多くの人の心を掴む“YOSHIKIサウンド”の正体 SixTONES「Imitation Rain」を機に考える

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2020年01月05日 10:41  リアルサウンド

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YOSHIKI feat. HYDE『Red Swan』

 今、“YOSHIKIサウンド”に注目が集まっている。というのも、ジャニーズの新星グループであるSixTONESのデビュー曲、「Imitation Rain」をYOSHIKIがプロデュースしたのだ。まだリリース前にもかかわらず、歌番組やラジオで披露される度に「YOSHIKIサウンドが全面に出ている」と、SNSで話題になっている。多くの人々の心を掴む“YOSHIKIサウンド“の正体とは、一体何なのか? 今回はそれを紐解いてみたい。


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 まずYOSHIKIが手掛ける楽曲の大きな特徴は、激しいサウンドの中に光る繊細なピアノの音色だろう。X JAPANのYOSHIKIといえば、鬼のように速いテンポでドラムを叩くイメージの方も多いかもしれないが、YOSHIKIの音楽ルーツはクラシックにある。幼少期から父親の影響でピアノを始め、ベートーヴェンやシューベルトなどの偉大な音楽家から影響を受けてきた。そんなYOSHIKIの原点でもあるピアノの音色は、激しくハードなX JAPAN楽曲でも多く使われている。さらに、YOSHIKI曲のピアノは、印象的な旋律をリフレインするのが特徴だ。「Imitation Rain」のイントロで聴ける雨音のような美しいフレーズは、曲中の肝となる場所に何度も登場し、存在感を発揮している。


 また、同じくYOSHIKIがプロデュースした楽曲として、2018年にリリースされたYOSHIKI feat. HYDEの「Red Swan」にも触れておきたい。この曲は、「Imitation Rain」よりも煌びやかでバンドサウンドが強いが、同じくピアノで奏でられた美しいフレーズが、曲中に何度もリフレインする。ギターやドラムの激しいサウンドの中に散りばめられた、儚いピアノのフレーズ。その要素があるからこそ、リスナーは「YOSHIKIっぽいサウンドだ」と第一に認識するのだろう。また、切ない歌メロと疾走感の共存も、YOSHIKIの得意とするサウンドの一つだ。過去、SUZUKI SWIFTのCMソングにも起用されたX JAPANの「Rusty Nail」は、その代表格と言えるだろう。「Imitation Rain」で言えば、〈You said “I will be the sky and you will be the sun to shine”…〉から始まるAメロが該当する。この部分はサビやイントロに比べてテンポが速い上、打ち込みドラムの音が疾走感を演出している。そこにしっとりとした切ない歌メロが重なることで絶妙なバランスが生まれ、人の心を揺さぶるYOSHIKIならではのサウンドになるのだ。激しさと繊細さ、そして疾走感と切なさ。一見、バラバラに見える要素を共存させることが、YOSHIKIサウンドの特徴であり、彼の楽曲が多くの人の心を掴む理由なのかもしれない。


 また、YOSHIKIの作る楽曲はキーが高く、ボーカリストはハイトーンボイスを余儀なくされる。X JAPANの楽曲はキーが高いことは書くまでもないが、「Imitation Rain」や「Red Swan」も曲の肝となる部分はハイトーンが使われている。特に「Imitation Rain」の〈戻れない時代(とき)を振り返る…〉から始まる部分は、楽曲を通して聴いた中でも最も印象に残る部分だ。全体的にクールなイメージが強く、サビのフレーズも高ぶる感情を抑えたような控えめだからこそ、このハイトーン部分でリスナーの感情は揺さぶられる。このパートのメインボーカルを担当している京本大我は、ジャニーズの中でもトップレベルと歌唱力を高く評価されているが、美声を尽くしながらも極限まで高音を出そうと歌っている。YOSHIKIの楽曲は、痛みや孤独、悲しみなど、負の感情を表現したものが多い。だからこそ、ボーカリストに歌声を振り絞ってもらうことで、その感情の強さを表しているのかもしれない。


 さらに、YOSHIKIの楽曲は、サウンドだけではなく歌詞も特徴的だ。英語と日本語が入り混じったYOSHIKIの歌詞は、繊細な心の揺らぎや美しいフレーズ、破壊衝動が滲み出るような言葉で出来ている。「Imitation Rain」の歌詞にもYOSHIKIの色が表れている。元々英詩部分が多い曲ではあるが、少ない日本語の歌詞の中には、〈壊れてゆく ガラスの薔薇のように〉〈紅に染まるまで 雨に打たれて〉など、X JAPANの世界観に通じるワードが散りばめられている。特に「紅」「薔薇」「雨」「壊れてゆく」などの単語から、X JAPANの名曲「紅」「ENDLESS RAIN」「Rusty Nail」などを連想するリスナーも多いだろう。この歌詞は、アイドルのデビュー曲としては決して王道ではない。しかし、間違いなくYOSHIKIの色を感じられる要素の一つだろう。


 繊細なピアノの音、相反する要素が共存するサウンド、振り絞るハイトーンボイス、そして世界観のある歌詞。“YOSHIKIサウンド”は、こういった要素の複合でできていると言える。50年以上音楽に触れ続け、世界的ミュージシャンとして地位を確立してきたYOSHIKI。彼の作るサウンドは、今後も音楽シーンに多くの影響を与えていくだろう。(南 明歩)


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