『テラスハウス』東京編:25〜28話ーー東京は“通過点”の新メンバーたちが織りなす“第二章”

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2020年01月07日 07:41  リアルサウンド

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『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』(c)フジテレビ/イースト・エンタテインメント

 既存メンバーの卒業と新メンバーの入居。感傷に浸りながらも間髪入れずに訪れるそれは、テラスハウスの醍醐味のひとつだ。流佳による英語での卒業スピーチや、夢を叶えたペッペがコンビニに陳列された『週刊スピリッツ』を手にして目を潤ませる場面など、春花を含む3人のメンバーが自身の成長を実感し、一気に卒業していく様子を捉えた25th WEEK。その後の26th WEEKからは新メンバーが続々と入居し、「国際色豊か」という言葉だけでは言い表せない多くの意味での様変わりを見せてくれている。第一章が終わり第二章がはじまったようなダイナミックな変化を遂げた25〜28th WEEKを振り返っていこう。


(参考:『テラスハウス TOKYO 2019-2020』、“東京の今の若者像”を描き続けた2019年を振り返る


・ブロッコリーパスタと漫画連載


 初期メンバーが全員卒業するに至った25th WEEKまでを第一章と捉えるならば、その大枠の展開を振り返るうえで“流佳の成長”に触れないわけにはいかないだろう。彼のオリジナル料理であった“ブロッコリーパスタ”はカルボナーラ風のちゃんとしたパスタに変身を遂げた。さらに流佳は、英会話教室に通い続けて上達した英語を使ってテラスハウスへの感謝と卒業する意思をみんなに伝える。「この環境がなければもっとヤバイ人間だった」と語る彼がたどたどしくも自信たっぷりに英語でスピーチをしてみせたというのは、なかなかに感慨深いものがあった。小さな一歩もやがて大きな一歩につながる。そのことを示した流佳の功績を素直に称えたい。


 そんな流佳が「スパイダーマンになりたい」と言っていたように、テラスハウスには夢を追うメンバーがこれまでにも多数在籍していた。しかし意外にも、その夢が叶う場面に私たち視聴者が立ち会えることは無いに等しかったように思う。その点においてもテラスハウス史上最大の感動的なシーンになったのが、ペッペが漫画連載の夢を叶え、コンビニで自身の漫画が載る雑誌を手にした瞬間だ。


 「これ私が描きました」とペッペが思わず店員さんに話しかけたあと、まるでそれが親戚の子どもの功績であるかのように親身に接してくれたあの店員のおばちゃんがさらなる感動を引き寄せてくれた。東京という“都会の街”で交わされる“温かいコミュニケーション”という意外性。ペッペが訪れた『ヤマザキYショップ』のような半ば個人経営に近い(親密なコミュニケーションが存在する)コンビニも実はまだまだ存在していて、そんなことも教えてくれるのもまたこのリアリティーショーの醍醐味だろう。


・東京は“通過点”である新メンバーたち


 東京という街が舞台なだけあって、これまでのメンバーは“仕事”への想いを一際強く持っていたように思う。象徴的なのは、春花に思いを寄せながらも漫画を書くことに忙しく、なかなか恋愛に精を出すことができなかったペッペの姿だ。東京が仕事面での“終着地点”である場合、その仕事が落ち着かないと恋愛をしにくいということは往々にしてあるかもしれない。一方で新メンバーの特徴として挙げられるのは、東京は“終着地点”ではなく“通過点”であるということ。


 春花、流佳、ペッペと入れ替わりで入ってきた3人の新メンバー。ドイツとロシアのハーフであるビビはハリウッドで活躍する女優を志しながら、「パートナーを見つけられたら」と恋愛に前向き。スタンダップコメディに挑戦している快は、数カ月前に大失恋を経験しつつも、そのエピソードが彼の人生における恋愛の重要性を物語っているようだ。リリー・フランキーの付き人という異色の肩書きを持つトパスは、人見知りと言いながらも恋愛には積極的なよう。ハリウッドを目指すビビに、これまで数カ国を転々とし現在は英語でのコメディに取り組む快。まだ夢が見つかっていないトパスも含め、現状は東京に住み仕事をしているものの、その誰もが東京を終着地点としては捉えていないようだ。それは凌や花といったスポーツ選手たちにも、基本的に同じことが言える。


 4週に一度のこの振り返りコラムでは何度も「恋愛のムードが高まってきた!」と期待を込めて書いてきたものの、いまだ一向にその予想へたどり着くことはなく、カップルも生まれていない……。しかしここに来て、恋愛をする余裕と人生における恋愛の重要性を強く感じているメンバーが一気に加入し、ようやく恋愛模様が展開していく空気が漂ってきた。というよりも、加入してすぐにビビは凌に心奪われ、快はビビを、トパスは愛華をデートに誘うなど、まるで月9ドラマのような恋愛模様が現在進行形で繰り広げられている。


 そのなかでも、とりわけ「しぐれている」親密な雰囲気を漂わせる凌とビビ。怪我をしていなければ凌はビビにガンガンアタックしていたのではないか、とスタジオメンバーは口にするが、むしろ逆であるようにも思う。落ち込んでいるときだからこそ、あの気さくさやどこまでも一致していく性格に救われたのではないか、と。怪我を治したあとに一緒に外へ出かけるのをお互いにきっと楽しみにしているはずで、そのじれったさも恋愛促進剤として効いているようだ。


 「自分のやることをしっかりやってないと、いい人って現れないと思う」(25th WEEK)と凌が言い、「自分を高めていってもっといい人間になったときに(好きな人が)現れるんじゃないかな」(26th WEEK)とビビが言う。その価値観の合致にも驚くし、28th WEEKでベロべロに酔っ払って愛に飢えていることを訴えるトパスに放つビビの言葉とその人間性の成熟も見事だ。年上・年下関係なく、アドバイスをしてくれるような人と付き合いたいと、これまで何度も口にしてきた凌の絶好の相手が現れたと言う他ないだろう。(原航平)


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