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森口将之のカーデザイン解体新書 第24回 2台の「3」が受賞! カーデザイン・オブ・ザ・イヤー2019を考える

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2020年01月17日 08:02  マイナビニュース

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2019年に登場したクルマの中で、デザインという観点から見て、最も目を引いたのはどのモデルだったのか。本連載の著者であり、日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員を務める森口将之さんに、「カーデザイン・オブ・ザ・イヤー2019」を考えてもらった。

○2台の「3」のカーデザインを考える

2019年に発売となったクルマのデザインで最も印象的だったのは、ともに車名に「3」を掲げたマツダ「MAZDA3」とテスラ「モデル3」だ。手頃なボディサイズの2ボックススタイルというところも共通するが、比べると違いがいくつもある。そこから、マツダとテスラという2つのブランドの目指す道も見えてくる。

一部の人は、2019年に新型が登場したBMW「3シリーズ」が選考からもれていることを不満に思ったかもしれない。3台の「3」の間違いではないのかと。しかし、2台の「3」と3シリーズとでは、デザインのステージが大きく違う。

筆者も審査委員を務める「グッドデザイン賞」の主催団体であり、それ以外にも数多くのデザインプロモーションを担う公益財団法人日本デザイン振興会では、オフィシャルサイトの中の「デザインとは?」というページで次のように記している。

「あなたが商品や事業、プロジェクトを生み出した目的はなんでしたか? その目的のための計画そのものが実は『デザイン』です。色や形、技術や機能は、その目的を実現するための手段のひとつです」

ここで「プロジェクト」という言葉に注目してみると、MAZDA3とモデル3は、ともに新規のプロジェクトであることに気が付く。

マツダは以前から、「MAZDA3」という名称を「アクセラ」の海外向け車名として使っていたが、新世代商品の第1弾として2019年に発売した「MAZDA3」は、それまでのクルマとは一線を画すものだと明言している。デザインについては日本の美意識の本質を追求し、同社の哲学である「魂動デザイン」をさらに深化させた。

モデル3のスタイリングは、ひと足先に登場した「モデルS」や「モデルX」に似ているけれど、ボディサイズはひとまわり以上小さく、マツダでいえばMAZDA3と「アテンザ」改め「MAZDA6」の中間に位置している。価格は500万円台スタートとテスラのクルマとしては大幅に安い。同社が新たなカテゴリーに挑戦したことは明白である。

そこへいくとBMWの3シリーズは、1975年に登場した初代から今回の7代目に至るまで、コンセプトを変えていない。さらにいえば、前身となった「02シリーズ」がデビューした1966年から、そのコンセプトは不変なのである。

同じドイツ車のフォルクスワーゲン「ゴルフ」やポルシェ「911」についてもいえることだが、登場した当時はエポックメイキングな車種であったものの、現在はそれぞれのブランドにおける基幹車種となり、新たなコンセプトを打ち出す役割はほかの車種に任せ、自身はブランドを体現する存在へと立ち位置を変えたクルマというのがあるものだ。3シリーズも、そういうクルマの1台だと思う。

その証拠に、2019年に発売となった現行3シリーズや911は、デザインの変更点で話題になることが少なかった代わりに、「3シリーズらしい」「911そのもの」といったように、デザインが変わらなかったことを評価する声が多かった。

筆者は、デザインにはイノベーション(革新)やクリエーション(創造)の要素も含まれていて、デザイナーはクリエーターやイノベーターでもあると考えている。なので、2019年のカーデザイン・オブ・ザ・イヤーはMAZDA3とモデル3の2台に絞った。
○エンジンとモーターの違いが形に表れる

ということで、この2台に絞って見ていくと、ボディサイズは前述したようにモデル3の方が大柄だが、MAZDA3をファストバックとすれば、同じ2ボックスということもあってフォルムが似ている。全長×全幅×全高はMAZDA3のファストバックが4,460mm×1,795mm×1440mm、モデル3が4,694mm×1,849mm×1443mm。長さや幅には差があるものの、縦横比はマツダが2.48、テスラが2.54と近いことも、その印象を強める。

