Juice=Juiceが「ひとそれ」で首位獲得 BEYOOOOONDSも躍進見せた『2019年度ハロプロ楽曲大賞』

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2020年01月07日 15:41  リアルサウンド

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『「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?/25歳永遠説』(通常盤A)

 ハロプロを愛する者たちの間で毎年恒例のファンイベントとなっているのが『ハロプロ楽曲大賞』。インターネット上で投票を募り、1年間に発表された楽曲に順位を付けてみんなで楽しく盛り上がろうという趣旨の催しである。昨年末も『第18回ハロプロ楽曲大賞’19』と銘打って開催され、3585人が投票参加して大きな盛り上がりを見せた。(総順位などの結果は公式サイトをご覧ください)


参考:Juice=Juiceは、女性の多様なあり方を肯定するーー単独公演で見せたグループの“今”


 リアルサウンドでは毎回順位に関する分析記事を寄稿しているが、今回もまた2019年版記事をここにお送りする。それでは早速順位を振り返っていこう。(以下の論考は、ランキングとあわせてお読みください)


■楽曲部門1位:Juice=Juice「「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?」


 2019年度の第1位に輝いた楽曲は、Juice=Juice「「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?」。少し長めの曲名が示しているように、女性の孤独感をテーマとした歌詞が、オーソドックスな歌謡ロックサウンドで歌われる一曲となっている。シンプルだが普遍的なメッセージ性を伴った楽曲を、ハロプログループの中でも随一の歌唱力を誇るJuice=Juiceが歌うことで、多くのリスナーの共感を呼んだ形だ。


 作詞作曲はシンガーソングライターの山崎あおい。山崎は前回のハロプロ楽曲大賞でも、作詞作曲を手がけたアンジュルム「Uraha=Lover」「泣けないぜ…共感詐欺」の2曲がそれぞれ10位・18位と高評価を得ており、今回は満を持しての1位獲得となった。


 6月発売の本曲は、日本レコード協会により8月度のゴールドディスクに認定されたり、MVのYouTubeでの再生回数が早々に100万回を突破するなど好調だった。それを受けて、発売からしばらく経った後にリリースイベントが追加開催されたり、新メンバーの工藤由愛と松永里愛を加えた8人での新録音バージョンのシングルCDが10月にリリースされるなど事務所側もアクションを起こし、ロングランヒットへ結びついた。


 本曲の評価については「ハロプロの枠を超えて、外の層へも届いた」と結論づけられそうだが、もちろんそれもありつつ、従来のハロプロファンへもちゃんと響いたのでは、と筆者は考えている。前述したように、このシングル以降Juice=Juiceは新しいリリースをまだ行っていないので、この曲が常に最新曲という状態だった。それもあり、テレビ番組『うたコン』(NHK総合)や『ミュージックフェア』(フジテレビ系)への出演、また連続ドラマ『歪んだ波紋』(NHK総合)での本人役出演などの機会では、常に本曲が持ち歌として披露されていた。さらに12月に開催されたJuice=Juice初の国立代々木競技場 第一体育館ワンマン公演においては、本編1曲目では宮本佳林歌い出しでのノーマルバージョン、アンコール1曲目では段原瑠々が歌い出しの新録音バージョンを歌唱するという演出もあった。このような数々の名場面は、ファンの印象にも鮮烈に残っていることだろう。


 ロングランヒットとなった「「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?」だが、曲名の略称はメンバー発案により「ひとそれ」と呼ばれている。ちなみにハロプロ楽曲大賞と同時開催されたアイドル楽曲大賞では、インディーズ/地方アイドル楽曲部門の第1位に桜エビ〜ず(現ukka)「それは月曜日の9時のように」が選ばれている。こちらの略称は「それ9」なので、2019年は「ひとそれ」と「それ9」が1位に輝いた年として今後記憶されていくことになる。


■楽曲部門2〜3位:BEYOOOOONDS「ニッポンノD・N・A!」「眼鏡の男の子」


 2019年はハロプロ新グループのBEYOOOOONDSが躍進した年でもあった。そのメジャーデビュー作となるトリプルA面シングルの内の2曲が、それぞれ2位・3位を獲得した。


