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群れない早稲田は過去の話 ライバル三田会に挑む稲門会

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2020年01月18日 11:30  AERA dot.

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写真早稲田大学校友会が企画・運営する「稲門祭」の様子。多くの卒業生やファンが集まる=同会提供
早稲田大学校友会が企画・運営する「稲門祭」の様子。多くの卒業生やファンが集まる=同会提供
 早稲田大の卒業生の気質として語られてきたのが「群れない」こと。同窓会を開いても集まりが悪いとされ、永遠のライバル、慶應義塾大の「慶應三田会」と対比されてきた。そんな状況が変わりつつある。

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「いま卒業生たちが校友会活動に積極的に動いてくれています」

 こう話すのは早稲田大の三木省吾校友会事務局長だ。

 64万人いる校友会会員(卒業生)の受け皿になっているのが校友会支部や稲門会(とうもんかい)だ。卒業年次ごとの年次稲門会や、企業・業種別の職域稲門会、地域稲門会など1380団体に上る。数の上では、慶應大の卒業生数38万人、同窓会団体数870を超えている。

「婚活パーティーや経済的に厳しい子供向けに無料の塾を開いたり、地域貢献に取り組んだりするなど活動は多様です。自ら汗を流すのが早稲田卒業生の特徴。稲門会の活動を楽しみながら、社会貢献している人も多いです」(三木事務局長)

 大学同窓会で最強とされてきた三田会とは比較されがちだ。稲門会の関係者は三田会から学ぶものが多いというが、近年では三田会側が稲門会側から学んだ取り組みもある。

 早稲田大学グリークラブ(通称:ワセグリ)は、1907年創設の伝統的な男声合唱団だ。会員は1500人いて、“歌い足りない”OBらも集まる。OB会幹事長の佐々木豊さん(84年卒)は、「活動は大変だが充実感がある。自分を元気づけることにもつながっています」という。

 ワセグリのOB会が力を入れているのが現役生の支援。合唱人口が減って部員が伸び悩んでいるため、新入生を勧誘する時期などに“軍資金”として70万を援助している。

「現役部員が新入生に気前よくおごれるように、という狙いがある。この話を慶應の合唱団OBにしたら、『負けてはいられない』と言って現役支援活動を始めたようです」(佐々木さん)

 2019年9月にはワセグリの48人の学生が、中国・上海で現地の合唱団との交流演奏会を行った。その時の旅費をOB会などで募ったところ、250万円の目標に対し400万円を超えた。OBで早大元総長の白井克彦さんも寄付したという。

「OB会費というとなかなか払ってもらえないが、現役生を支援するためなら出してもいいという人は多い。今後は学生の声も聞きながら、さらに支援を強めていく予定です」(同)

 バスケットボール部稲門会(略称:RDR)でも、現役生への支援が課題となっている。ちなみにRDRとは、大隈重信が「あるんである」と語尾につけていたことをモジったもの。会員は500人(男子370名、女子130名)いる。

 同会副理事長の田中有哉さん(01年卒)は、これまでOB・OGと部員とのつながりは弱かったと振り返る。以前は卒業生といえば練習を見に来ては理不尽にしかるような人もいて、それに不満を抱く部員も少なくなかった。時代は変わり、科学的なトレーニングが浸透している今では、卒業生がアドバイスできる部分は少なくなった。

「練習以外でも卒業生が支援できることはあり、そこが問われています。いま取り組んでいるのは就職支援。部員との関係は良好ですし、引退した部員がRDRの活動に参加する流れができてきています」(田中さん)

 新入部員にはガイダンスをして、将来社会で活躍することも見据えて、早稲田大でバスケをやる意味を考えてもらう。就職活動が始まれば、エントリーシートの添削や面接の練習のほか、OB・OGのネットワークを生かし志望企業の社員を紹介する。

