『あしたの家族』母となった宮崎あおい、演技へのストイックさは健在! 永山瑛太らとのかけ合いも見どころに

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2020年01月05日 10:02  リアルサウンド

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新春ドラマ特別企画『あしたの家族』(c)TBS

 2020年1月5日放送の石井ふく子プロデュースの新春ドラマ特別企画『あしたの家族』(TBS系)で主演を務める宮崎あおい。一児の母となり、久々のドラマ復帰の印象を受ける宮崎は、移り変わり激しい女優界の中で、他の女優にはない、宮崎あおいだからこそ出せる魅力を持った唯一無二の存在。そこで今回は『あしたの家族』を前に、その魅力を再考察してみたい。


参考:『あしたの家族』場面写真はこちらから


 清純派から、演技派女優へと転身し、数々の実績を残し日本を代表する女優の1人となった宮崎あおい。最近はドラマや映画に年に1本ペースで、作品を厳選して女優活動をしている印象だ。


 本格的女優として活動を始めた10代の頃、映画『EUREKA ユリイカ』(2001年)でバスジャック事件の生き残りの兄妹や、『害虫』(2002年)では小学校時代の担任との恋愛や自殺未遂をする母親と2人暮らしをする中学1年生の役など、子供ながらに抱えきれない問題と闇を抱える難しい役を多く演じ、儚さや喪失感と背中合わせの存在感を若くして見事に表現していた。『害虫』の塩田明彦監督は宮崎について「誇り高いのと好き嫌いが激しいのが紙一重で存在している。その危うさがいいです」(CINEMATOPICS 2002年4月30日より)と評していたが、実際宮崎は、10代の頃はアイドル視される傾向を嫌い、映画だけに出演したいというこだわりがあったそうで、若くしてしっかりと女優という線引きをするなど仕事に対するプロ意識が高い。


 あまりバラエティ番組には姿を見せず、素を見せる機会も限られているためか、宮崎は昔の名優のように「俳優」というどこかミステリアスなイメージを守っているところが、同世代の他の女優にはない強みだと考える。そうしたストイックなこだわりがありつつ、黒髪の清楚なビジュアルがあるからこそ、NHKの連続テレビ小説『純情きらり』や大河ドラマ『篤姫』といった国民的ドラマの主演に抜擢される由縁だ。国民的女優、そして優しいヒロインへと変化を遂げるようになった。


 このような若い頃のベースがあり、『ソラニン』(2010年)や、『神様のカルテ』(2011年)、『ツレがうつになりまして。』(2011年)など、主人公の夫や彼氏が何か問題を抱え、まるで女神のようによき理解者として支えるヒロインの役を多く演じるようになる。絶妙な間合いで、主役を引き立てる抑えた演技をすることで、物語をコントロールし結果的に自分も輝く。最後に宮崎が笑った時の希望感は、何か救われた気持ちにさせる。誰もが理想的に思うヒロイン像を等身大に演じるからこそ魅力的で、多くのCMに起用されることも納得だ。


 今回『あしたの家族』のプロデューサーである石井ふく子とは、2018年の『あにいもうと』に続き二度目。石井と言えば橋田壽賀子とのタッグで『渡る世間は鬼ばかり』をプロデュースするなど、長年家族をテーマにした人情ドラマを手がけてきた第一人者だけに、相手を思いやる演技を得意とする宮崎は適任。ただこの作品では、喧嘩っ早く不器用な下町っ子は今まで見たことがない役柄だったので新鮮であったが、それ以上に、大型トラックを運転している女性の役だったので、どんな人物なのか知りたいがためにプロデューサーと監督に相談して大型免許を取得したり、役になりきる為に髪の毛を切りたいと直訴したりと、役作りに徹底する女優魂を見せていたことが大きな話題となり、宮崎の演技に対するストイックさは健在。


 そして『あしたの家族』で石井に二作連続で抜擢された宮崎への信頼度は絶大だ。宮崎演じる小野寺理紗は4年前の結婚式当日に新郎に逃げられたという過去を持ち、広い家で父・俊作(松重豊)と母・真知子(松坂慶子)との3人暮らし。そこに婚約者の兵頭幸太郎(永山瑛太)を連れてくるが、彼は父親の元部下であり現在の上司であった。この複雑な関係の中、2人の恋の行方はどうなるのかという、石井ふく子が得意とする王道のホームドラマ。名優でありユーモアのある演技をする4人なだけに、それだけでも面白いのは間違いないだろう。


 その中で宮崎が演じる理紗役は「本当に普通の女の子」と答えているが、役者の中では普通の役が一番難しいと言われているだけに、常に「役者」を貫いてきた宮崎がどう表現してくるのか。そして今回の役作りに関して台本に「お母さんみたいになりたい」というセリフがあったことで、「ひたすら松坂さんのキュートさを盗みたいと思って現場で過ごしていました」と松坂をずっと観察して役作りをしたというのが面白い。宮崎自身が一児の母親になったことも20代の頃の演技から何か変化があるのか、そこが一番の見所だと考える。


 家族の形が多種多様になり、ホームドラマの立ち位置が難しくなりつつある昨今、このドラマはどんな家族の形を描き、令和の時代の家族に一石を投じ希望を見出しているのか、大人になった宮崎あおいの名演技に注目したい。 


※宮崎あおいの「崎」は「たつさき」が正式表記。 (文=本手)


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