 3位の「眼鏡の男の子」は、グループ結成後の初オリジナル曲として2018年夏からライブ披露されていた楽曲。曲中に寸劇パートが採り入れられており、オリジナル曲第2弾「文化祭実行委員長の恋」も同趣向だったことから、BEYOOOOONDSのカラーを決定づけた一曲といえる。寸劇パートを導入した楽曲としては、古くはモーニング娘。「Mr.Moonlight 〜愛のビッグバンド〜」、近年ではカントリー・ガールズ「わかっているのにごめんね」などがあったが、それらとはまた異なる形で、楽曲内にてひとつのストーリーを表現するというスタイルが新鮮だった。


 2位「ニッポンノD・N・A!」は、曲中での「D・N・A!」という掛け声からもわかるように、2018年に大ヒットしたDA PUMP「U.S.A.」へのオマージュとなっている。だが曲調は1990年代に人気を博した小室哲哉プロデュース楽曲を彷彿とさせるダンスポップサウンドであり、さらに曲中ではテレビ番組『学校へ行こう!』(TBS系)の名物コーナー「未成年の主張」のパロディ的なパートもあるなど、数々のフックが仕込まれている。BEYOOOOONDSの楽曲の中でも、特にわかりやすく盛り上がることができるノリの良さが人気を集めた要因だろう。


<楽曲部門4位〜>


 以下はグループ別に見ていこう。


■モーニング娘。’19


 2019年のモーニング娘。’19は、3月リリースのベストアルバムに収録の4曲、6月リリースのシングルからの2曲、計6曲のみというノミネート数の少なさだったが、その6曲すべてが50位以上に入るという強さを見せた。


 両A面シングルだった『人生Blues / 青春Night』は、それぞれ7位と4位をマーク。ハロプロ楽曲の定番アレンジであるディスコファンク調の「青春Night」のほうがより高い支持を集める結果となった。ベストアルバム収録曲のうち、新曲2曲の「I surrender 愛されど愛」「恋してみたくて」も8位・9位と上位で、トップ10内の4曲をモーニング娘。’19が占めた。


■アンジュルム


 前回のハロプロ楽曲大賞’18では「46億年LOVE」が見事1位に輝いたアンジュルムだったが、今回のグループ最高位は5位の「赤いイヤホン」。作詞作曲:星部ショウ、編曲:大久保薫によるクールなEDMサウンドは、アンジュルムの強さ/凛々しさを体現したかのような一曲で、アルバム曲にもかかわらずシングル曲をはねのけてのグループ最高位となった。


 和田彩花卒業直前にリリースされたアルバム『輪廻転生 〜ANGERME Past, Present & Future〜』は充実作で、ここからのアルバム用新曲は数多くランクインしている。12位「人生、すなわちパンタ・レイ」、22位「いとし いとしと Say My Heart」、29位「帰りたくないな。」など。アンジュルムは2019年に2枚のシングルを発売したが、そこからの楽曲での最高位は「全然起き上がれないSUNDAY」の13位。


■Juice=Juice


 1位に輝いた「「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?」のほか、10位には「微炭酸」がランクイン。「ひとそれ」の6月に先駆けて2月にリリースされたシングル曲だが、作曲編曲はKOUGAで、作詞は「ひとそれ」と同じ山崎あおい。この曲で山崎あおいの歌詞世界が一旦リスナーに浸透したことも、「ひとそれ」のヒットの一要因だったのかもしれない。


 Juice=Juiceは1年のうちに2人の卒業者を出したが、梁川奈々美の卒業曲「Good bye & Good luck!」は47位、宮崎由加の卒業曲「25歳永遠説」は20位を記録した。


 メンバーの宮本佳林は、グループに在籍しながらのソロライブ開催を実現させたが、そのライブ用に作られて配信リリースもされた楽曲「どうして僕らにはやる気がないのか」は43位だった。