「就職活動は早期化していて準備は大変です。負担を減らすことで、部活動にもより集中することができる。総合商社やマスコミ、金融など、ほとんどが第一志望の企業に就職できています」(同)

 さらなる目標としてはバスケ部の法人化がある。背景にあるにはバスケ人気の高まりだ。もともと高校や大学バスケには根強いファンが多い。男子プロバスケットボールが16年に発足し、今年は米プロバスケットボールのNBAで八村塁選手が活躍するなど、盛り上がっている。

 そこでバスケ部を法人化し、ファンを巻き込むことで収益を上げることを狙う。本当の目的は学生自らが法人を経営することで組織運営の力を磨くことだ。RDR副会長の河野宏子さん(89年卒)はこういう。

「アンテナの高い学生はやる気になっている。どうしたらファンが増えるか、部を強くするためには何が必要かなど意見が出るようになり、考え方が変わった。こうした成長を見られるのが楽しい。私たちが活動に参加する理由は愛校心やバスケ部への愛もありますが、仕事では味わえない感動があるからなんです」

 前出の田中さんはこうつなぐ。

「法人化して収益を上げるにはファンを増やす必要がある。それは一般の人を巻き込むということ。仲間内だけで完結しないことが早稲田の強みです。この点は慶應三田会にも勝っているのではないでしょうか」

 こうした卒業生らの動きを大学側も歓迎している。いま大学の校友会が取り組むのは資金力の強化だ。

 校友会では、自動的に会費を徴収する仕組みを整えている。卒業年次の最終学期に、10年分の会費として4万円を学費とともに徴収。クレジットカード会社と連携して「早稲田カード」をつくり、会費が自動的に引き落とされる仕組みもある。こうしたやり方で、年間約6億円以上が集まるという。

 会費は校友会活動や運営費のほかに、奨学金として約2億5千万円が使われている。授業料の半額を免除する給付型の「めざせ! 都の西北奨学金」などに当てられる。前出の三木事務局長はこう振り返る。

「『めざせ! 都の西北奨学金』は当初、一律で40万円を給付する奨学金でしたが、所属学部によっては授業料の半額に届かなかった。早稲田の後にできた慶應大の奨学金の方が高額であったことから、卒業生から『後出しジャンケンに負けている。支援するから金額を上げろ』という声が上がったのです。現役生を思いやる卒業生は非常に多い」

 校友会費だけでなく寄付金を集める力も強い。18年12月に完成した「早稲田アリーナ」には、卒業生を中心に22億円以上も集まった。07年に創設125周年を迎えた際には200億円以上が寄付された。

 近年は大物OBからの寄付も目立つ。「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの創業者、柳井正会長兼社長は政治経済学部の卒業生だ。

 最近では「早稲田大学国際文学館(通称・村上春樹ライブラリー)」に伴う改築の費用約12億円を、柳井氏が全額寄付することが決まった。13年にも国際学生寮の建設費として3億円を寄付している。

 いま大学が目を向けるのが留学生。中国や台湾、韓国といったアジア出身の卒業生からも寄付を呼び込みたい考えだ。

 早稲田大は歴史的にアジアから多くの留学生を受け入れている。1947年には韓国校友会、50年には台湾校友会、そして2017年には中国校友会ができた。現地で成功している経営者もいて、これまでに30億円ほど寄付した人もいるという。早稲田大国際部東アジア部門長の江正殷さんはこう期待する。

「稲門会の留学生ネットワークは慶應三田会にも勝る。お金を出すだけではなく、現地で頑張っている人も支援しています。中国でハンセン病の元患者らを助ける早大出身の原田燎太郎さんも、支援を受けて活動している。早稲田の卒業生は、みんなファミリーなんです」

 国内外にネットワークを広げる稲門会。群れる早稲田卒業生が増えれば、慶應三田会を超える日が本当に来るのかもしれない。

(本誌・吉崎洋夫)

※週刊朝日オンライン限定記事

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