ドラマ評論家が選出、2019年「配信オリジナル作品」ベスト3! 『全裸監督』で埋もれた佳作は?

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2020年01月02日 22:12  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

――『キャラクタードラマの誕生』(河出書房新社)『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ』(宝島新書)などの著書で知られるドラマ評論家・成馬零一氏が、2019年の配信オリジナルドラマからベスト3を選出。『全裸監督』以外にも注目作が並んだ。

 2019年の夏にNetflix(ネットフリックス)で配信された『全裸監督』が話題になったことで、定額制動画配信サービスで作られたオリジナル配信ドラマに注目が集まりつつある。有料という敷居の高さがあるため、配信サービスが完全に定着するのはまだまだ先という意見も少なくないが、『全裸監督』のヒット、そしてジャニーズアイドル・嵐の活動休止の背景を追ったドキュメンタリーシリーズがNetflixで独占配信されたことで、以前よりも加入者の増加は間違いないだろう。

 そんな「テレビから配信へ」とプラットホームが移りゆく19年において、『全裸監督』以外で印象的だった国内制作の配信ドラマを3本挙げてみたい。

『夫のちんぽが入らない』(Netflix、FOD)

 まずはNetflixだが、『全裸監督』以前にも良質で見応えもある作品は多数作られていた。ただ、海外マーケットを強く意識して作られた作品というと『全裸監督』のみだと言えよう。又吉直樹の小説をドラマ化した『火花』も、昨年話題となった学園ドラマ『宇宙を駆けるよだか』も優れた作品だったが、「邦画やテレビドラマの良質な作品がNetflixでも見られる」もしくは「テレビで放送することが難しい作品を緊急避難的に配信で放送している」という“撤退戦”に見えてしまうのがつらいところだ。

 今年配信された『夫のちんぽが入らない』も良質な作品だったが『全裸監督』に比べて話題にならなかったのは、良質な邦画を配信で見ているという感触が強すぎて、Netflix配信ならではのオリジナルドラマを打ち出したというイメージが薄かったからではないかと思う。

 NetflixとFOD(フジテレビオンデマンド)で配信された本作は、主婦の作家・こだまの自伝的小説(扶桑社刊)をドラマ化した物語。出版された際に、センセーショナルなタイトルが話題になったことを覚えている方も多いかもしれないが、物語は夫婦の性生活(タイトルの通り、旦那の男性器が大きすぎて挿入できない)の不一致と、子どもができないことに悩む妻の姿を描いたものだ。

 主人公の久美子を演じた石橋菜津美は200人のオーディションで選ばれた女優で、劇中で濡れ場も披露した。監督は『ふがいない僕は空を見た』のタナダユキ。劇中にはタナダが得意とする日本的な悶々としたいやらしさが充満している。印象が若干地味で『全裸監督』の盛り上がりに埋もれてしまった感はあるが、とても見応えのある作品である。

 配信というとNetflixとAmazonプライムの印象が強いが、国内メディアも充実している。Paravi(パラビ)は、TBS、テレビ東京、WOWOWの作品を中心とした国内配信サイトだが、オリジナル作品も定期的に制作している。

 一番の目玉は『ケイゾク』『SPEC』(ともにTBS系)といったカルトミステリーシリーズの最新作『SICK’S〜内閣情報調査室特務事項専従係事件簿〜』だろう。超能力者が起こした事件を捜査する刑事たちの活躍を描いた本作は、Paraviの目玉作品として現在第3部まで配信されている。しかし謎が謎を呼ぶ展開のため、シリーズが終わるまでは、どう評価していいのかわからないというのが正直な感想だ。

 『SICK’S』を除いて、同じParavi配信作品の中で今年を代表するのは、藤原竜也が主演を務めた『新しい王様』ではないかと思う。物語はアキバ(藤原竜也)と越中(香川照之)という二人の投資家がテレビ局買収を目論むというマネーゲームもの。脚本、演出は『カバチタレ!』(フジテレビ系)や『闇金ウシジマくん』(TBS系)といったお金にまつわるドラマを得意とする山口雅俊。

 アキバのモデルは明らかに堀江貴文で、00年代に起きたフジテレビ買収事件を下敷きにして、保守化するテレビ局を批判するという“テレビの在り方”を問う作品となっていた。

 配信という舞台を与えられた時に、テレビやYouTubeといったメディアを題材にすることが多くなるのは、自分の足元を再確認したいという作り手の不安があるからだろう。

 19年1月期に放送されたフジテレビ系深夜ドラマだが、FOD先行配信された『JOKER×FACE』もそんな作品で、加熱する動画配信者(劇中ではNewTuber)たちの狂騒を描いたダークなドラマだった。物語は謎の動画配信チャンネル「JOKER」を運営する流川(松本穂香)が、リストラされた中年サラリーマンの柳(松尾諭)を操り、アイドルのゴシップやオレオレ詐欺の内幕を暴くような危険な動画の配信を目論むクライム・エンターテインメント。人間の暗部に踏み込んでいく後味の悪いストーリーをクールな映像で見せつつ、ポップでダークな若者向けドラマに仕上がっていた。

 この3本はどれも傑作で是非見てほしい作品だが、不満があるとすれば、「配信ドラマならでは」の映像表現や物語にまでは昇華されていないことだ。それは『全裸監督』にしても同様で、かつてあった先鋭的な映画やドラマの代わりではなく、配信という手段でしか見ることのできないものを見せてほしい。すでに高いクオリティの作品が作れることは証明されたと思うので、今後は“配信でしか作れない”国内ドラマの新境地に期待したい。
(成馬零一)

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