■カントリー・ガールズ


 昨年12月で活動休止に入ったカントリー・ガールズだが、ラスト配信シングル「One Summer Night 〜真夏の決心〜」は15位でグループ最高位に。そのc/w曲だった「夏色のパレット」は32位だった。


 Juice=Juiceと兼任だった梁川奈々美の、カントリーにおいての卒業曲「弱気女子退部届」は19位。〈わたし、やめます!〉というサビの歌詞がインパクト大だが、この曲の作詞は児玉雨子。前述の「25歳永遠説」も同女史によるもので、2019年も雨子メソッドの効いた楽曲が多数発表された。


■こぶしファクトリー


 こぶしファクトリーのグループ最高位は、アルバム『辛夷第二幕』収録曲「消せやしないキモチ」の11位。ライブでは以前から披露されていたモータウン調のポップな楽曲だ。シングル曲では「ハルウララ」が16位をマークしており、しっとりとした曲調のこぶし版桜ソングといった趣き。2曲ともこぶしファクトリーのパブリックイメージである力強さ/アッパーさとは少し異なっており、別の良さが出た楽曲が支持を集めた形だ。


 アルバムには新曲が多数収録されていたが、そのうちの5曲はメンバー5人それぞれをフィーチャーした曲となっている。それらの順位を見てみると、33位「開き直っちゃえ!」、34位「好きかもしれない」、35位「明日の私は今日より綺麗」、38位「アンラッキーの事情」と、30位台に固まっているのが面白い。そこから頭一つ抜けて24位だったのは、広瀬彩海メイン曲の「Come with me」。これもジャジーな曲調がこぶしにとって新境地なサウンドだった。


■つばきファクトリー


 2019年のつばきファクトリーは、演劇サントラを除けば、CDシングル1作と配信シングル1作のみというノミネート数の少なさだった。そこから上位50位以内に入ったのは、14位「ふわり、恋時計」と17位「三回目のデート神話」。どちらも10位台に入ったのは立派だが、50位内に8曲を送り込んだ2018年の名曲ラッシュに比べると、いささか寂しいと言わざるを得ない。


 「ふわり、恋時計」も、前述のこぶしファクトリー「ハルウララ」と同傾向のバラード曲で、これがグループ最高位となった。「三回目のデート神話」は、2018年第2位だった「今夜だけ浮かれたかった」と同じ作家陣(作詞:児玉雨子、作曲:中島卓偉、編曲:炭竃智弘)によるアッパー曲だったが、「今夜だけ〜」ほどの評価は得られなかったようだ。


■BEYOOOOONDS


 BEYOOOOONDSが2019年に躍進したのは、メジャーデビューシングルの強さもあるが、そこをさらに後押ししたのは11月発売のアルバム『BEYOOOOOND1St』の完成度の高さだろう。ここからは4曲がトップ50入りしており、アルバム曲最高位は「元年バンジージャンプ」の18位。同曲はBEYOOOOONDS楽曲を多数手がけている星部ショウが、作詞作曲のみならず編曲まで担当している。これもまたディスコファンク調で、「赤羽橋ファンク」の系譜に新たな一曲が追加された感がある。他のアルバム曲では「アツイ!」が26位、「恋愛奉行」が41位、「恋のおスウィング」が48位。


 BEYOOOOONDSには名前のあるグループ内ユニットが2つ、名前の無いユニットが1つあり、名無しユニットの楽曲「We Need a Name!」(平井美葉、小林萌花、里吉うたの)は49位にランクイン。ほか2つのうち、雨ノ森 川海「GIRL ZONE」は30位で、CHICA#TETSUは「都営大江戸線の六本木駅で抱きしめて」「高輪ゲートウェイ駅ができる頃には」の2曲がそれぞれ6位・31位。ユニットで一番評価されたのはCHICA#TETSUという結果となった。


 CHICA#TETSUのこの2曲はどちらも電車をテーマとした楽曲で、編曲に清水信之を迎えているのがポイント。ハロプロ楽曲初登板となる清水は、1980年代から現在まで数々のシティポップ/シンセポップ名曲のアレンジを手がけているベテラン。氏の力添えもあって、特に「都営大江戸線の六本木駅で抱きしめて」のほうはアイドルポップスの真髄といえる可愛らしいサウンドに仕上がっており、高順位も納得だ。


