ホーム > mixiニュース > コラム > 1960年代、内ゲバが激化する学生運動に参加した女性闘士たちの今 全共闘世代アンケートの結果

1960年代、内ゲバが激化する学生運動に参加した女性闘士たちの今 全共闘世代アンケートの結果

61

2020年01月18日 12:00  AERA dot.

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AERA dot.

写真学生に占拠された安田講堂の正面=1969年1月(c)朝日新聞社
学生に占拠された安田講堂の正面=1969年1月(c)朝日新聞社
 戦後の第1次ベビーブーム(1947〜49年生まれ)で生まれた子どもたちが大学に入学しはじめた65年、女子の4年制大学進学率はわずか4.6%だった。男子の20.7%に比べるとはるかに低い数字だ。戦争が終わって20年が経っても、まだ「女子は大学に行かなくていい」という考えが当たり前の時代だった。

 だが、世界では60年代後半にベトナム反戦運動が盛んになったことをきっかけに、女性の社会進出を目指す「ウーマン・リブ」運動が勢いを増していた。その影響は日本にも伝播する。学生運動は「理論を主導するのは男、女はそれを支える」という典型的な男社会だったが、女性差別についての問題提起も広がり始めた。

 千葉県在住の岩井真由美さん(仮名、72歳)は、学生運動を通じて「物事の考え方に影響を受けた」と話す。当時をこう振り返る。

「『結婚というのは、3食セックス付きの女中であってはならない』などと語り合ってましたよ。『女に教育は必要ない』という時代で、私が大学に行けたのも、末っ子だったから自由にさせてもらえたというのが大きかったですから。アルバイトの時給は130円ぐらいで貧しかったけど、高校までは抑圧されている気持ちが強かったので、大学は自由で楽しかった」

 12月に出版された『続・全共闘白書』(情況出版)には、全共闘運動に参加した人を中心に、運動に参加した理由、政治について思うこと、また、現在の年収や家族形態など全75問のアンケート結果が掲載されている。なお、本のタイトルに「続」とあるのは、94年に同様のアンケートを実施して、書籍にまとめられているからだ。今回の回答者数は446人で、うち女性は46人。そこには“女性闘士”たちの回想も掲載されている。

 東京大学出身の近藤ゆり子さん(49年生)は、<全共闘運動の内部にも女性差別は厳然として存在した>としながらも、運動は人生に<役立った>と回答している。東京都立大学の村上やす子さん(51年生)は、大学を中退してからは運動から遠ざかったが、<女性解放運動に長年関わり、各々(おのおの)と生き方が社会を変えてきたという実感がある>という。

 回答した女性たちは、現在でもボランティアなど社会活動に参加している人が多い。障害者関係のNPO、女性労働者の権利についての学習・研究会、あるいは政党組織で国政選挙候補者の事務局長をしている人もいた。

 東京都在住の名村千織さん(仮名、72歳)も、障害者や在日コリアンの問題に関わってきた。

「まだ身の回りに差別がたくさん残っている時代でしたから、そういった人たちの助けになればと思って活動しました。学生時代は『社会に対して何かをしなければ』と考えていたのですが、途中でそれは『傲慢ではないか』と思うようになったんです。(革命といった)抽象的なものではなくて、目の前にある具体的な問題に、一人の人間として向き合っていくことが大切だと考えるようになりました」

 学生時代にも、ベトナム人の留学生が「ベトナム戦争反対」と主張したことで強制送還されたことに反発し、ビラを書いたり署名活動をしたりしたという。ただ、学生運動が盛り上がると同時にセクト(党派)間の対立が目立つようになり、運動から遠ざかるようになった。「対立が激しくなると男も女も関係ないですよ。革マルの女性は本当に怖かった」(名村さん)と話す。

 名村さんに限らず、セクト間対立に嫌気がさした人は多い。アンケート結果でも、運動から離れた理由についての1位は「内ゲバ」(37.2%)だった。そのほかにも「党派内粛清事件」(24.2%、同2位)、「暴力闘争自体」(15.2%、同4位)などが続く(男女合計、複数回答可)。セクト間対立は、全共闘世代の“負の遺産”として、当事者たちの記憶に強く残っているようだ。

 長文の回答を寄せたのが、日航機がハイジャックされた「ダッカ事件」(77年)などに関わった日本赤軍の元最高指導者で、現在も服役中の重信房子受刑者(74)だ。全共闘運動について〈新しい社会の空気を創り出した〉としながらも、〈視野が狭く「図に乗りすぎた闘い方」だった〉と振り返っている。

 ただ、学生運動は「失敗」ばかりだったわけではない。闘争に敗れた後に故郷に戻り、医療や福祉、農業などの分野で自らの住む地域を支えることに人生を捧げた人も多い。日本で「女性学」の分野を切り開いた上野千鶴子・東大名誉教授(48年生)も、全共闘世代だ。

 女性解放運動にも、いろんな形があった。前出の名村さんは、「ウーマン・リブの考え方は共感できるけど、一緒に活動はしなかった」という。むしろ、戦前・戦後の日本の女性たちがどのように生きてきたのか、それまでの歴史学で見落とされていた女性史の調査に興味を持った。

「成田空港建設に反対する三里塚闘争は過激派の運動だったと思われていますが、実際はその土地に住む農民の母ちゃんたちが大事な役割をしていました。そういった人たちの生き方に、影響を受けました」(名村さん)

「全共闘世代」の多くはすでに70歳を超え、まもなく75歳以上の「後期高齢者」となる。アンケートでは、明治大学短期大学出身の上野敏江さん(47年生)が、「最後に言いたいこと」の項目でこう書いている。

<政治、社会を変えられるという思いで、エネルギーをぶつけてきた。あの時ほど真剣に『人はなぜ生きるのか』という命題に真正面から考え取り組んだことはなかった。学生運動を通しての仲間との議論はその後につながる礎(いしずえ)になった>

 上昇傾向にある女子の4年生大学進学率は18年度に50.1%まで上がり、男子(56.3%)との差は急激に縮まっている。ところが、大学院の進学率になると5.8%で、男子(14.8%)との差は大きい。18年には医学部の入試で女子差別が行われていたことも問題となった。全共闘世代が取り組んだ社会問題は、今でも完全な解決がなされないまま残っている。

 今の時代を生きる若者について、前出の岩井さんはこう話してくれた。

「自分たちの権利が誰かに侵されていることについて、鈍感になってほしくないですね」

(AERA dot.編集部・西岡千史)

【おすすめ記事】全共闘世代は「逃げ切り世代」なのか? 年収1000万円以上もズラリ… 重信房子氏ら元学生運動家にアンケート


このニュースに関するつぶやき

  • 未だにマルキストの上野千鶴子は、京大で榎美沙子(中ピ連)の後輩。
    • イイネ!5
    • コメント 0件
  • いやぁ、その女性闘士たちがやったことって恐ろしく暴力的だったじゃないですか?
    • イイネ!40
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(48件)

あなたにおすすめ

前日のランキングへ

ニュース設定