寅さんには救えなかった正月興行 2年連続で日本映画からヒット作は生まれず

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2020年01月08日 18:22  リアルサウンド

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映画『男はつらいよ お帰り 寅さん』(c)2019松竹株式会社

 正月休みを経て、年末と年始、2週分が同時に発表された観客動員ランキング。まず、2019年最後の週末となった12月28日と29日の順位は、1位が2週連続で『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』で、2日間の動員が42万8000人、興収が6億6700万円。2位が『アナと雪の女王2』で、2日間の動員が41万5000人、興収が5億3500万円。続く、2020年最初の週末となった1月4日と5日の順位は、『アナと雪の女王2』が3週ぶりに1位に返り咲いて、2日間の動員が38万2000人、興収が4億9600万円。2位は『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』で、2日間の動員が31万9000人、興収が4億8900万円。1月5日までの『アナと雪の女王2』の累計興収は112.9億円、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の累計興収は52億円となっている。


参考:3部作最低のスタートとなった『スカイウォーカーの夜明け』 しかし、ディズニー的には想定内?


 さて、以前から予想していた通りディズニーの2作品が圧倒的な強さで1、2フィニッシュを飾った2020年の正月興行。『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の伸び悩みも、年が明けてから流石の強さを見せつけた『アナと雪の女王2』の粘りも想定内といったところだろう。前作『アナと雪の女王』は日本国内で255億円という、『千と千尋の神隠し』と『タイタニック』に次ぐ歴代3位の驚異的な興収を記録し、同作の世界興行においても大きな存在感を残した日本のマーケットだったが、今回の『アナと雪の女王2』の世界興行は早くも全世界でのアニメーション作品歴代1位だった前作『アナと雪の女王』の12億8100万ドル(約1384億円)を抜いて、13億2500万ドル(約1431億円)に到達。国別では、北米(4億4900万ドル)、中国(1億1800万ドル)に続いて日本(1億380万ドル)が3位。数字的にもそのすぐ後につけている4位の韓国(9620万ドル)と合わせて、同作をアニメーション作品世界歴代1位に押し上げたのは、東アジア・マーケットにおける驚異的な支持の高さであることがわかる。


 『アナと雪の女王2』と『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』、ディズニー2作品(オリジナル・トリロジーからのリアルタイマーである自分は『スター・ウォーズ』シリーズを「ディズニー作品」と呼ぶことに抵抗を覚えてきた世代だが、今作の仕上がりを受けて何の躊躇もなく「ディズニー作品」と呼ぶことができるようになった)の強さは事前に予想できたことであったが、それにしても今年の正月興行における3位以下との差はあまりにも大きい。先週末3位の『男はつらいよ お帰り 寅さん』は2週目で累計興収7億円。4位の『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』は3週目で累計興収11億円。5位の『仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』は3週目で累計興収7億円。6位の『映画 妖怪学園Y 猫はHEROになれるか』は4週目で累計興収6億円。7位の『屍人荘の殺人』は4週目で累計興収8億8000万円。5週目を超えて累計興収10億円の大台にのった8位の『午前0時、キスしに来てよ』のように健闘している作品もあるものの、いずれの成績も「正月興行」ならではのブースト感はない。


 年々フランチャイズとしての求心力を失ってきた『妖怪ウォッチ』シリーズも含め、いわゆる「正月映画」で日本映画からヒット作らしいヒット作が出たのは2年前の『8年越しの花嫁 奇跡の実話』、『DESTINY 鎌倉ものがたり』が最後。実写作品どころか、アニメ作品まで含めても、これで2年連続で正月興行で存在感を示した日本映画はなかったことになる。『アナ雪』続編と『スター・ウォーズ』サーガ完結作が控えていることが事前にわかっていた今年の正月興行が、日本映画にとって消化試合めいたものになってしまったのは仕方がないとも言えるが、『スター・ウォーズ』も終わった今、来年の正月興行にそこまで強い外国映画が控えているという情報はない。来年の正月興行では、日本映画界の奮起を期待したい。(宇野維正)


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  • 若い人は寅さん興味ないでしょ。年寄りはテレビ待ち。
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