ただし、大きく違うところもある。まずは窓の大きさだ。MAZDA3は、最近の多くの乗用車がそうであるように、歩行者と衝突した際の保護対策としてボンネットを高めにしている。それに比べると、モデル3はボンネットが驚くほど低い。もちろん、歩行者保護対策は取ってあるのだが、エンジンに比べ、モーターがはるかに小さいことが効いている。それをいかして、モデル3はフロントにも荷室を用意しているほどだ。

さらに、窓についていえば、モデル3のフロントウインドーは前席に座る人の頭上まで伸びていて、その直後からリアウインドーが始まっていることも特徴だ。車体に使える強度を持たせようとすると、ガラスは鉄より重くなる。ルーフをガラス張りにすると重心が高くなって、走りには不利に働く。

しかしモデル3は、床下に駆動用バッテリーを敷き詰める構造となっているので、もともと、エンジン車よりも重心が低い。それをいかして、ルーフまでガラス張りにしたのだと思う。もっとも、この影響で、MAZDA3ファストバックのようにリアゲートとすることはできないので、モデル3は通常のトランク式だ。使いやすさではMAZDA3が上だといえる。

フロントマスクを見比べてみると、グリルを持たないモデル3に対し、MAZDA3はマツダ各車が採用する5角形グリルを据えている。どちらもブランドイメージをしっかり表現しているし、空気を取り込んで燃焼を行うエンジン車と、バッテリーに蓄えた電力でモーターを回す電気自動車(EV)というメカニズムの違いも伝わってくる。

ボディサイドにも違いが見られる。MAZDA3はキャラクターラインに頼らず、面の抑揚によって躍動感を表現しているのに対し、モデル3はオーソドックスな水平基調のキャラクターラインをドアに入れている。リアコンビランプも、むしろテスラのほうがオーソドックスな形だ。

ただし、モデル3はドアハンドルをボディパネルと面一(フラットな状態)にしたり、充電口をリアコンビランプの脇に一体化させたりと、細部は凝っている。後者は液体を注ぎ込むエンジン車の給油口より自由な配置が可能なことをいかしたデザインで、EVを知り尽くしたブランドらしいやり方だ。

インテリアは、まずインパネが対照的だ。水平基調のインパネを持つことは共通しているものの、ドライバー向けのインターフェイスとキャビン全体のそれを分けてレイアウトしたMAZDA3に対し、テスラはすべてをセンターの大型ディスプレイにまとめた。エアコンのルーバーまでインパネの段差に隠している。革新性ではテスラの圧勝だが、同時に、クルマは人間が操縦するものであるというマツダのこだわりも伝わってくる。

キャビンの広さは同等だ。MAZDA3は窓の小ささから狭そうに感じるけれど、中に収まれば後席でも身長170cmの自分が楽に過ごせる。一方のモデル3は、バッテリーがあるので床がやや高めだが、ルーフを含めてほぼ全面ガラス張りの開放感が実寸以上に広く感じさせる。

全体を通していえるのは、シンプルかつプレーンに徹したモデル3に対して、MAZDA3は引き算の美学を追求したといいつつも、大きなグリルや躍動感のあるボディサイドなど、自動車らしさを大事にしているということだ。
○マツダの電気自動車はテスラっぽい?

興味深いのは、マツダが2019年秋の「東京モーターショー」で発表した初の専用設計EV「MX-30」が、グリルを小さくしつらえ、ボディサイドの抑揚を控えめにするなど、テスラに近い方向性を示してきたことだ。環境対応ということで、クリーンな雰囲気を持たせようとすると、自然とシンプルかつプレーンな造形になるのかもしれない。

そう考えると、モデル3の造形はEVの立ち位置をよく分かっていると感じるし、逆に、MAZDA3は空気を吸い、エネルギーを燃やして走るというエンジン車の生き物に近い部分をうまく表現していると感じる。

このように、2台の「3」のデザインは大きく違う。でも、美しいという点では共通している。カーデザインにはまだまだ可能性があると改めて感じた2台だった。

○著者情報:森口将之(モリグチ・マサユキ)
1962年東京都出身。早稲田大学教育学部を卒業後、出版社編集部を経て、1993年にフリーランス・ジャーナリストとして独立。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員を務める。著書に『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』『MaaS入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』など。(森口将之)

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