わらず、同じ条件下のはずなのに、「すごく良いお芝居をしているな」とか「ズルいな」と思うこともあります。逆に先輩の方々の場合は、同世代とはまた違う佇まいや背中で教えてくださる感じがあります。


ーーそれはまさに、この舞台の現場がそうなりそうですね。


上白石:たしかにそうですよね。すごく楽しみです。


■演じたことのないタイプの役で、何か新しい顔を見せたい


ーーちょうど二十歳を迎えるということで、この舞台に対する特別な思いはありますか?


上白石:昔から舞台という空間が好きで、映像よりも演じる役に血の通っている時間を長く感じられて好きなんです。そして今回、「正義って何だろう?」という問いをずっと持ちながらも、どんどん悪に染まっていく過程を楽しんでいけたら良いですし、今まで演じたことのないタイプの役なので、何か新しい顔を舞台で見せていけたら良いなと思います。


ーー最後に、今年にかけての抱負を聞かせてください。


上白石:もともとは、舞台のお仕事の方ばかりやっていた時期もありました。私は純粋に舞台が好きなので、映像のお仕事を頑張っている理由の一つに、もっと色んな方に舞台を観てもらいたいという願望があります。なのでこれからも、映像に出させていただいて良いものを残していけたらと思いますし、その結果、多くの方に舞台に足を運んでもらえるようになったら嬉しいなと思っています。


(取材・文=折田侑駿/写真=大和田茉椰)


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