1月12日、大阪府河内長野市の堺ビッグボーイズ専用グラウンドで、OBで同チームのスーパーバイザーを務める筒香嘉智選手(今季からMLBタンパベイ・レイズ)が、新年恒例の交流会を行った。この会で筒香選手は、中学生にバッティングを披露し、その後、中学生の質問に答えた。大変実践的で、わかりやすいアドバイスになっていたので、質疑応答を紹介する。
――バッティングの調子が悪いときは、どうすればいいですか?
筒香 調子が悪いときに、やみくもにバットを振ったり、強く振ったりしても自分がどこが悪いのかはよくわかりません。そういうときは、1球1球時間をかけてバットを振って、(自分のフォームを)チェックすることが必要です。
――逆方向に打球を打つにはどうすればいいですか?
筒香 逆方向に打つときに、ポイントを前のほうで打つと弱い打球になるから、体の正面で球をとらえるようにします。打つときに手が離れてしまうと打球が弱くなるから、バットをしっかり握って近いポイントで打てば、逆方向にも強い打球を打つことができるようになります。
――どんな意識で、どんな練習をすれば強い打球が打てるようになりますか?
筒香 置きティーって、普通はあまり強い打球が打てません。前からボールをほおってもらったほうが強い打球が打てます。だから置きティーは、地味な練習であまり好きな人はいないと思いますが、実は自分の打撃フォームが一番身に付きやすい練習方法です。
ポイントも一番わかりやすいですし、置きティーで強い打球が打てるようになれば、前からほおってもらった時にもいい打球、質の良い打球が飛ぶようになります。皆さんも普段から置きティーで練習するようにしてください。
――自分のスイングを心掛けるときにどんなことを考えればいいですか?
筒香 体が先に前に行ってしまったら、バットの先端もついてくるので、詰まったら詰まったまま、早かったら早かったままで終わってしまいます。だから体が前に行かないように気を付けることが大事です。そして前の肩(左打者の右肩)が開いたら、後ろの肩(左肩)もついてくるから、前の肩を開かず、後ろの肩を残すように意識してスイングしています。
それができたら、あ、遅れたなと思っても抜いたりすることができますし、早いと思っても足を粘らせて時間を作ることができます。要するに体が前に突っ込まないようにすることが大事です。
――インコースを打つにはどうすればいいですか?
筒香 今の話と同じですが、体が前に行ったらインコースにバットを合わせる余裕がなくなるので、前の肩が開かないようにします。
バッティングの基本は、強くバットを振ることができることと、そして反対方向にきっちり打球を飛ばすことができることです。バットを強く振るためには、練習でただ無意識にバットを振るのではなくて、しっかり振ることを意識することが大事です。
なぜ反対方向に打つことが大事かというと、投手の投球はインコースよりもアウトコースに来ることが圧倒的に多いからです。インコースを打つのは苦しいですが、それは辛抱強く練習をして克服するとして、その前にアウトコースをきっちり打てるようになれば、打撃の幅は広がります。
筒香選手はこの後、実際に選手にトスバッティングをさせて打撃フォームをチェックし、丁寧にアドバイスをした。また実際に自分のスイングも披露した。
さらに小学生の質問にも答えたが「どうやったらホームランが打てますか?」という問いかけに対して
筒香 僕は練習からフルスイングすることを心掛けています。バッティングはまず強く振ることが大事です。そして反対方向に打てるようになりましょう。安打が欲しくなると、どうしても目の前の勝利だけを優先して当てに行ったりしがちです。プロ野球選手でも苦労している人もいます。そうではなくて、フルスイングを心掛けましょう。
と答えていた。
スター選手の野球教室にありがちな「顔見せ」的な要素はほとんどなく、子供と接する限られた時間で、持っている知識や技術をできるだけ多く伝えようとする熱意が感じられた。
堺ビッグボーイズの小学部は倍々ゲームで増えて、今年は100人に達した。中学部も合わせると190人だ。こうした人気は、堺ビッグボーイズの恵まれた施設と優れた指導法によるものだが、スーパーバイザー筒香選手の存在も大きいと感じられた。(取材・写真:濱岡章文)