野沢雅子、『ドラゴンボール』孫悟空と歩んだ30年 「世界中の人に元気を届け続ける」

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2020年01月10日 10:01  リアルサウンド

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野沢雅子

 日本だけでなく世界中で人気を集め続けている『ドラゴンボール』。鳥山明が1984年に週刊少年ジャンプで連載をはじめ、1986年にTVアニメ化もされた本作は、映画、ゲームなど今日に至るまでさまざまメディアミックスを展開させ、30年以上にわたり人々の心を掴み続けている。


 そんな『ドラゴンボール』の象徴的存在が、主人公・孫悟空の声優を務める野沢雅子だ。2018年公開の映画『ドラゴンボール超 ブロリー』でも、悟空、バーダック(悟空の父)、悟天(悟空の次男)の3役を担い、力強い声で物語を牽引した。


 東映チャンネルにて1月10日より放送される、強敵“ブロリー”が登場する劇場版の特集放送「劇場版 ドラゴンボール ブロリースペシャル」を記念して、野沢に『ドラゴンボール』、孫悟空への思い、声優を続ける秘訣など、じっくりと話を聞いた。


●悟空と一心同体


ーー『ドラゴンボール』のTVアニメの放送が始まったのが1986年です。約30年の月日が経ちましたが、振り返ってみていかがでしょうか。


野沢雅子(以下、野沢):悟空とも30年以上の付き合いなんですよね。ただ、頑張って30年間続けてきたというよりは、振り返ってみたら30年経っていたという感覚なんです。だから、最初のオファーを受けたのがつい先日のような気持ちもあります。悟空と共に生きてきた30年間でした。


ーーどんな経緯で悟空を演じることになったのでしょうか。


野沢:鳥山明先生が原作のアニメ『Dr.スランプ アラレちゃん』(1981年〜1986年/フジテレビ系)を観たとき、「なんて面白い作品なんだろう!」と感じたのを覚えています。私もいつか鳥山先生の作品に出てみたいなと思っていた矢先に『ドラゴンボール』のオーディションへの参加オファーがあったんです。役のオファーではなく、オーディションを経ての合格だったので、より一層嬉しかったのを覚えています。その後聞いた話なのですが、当時私を選んで下さったのは鳥山先生ご本人だったそうなんです。プロデューサー陣は他の候補者も推していたみたいなのですが、鳥山先生が「野沢さんしかいない」とはっきり言ってくれたみたいで(笑)。


ーーオーディションだったとは驚きです。野沢さんが感じる悟空の魅力はどんなところでしょうか。


野沢:悟空は大人になっても子供の頃と変わらないんですよね。絶対に上辺だけで人を判断しませんし、差別しない。常識はずれなところもありますけど、子供のままの心を持った本当にピュアな人です。悟空はたくさんの敵と戦ってきましたが、どの相手のことも“悪”だとは思っていないんですよね。だから、悟空みたいな人がたくさん世の中にいたらいいのにと思っています。現実社会の私たちは子供の頃は悟空と同じ気持ちでも、大人になって現実を知れば知るほど純粋なままではいられなくなってしまいますから。


ーーそんな悟空を演じる上でどんなことを心がけてきたのでしょうか。


野沢:悟空のお芝居で苦労することはありません。こうしうよう、ああしようといった組み立てはまったくなく、“悟空そのもの”になってしまうので。「苦労がないのが苦労かな」というぐらいです(笑)。


ーーまさに悟空と一心同体状態なんですね。


野沢:私が根本的に悟空と似ている性格なんです。歳を重ねると「何歳になった?」という話がよく出てくるのですが、どうしてみんな相手の年齢を気にするんだろうと思います。何歳になっても人は人。自分が何歳でもいいし、相手が何歳でもいい。人と人として向き合えばいいんです。もちろん、人間関係を円滑にするために考えるべきことはありますし、絶対に守らないといけないことはあります。でも、考えすぎて「こうしなければいけない」と思い込んで、自分を偽って生きていくのは違う気がするんです。悟空もいい意味で相手のことを考えずに誰にでもフラットに接していますよね。私もそのスタンスは一緒。悟空は気にしなすぎるところがありますけど、世の中の人ももっとシンプルに生きてもいいと思います。


ーー収録にはどんな形でのぞんでいるんですか。


野沢:テレビ放送中のときなどは、先々まで原作コミックを送っていただくのですが、私は絶対に先を読まないんです。内容を知ってしまったらこれから起きることが分かってしまう。私は悟空と一緒に初めての経験をしたいんです。それは1986年の放送がスタートしたときから、テレビでも劇場版でもずっと続けているところですね。


