SMセックスとDVの10年間ーー恋人の“暴力”を受け入れ続けた女の理由【元Vシネ女優・内縁夫刺殺事件】後編

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2020年01月05日 22:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

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 2008年1月26日の早朝。「夫が背中をけがしている」との119番通報を受け、マンションに到着した救急隊員が部屋で見たのは、下半身は裸で血だらけでベッドに倒れている藤田秀則さん(仮名・当時53)の姿だった。女(当時31 )は「午前5時ごろに背中を刺されて帰ってきた」と話し、確かに、商店街の途中にある中華料理店から現場マンションまで、約200メートルに渡り、血痕が続いている 。しかしマンションエントランスの防犯カメラに映る藤田さんはけがをしていない。また、「夫」と話すが、女との関係は夫婦でもない。さらに、女の顔と体には殴られたような痕があった。

 通報した女・木崎恵理子(仮名)は02年に芸能界を引退した元タレントだった。身長172センチ、バスト90センチのEカップという抜群のスタイルと美貌を武器に、グラビアアイドルとして活動し、9本のVシネに出演、テレビ出演も行うなど、精力的に芸能活動を行なっていたのだった。

(前編:22歳年上の“スポンサー”との奇妙な「性生活」――元芸能人が告白した10年の歳月

寝ていたはずが床でセックスの最中だった

 前日の夜、2人は自由が丘で待ち合わせをして食材などを買い込み、21時過ぎに帰宅。日付が変わって0時13分頃、再度2人で外出し、酒などを買い込み0時43分に帰宅した。さらに5時45分、一旦外出していた藤田さんが帰宅後、恵理子は果物ナイフで被害者を背中から突き刺したという。

 傷の深さは6センチ。普通の人であれば血が止まる可能性のある傷だったが、藤田さんは末期の肝硬変で血小板が減少しており、血が止まらなかった。自宅マンションまでの長い血痕は、刺される前、帰宅の途につくところ、吐血したために残ったものだった。

 恵理子が自ら、事件までに覚えていることを赤裸々に語る。

「その前日はご飯を作って一緒に食べて、でも彼がまだおなかすいてるって言っていたのと、野菜スープが飲みたいということだったので、2人でまたお買い物に行きました。コンビニに寄って2人で帰って来たら12時半すぎになっていたので、寝る準備をして、パジャマを着てベッドへ入りました。彼はテレビを観ていたんですが、『もう寝ちゃうの』と言って私の胸や体を触ってきて、イチャイチャしてきました。でも私は風邪気味だったので『後にして』と断りました。彼はすねていましたが、ケンカにはならず、そのまま寝ました。寝たと思っていました」

弁護人「次の記憶は?」

「彼にセックスで起こされました。なぜか床の上で、セックスの最中でした。私が下で、彼が上……。寝ていたと思っていたので、そこまでの記憶はありません。彼は焦げ茶のボーダーのセーター、下半身は何もつけてなく、私も、上は黒いレースのパジャマだけでした。私が気付いてから、あぁ彼はやっぱりしたかったんだな〜と、そんなふうに考える時間もあって、少しの間抱き合っていました。10分〜20分くらいです。

 しばらくして『衣里、背中見て』と、上にいた彼が横に来て、セーターをまくり上げました。私の記憶では右なんですが、横にシュッと傷がありました。血は出ていなくて、パカッと開いたような感じ……血もついていませんでした。『切り傷みたいになってるよ、また酔っぱらって転んじゃったの?』と聞くと『血は出てる?』って聞いてきたので『出てないよ』と言いました。『アロンアルファでくっつけて』というので、傷をはさむようにペトッとつけました。彼が、アロンアルファは手術で使う医療品で、一番キレイにくっつくといっていたので……私のもそうですが、暴力の切り傷は、アロンアルファで治していました」

 恵理子いわく、その後、藤田さんをベッドで寝かせ、布団をかけたという。うつぶせで寝ていた被害者が、クルッと左を下にして寝返りをうったとき、布団がはだけた。掛け直そうと布団に近寄ったとき、ベッドのマットにおびただしい量の血がついていることに気づき、119番通報に至った。

「私の記憶だと、切り傷から血は出てなく、アロンアルファでくっついていました。そして傷は右でした。痛がってはいなかったです。そうでなければ、強引に連れて行っています。『救急車呼んだから』と言うと彼は『来たら起こして、寝てるから。セックスの続きはあとでやろうね』って言うから、『そんなこと言ってる場合じゃないでしょ』と言ったのですが、今となっては『続きはあとでやろうね』っていう言葉が、彼の最後の言葉になりました……」

 弁護人も「傷は彼が刺したか第三者が刺したか、もしくは彼の暴力で被告人は意識もうろう状態で強制された可能性があり、責任能力はなく無罪であります。被害者は重度の肝硬変を患っており、傷害と死亡に因果関係はありません」と主張した。商店街に長く続いていた血痕は、犯行前のもので、藤田さんが吐血したためにできたものだという。

 二人の日常的なセックスにおける「SM」の、身体的ダメージの大きさが見え隠れする。実際、通報時の恵理子も、全身にけがを負っており、取り調べ時に刑事に指摘を受け、はじめて鼻の骨を骨折していることに気づいたのだという。セックスだけでなく、日常生活でも暴力があったと、恵理子は証言した。