■その他


 正規のハロプログループ以外にも、OGやアップフロント所属グループなどの楽曲がノミネートされているのがハロプロ楽曲大賞の特徴。その中で最高位だったのは、PINK CRES.「トウキョウ・コンフュージョン」の37位。クラブミュージックの様々な要素を再構成したかのような怪曲/快曲で、堀内孝雄と高山厳がゲスト出演したMVも話題となった。


 道重さゆみはハロプロ現役を退いたにもかかわらず、ベスト盤含めアルバムを1年に3作リリースするなど活発な活動を見せた。本人最高位は大森靖子作詞による「OK!生きまくっちゃえ」の39位。アップアップガールズ(2)のここ最近のシングルはつんく♂の作詞作曲だが、そのうちのひとつ「Be lonely together」が42位にランクイン。ちなみに同曲はアイドル楽曲大賞でも17位に入っていた。元℃-uteの鈴木愛理は、シングル「Escape」が50位に顔を見せた。


■MV部門


 楽曲ではなく映像基準で投票されるMV部門。こちらはBEYOOOOONDS「眼鏡の男の子」「ニッポンノD・N・A!」が1位・2位のワンツーフィニッシュ。さらに4位に「Go Waist」、6位には「アツイ!」と、トップ10内で4曲を占める強さを見せた。どのMVもコンセプトに沿って細部まで作り込まれた映像で、この順位も納得だろう。「Go Waist」はテレビのエクササイズ番組や通販番組を模した作りが楽しく、「アツイ!」は過去の映画や音楽MVへのオマージュが満載で、元ネタ探しが捗る。


 8位のアンジュルム「恋はアッチャアッチャ」はメンバーの様々なシチュエーションでの扮装が楽しめるし、10位のJuice=Juice「25歳永遠説」は、卒業メンバーである宮崎由加の出身地の石川県金沢市でロケが行われ、ストーリー性もある凝った作りが評価されたようだ。


■推しメン部門


 楽曲大賞の参加者による一推しメンバーを集計した推しメン部門。これがそのまま実人気ランキングに重なるとはいえないが、ひとつの指標ではある。ここ数年はモーニング娘。佐藤優樹の1位が続いていたが、今回も1位を獲得。これで5年連続となる。


 6位→4位と順位を伸ばしてきたモーニング娘。加賀楓だが、今回はついに2位にまでのぼり詰めた。他は6位にアンジュルムのリーダー竹内朱莉、10位にJuice=Juiceのリーダー金澤朋子がトップ10内に初ランクインしたのが目立つ。



 以上、2019年度のハロプロ楽曲大賞の結果を振り返ってきた。前回2018年度の記事では、傾向として「つんく♂以外の楽曲提供者の躍進、それも若手女性作家の台頭」というポイントを挙げたのだが、今回も1位が山崎あおいの作詞作曲曲、他にも児玉雨子の作詞曲が多数ランクインと、その傾向は引き続いていると感じる。


 グループという角度から見れば、やはり2019年度はBEYOOOOONDSが大活躍を見せた年といっていいだろう。もっとも、ハロプログループのデビュー1年目は、どのグループも楽曲制作やプロモーションなどに力が入っているものだというのは、過去のハロプロ史を鑑みても明らかだ。そして2年目以降には、力を入れていないというわけではないのだろうが、相対的に見て失速した感が醸し出されてしまうという傾向も、どうしても出てきてしまうものだと思う。ハロプロ楽曲大賞では、1年ごとの順位という具体的な数値によって、各年でのグループの明暗がわりとくっきり浮かび上がってしまうところがある。BEYOOOOONDSも同じ轍を踏むのか、それとも良い意味で裏切ってくれるのか、要注目したい。


 それでは今年末の「ハロプロ楽曲大賞’20」にて、皆さんの投票をお待ちしています。(ピロスエ)


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