● 「世界中の人が悟空を好きになってくれたら」


ーーそして、1月10日より東映チャンネルにて「劇場版 ドラゴンボール ブロリースペシャル」の特集放送がスタートします。ブロリーが初めてスクリーンに登場したのは1993年『劇場版 ドラゴンボールZ 燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦』。2018年に『ドラゴンボール超 ブロリー』に25年ぶりに復活したキャラクターですが、ブロリーの存在は覚えていましたか。


野沢:悟空としてたくさんの敵と戦ってきたから昔の敵のことは忘れちゃうんです(笑)。でも、この姿を観て「ああー、あのブロリーか!」とすぐに思い出しました。ブロリーがすごく強い敵だとは分かっているんですが、私自身も悟空になっているので、「また来ても絶対やっつけてやるからな!」と思っていました。


ーー野沢さんはブロリーはどんなキャラクターだと感じていますか。


野沢:今回の映画ではブロリーの悲しい出自が描かれているように、根っからの悪人ではないんです。辺境の星で父親と二人っきりの暮らしだったから、あんな性格になっちゃって……。そう思うと、悟空は幼少期に地球に飛ばされたのが本当にラッキーですよね。悟空は人との出会いに本当に恵まれているんです。


ーー最新作ではブロリー役の島田敏さんもさすがの迫力でした。


野沢:収録しているときは敏ちゃんもブロリーとして敵になっているので、目も合わせませんでした。収録が終わった後、叫びすぎて敏ちゃんはもうフラフラになっちゃっていて。敏ちゃんから「マコさん(野沢雅子の愛称)は大丈夫ですか」と言われて、「私はなんでもないよ」と答えたら「地球人じゃない!」って言われました(笑)。


ーー『ドラゴンボール超 ブロリー』はドラマシーンも濃厚ですが、それ以上にバトルシーンがすごい迫力でした。


野沢:ずっと戦っているでしょう。だから、収録後に「私、叫び声以外の台詞喋った?」ってスタッフさんに聞いたぐらいで(笑)。


ーー悟空はベジータとフュージョン(融合)してゴジータとなり、ブロリーと戦います。ゴジータのときはベジータ役の堀川りょうさんと同時に喋る形になっていますが、収録はどんな形で?


野沢:りょうが絵を観て喋って、私はりょうの口を観て喋るんです。そうすると自然と声が合うんです。「せーの」みたいな合図もまったくありません。りょうが絵を観て合わせてくれているので、私がりょうにさえ合わせればバッチリってことだから。タイミングをどうすればいいかと考えるというよりは、身体が自然に合っている感じです。


ーーベジータを演じる堀川さんとの相性も抜群だと。


野沢:そうですね。ただ、りょうに限らず、『ドラゴンボール』声優の皆とは仲間であり、親子・兄弟のような関係を築いています。収録が終わった後に毎回飲み会があるのですが、お酒の席だと皆もリラックしてなんでも言い合えるので、そこで意見交換したものが作品にもいい形で反映できていたと思います。


ーー『ドラゴンボール超 ブロリー』は日本では興行収入40億円超え、全世界90カ国で公開され世界興行収入も1億ドルを超えました。世界中に『ドラゴンボール』の輪が広がり続けています。


野沢:すごくうれしいです。『ドラゴンボール』は世界中の人に観てほしいんです。作品を観て、みんなが悟空のことを好きになって、みんなが悟空のようになりたいと思ってくれたら、きっと世界は平和になるはずですから。


ーー『ドラゴンボール』が愛され続ける理由はどんな点にあると考えていますか。


野沢:誰もが悟空のようになりたいと思っているからではないでしょうか。自分ができないことを、言えないことを代わりに悟空が代弁してくれる。どの時代、どの世代にも悟空は求められる存在なんだと思います。


ーーそんな悟空を演じるプレッシャーはないのでしょうか。


野沢:私は“演技をしている”とは思っていないので、プレッシャーはまったくないです。みんなが悟空を好きになってくれてうれしいだけです。『ドラゴンボール』が続く限り、世界中の人に元気を届けることができればと思います。


(取材・文=石井達也)


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  • 孫悟空自身がワクワクするために先の展開を知らないようにするあたり、さすがだと感じました
    • イイネ!22
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