「記憶がないということは今までもありました。4〜5年前から、寝てたと思ってたのに、っていうことが何度かあり、ここ1年は、すっぽり記憶がないことが多かったです。気づくと、起きようと思っても体が動かなかったり、痣だらけだったり、ベッドで寝てたのに床の上だったり、セックスで起こされたりっていうことがありました。

 起きてから『昨日、衣里になんかした?』と聞くと『またキチガイになって衣里を殴った』って聞いて、あ、そうか、と。そういう時は部屋の中のモノが壊れ、あらゆるモノが散乱していました。彼はケンカ慣れしていて、右手も左手も使えます。左右の拳で殴られ、蹴られ、モノで殴られる……酒ビン、ベルトのバックル、フライパン、全身鏡、物干パイプ、胡蝶蘭の鉢など……。あとは、掃除機の柄の部分持って、カウボーイのようにぐるぐる回して本体をぶつける……走行中の車から振り落とされる……ウイスキーをかけられ、馬乗りになって顔や頭を拳で殴ったり、床や壁に叩き付けたり、頭をボールのように踏まれて蹴り上げられたり、みぞおちを蹴られたり……」

 凄まじい暴力の詳細を、恵理子は法廷で淡々と語る。これらの行為で恵理子は骨や歯を折り、頭を縫うなどのけがを負ってきた。にもかかわらず、恵理子は藤田さんのことを心から愛していたため、暴力を理解しようとしたのだという。

「この件に関しては、10年近く、殴られる度に悩んだんですが……ん〜、私が、なぜ殴られないといけないのか、ってよりも、何故、彼は私のことを殴るのか。必死で理解しようとしていました。悩んで出した結論は、暴力は不器用な彼の愛情表現の1つ。それとして受け止めました。彼はプライドが高いゆえ、傷つきやすく、弱く、不器用な人だと私の目には映っていました。やめてほしかったですが、彼の愛情表現として受け入れていて、別れようと思ったことはありません」

 こうした日常における暴力のあと、藤田さんはいつも「俺が悪い」と自分を責め、自傷行為を始めた。恵理子を殴っていた酒ビンで自分を殴ったり、ナイフを持ち出して体を傷つけたり、また恵理子にナイフを持たせ、傷つけさせようとしたり、ありとあらゆる方法で自傷行為を行うのが常だった。

「自分の体にナイフの刃を押しあて、柄の部分を持たせ、引っ張って誘導して引き寄せる感じ……私は止めてました。ナイフで刺したことはこれまでありません。今思えば、自虐行為のあと、セックスしていました。当然、セックスする場面じゃないので私からは……私の中では求めようとも思わない状況下です。でもなぜセックスできるかと言えば、彼が勃ってるからなので、私は受け入れていました」

弁護人「あなたはどうして受け入れてたの?」

「複雑な思いがありますが、自虐行為を止めることができて、ほっとした気持ち……ここで断ると、第二ラウンド始まりかねないという思い……体力ない状態なので、拒否するより受け入れる方がラク……。彼が泣きながらセックスする姿を見て、不器用な彼の愛情表現なのかな、と思っていました。好きだから一緒にいる。拒否する理由はありません。いつでもどこでもセックスできるのが恋人だと思っています」

 刺した記憶がないという恵理子の主張は、ナイフから藤田さんと恵理子の二人のDNAしか検出されなかったことから退けられた。事件当時の恵理子の精神状態を判断するために精神鑑定も行われたが、その結果から「事件当時、被告人の意識は清明で、その責任能力に何ら問題はなかった」とも結論付けた。そうして、恵理子に対しては「SMプレーの行き過ぎによる行為」として懲役4年が求刑され、懲役2年6月の判決が言い渡された。

「犯行は被害者の暴行を不器用な愛情表現として受け入れ続け、そのような関係を根本的に変えようとしてこなかったという男女関係に起因しており、被告が犯行に及んだことは同情できない。たとえ被害者から頼まれて刺した可能性が高くても実刑は免れない」(裁判所)

 恵理子は法廷で「刺した記憶がない」と主張したが、彼女の精神鑑定にあたった医師は「記憶が清明」だと判断している。であればそのとき、本当は何があったのか。裁判所が言及した通り、藤田さんは恵理子に、自らを刺すように、強く求めたのか。であれば「いつも止めていた」という恵理子はなぜ、刺したのか。

「私は……彼のことを心から愛しています」

 最終陳述でも、震える声で恵理子は、こう言ったのだった。藤田さんが刺される直前、二人の間に何があったのかは、彼女しか知らない。

【参考文献】
「週刊新潮」2008.02.07 
「週刊ポスト」2009.02.13 
「週刊女性」2008.2.26 
「週刊大衆」2002.4.8 
「アサヒ芸能」2008.2.21 

 

このニュースに関するつぶやき

  • 藤田と絵里子と衣里っていう3人の登場人物だと思っていたら、絵里子と衣里は誤変換で同一人物なのね。二股してたなら刺されてもしゃーないとか思って読んでたら違ったw https://mixi.at/a1HzvbW
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  • おかしな男ですね。吐血してるなら病院に行かないと。
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