Appleの2019年は「サービス事業重視」の転換点だった 成長のカギは後発サブスクか?

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2020年01月10日 07:21  リアルサウンド

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Apple公式プレスリリース「Apple、歴史に残る一年に続く、サービスの新たな時代を祝う」より

 GAFAの一角をなすAppleは8日、公式プレスリリースを発表した。その内容は2019年における同社の業績を回顧して2020年の展望を述べるものなのだが、2019年は同社にとってあの主力製品の販売に偏重することから脱却した転換点となる年だった。


(参考:2020年版のiPhone新型、6機種展開に? 5G対応もバッテリー大型化の可能性


・堅調なApp StoreとApple Music
 2020年最初となるプレスリリースにAppleが込めた思いは、「Apple、歴史に残る一年に続く、サービスの新たな時代を祝う」というタイトルから如実にうかがえる。同社にとって2019年とは、主力製品であるiPhoneシリーズの販売に偏重することから脱却できた年だったのだ。そのように宣言できる証拠が、プレスリリースでは具体的な数字とともに挙げられている。


 「スマホアプリ」というソフトウェアカテゴリーの普及に多大に貢献したApp Storeは、2008年の登場以来、累計1550億ドル(約17兆円)以上の利益を上げてきた。しかも、その利益のうちの1/4にあたる約390億ドル(約4兆2000億円)は2019年に得たものなのだ。さらに昨年のクリスマスイブから大晦日にかけての1週間におけるアプリ購入額は過去最高の14億2000万ドル(約1550億円)に達した。この勢いは2020年になっても衰えず、同年新年には3億8600万ドル(約420億円)を記録して単日売上の新記録を樹立した。


 Appleが提供するサブスクとしては先発組となるApple Musicも堅調だ。同サービスは、現在では6000万曲以上を115ヶ国に配信しており、音楽のエキスパートが選曲したプレイリストは数千にのぼる。2019年には音楽と同期して歌詞を表示する機能をリリースし、50%以上のリスナーが同期を利用している、とのこと。


・後発サブスクも好調
 2019年は、AppleがApple Musicに続くサブスクを多数リリースした年でもあった。そのひとつであるApple TV+は、動画サブスクとしては初めてサービス開始初年度にオリジナル作品がゴールデングローブ賞にノミネート(『ザ・モーニングショー』がテレビドラマ部門作品賞、主演女優賞には出演女優ふたりがノミネート)されるという栄誉にあずかった。サービス開始当初から100ヶ国以上で展開したという点においても、動画サブスクとしては史上初となった。


 ゲームサブスクのApple Arcadeも好調だ。同サービスは現在100本以上のゲームを配信しており、それらはすべて無課金でプレイできる。そんなゲームのなかには、同サービスの独占ゲームも含まれる。2020年には引き続き毎月、新作ゲームや既存ゲームの新規エピソードを追加していく予定だ。


 サブスクには分類されないがApple独自のカードサービスであるApple Cardの展開も見逃せない。2019年12月には、アメリカにおいて同カードを使ったiPhoneの新規購入サービスがスタートした。このサービスを使えば、iPhoneを24ヶ月の分割払いを金利ゼロで組めるようになる。同サービスには、販売数が減ってきているiPhoneシリーズの再成長を促す意図があると見て間違いないだろう。


・FAANGのなかでナンバーワン
 以上のようなAppleの年頭プレスリリースを受けて、さっそく各メディアは同社の動向に関する考察記事を公開した。経済メディア『MarketWatch』が8日に公開した記事は、2019年のAppleの株価の推移を考察している。この記事では、GAFAにNetflixを加えた「FAANG」の2019年における株価の推移を示したグラフが掲載された。Appleの株価は2019年を通じて2倍近くに上昇し、FAANGのほかの企業を圧倒しているのだ。2020年の同社の株価に関しては、投資会社WedbushのアナリストDan Ives氏がiPhoneの5G対応に伴う買い替え需要が見込まれるのでさらに上昇するだろう、と述べている。


 また、アメリカ大手総合メディアCNBCが8日に公開した記事では、Appleの成長に関する懸念材料が指摘されている。同社の年頭プレスリリースは、App Storeが非常に好調であることを伝えている。しかしCNBCの記事によると、同社が2019年にアプリ開発者に対して支払った金額は350億ドル(約3兆8000億円)であり、2018年の340億ドル(約3兆7000億円)と比べて2.9%増えたに留まる。対して2017年におけるアプリ開発者への支払いは、前年比で30%も増えていたのだ。こうした数字を見ると、App Storeの成長が鈍化していると言える。


 Appleがサービス事業からの収益を安定的に確保するためには、成長が鈍化しているApp Storeにだけ頼るのは上策とは言えないだろう。今後は、App StoreだけではなくApple Musicや後発サブスクであるApple TV+やApple Arcadeを収益の柱にすることになるだろう。それゆえ、2020年には魅力的なAppleオリジナル動画やApple Arcade独占ゲームが多数配信されるのではないだろうか。


(吉本幸記)


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