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「息子がいじめに加担している」…悩む45歳父親へ鴻上尚史がおくる魂の回答「いじめと闘う道を歩くために」

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2020年01月21日 16:00  AERA dot.

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写真作家・演出家の鴻上尚史氏が、あなたのお悩みにおこたえします! 夫婦、家族、職場、学校、恋愛、友人、親戚、社会人サークル、孤独……。皆さまのお悩みをぜひ、ご投稿ください(https://publications.asahi.com/kokami/)。採用された方には、本連載にて鴻上尚史氏が心底真剣に、そしてポジティブにおこたえします(撮影/写真部・小山幸佑)
作家・演出家の鴻上尚史氏が、あなたのお悩みにおこたえします! 夫婦、家族、職場、学校、恋愛、友人、親戚、社会人サークル、孤独……。皆さまのお悩みをぜひ、ご投稿ください(https://publications.asahi.com/kokami/)。採用された方には、本連載にて鴻上尚史氏が心底真剣に、そしてポジティブにおこたえします(撮影/写真部・小山幸佑)
 鴻上尚史の人生相談。「息子がいじめる側にいる」ことがLINEで判明したという45歳の父親。妻は「スルーしよう」と言うが、対処法がわからないと悩む相談者に鴻上尚史がおくる魂の回答。

【相談54】息子がいじめる側にいたことがわかりました(45歳 男性 ハチロー)

 鴻上さんの連載、いつも楽しみに読み、人生の指針にしています。

 最近私にも深刻な悩みができてしまいました。中2の息子がクラスで、どうもいじめる側にいるらしいということがわかったのです。

 妻が息子のLINEを見て、発覚しました(うちでは、携帯の中身をオープンにすることを条件に持たせています)。同じクラスのI君をグループでバカにしてパシリのような存在にさせていじめているようなのです。

 妻によると、中心メンバーのX君がI君をいじめだし、よく一緒にいるグループ5、6人が同調する雰囲気になり、みんなでいじめているという構図のようです。妻は見つけたときに息子を一度注意したということですが、改善された様子ではないようで、私に相談してきました。だったら今度は俺の出番だろうと思い、息子にいじめをやめさせるよう、話し合うよと妻に言うと「息子にいじめの説教するの? 余計な正義感うえつけないで。I君をかばってうちの息子がいじめられる側になったらどうするの? 中学校時代の教室の空気を思い出してよ。ひどいことにならないようにLINEは私がちゃんとチェックするから。中学校もあと1年ちょっとでしょ、もうちょっとスルーしようよ」と反対されました。妻は、なにか息子にとって問題にならなければそれでいい、という考えのようでした。

 私はやはりそのまま放っておくわけにもいかないと思い、なんとかいじめをやめさせたいのですが、やみくもに「I君へのいじめをやめておまえがかばえ」と言うだけでは、たしかに息子を追いつめるだけだとも思います。同時に学校に相談することも考えていますが、「息子がチクった」ことになると、これも妻が反対しています。

我が子が過ったことをしているのに見過ごす親でいたくありませんし、結局息子の人生のためにもならないと思っています。鴻上さんが、私の立場ならどう対処しますか?

どうか、ぜひ教えてほしいです。

【鴻上さんの答え】
 ハチローさん、大変ですね。その後、息子さんの様子はどうですか?

 まず、質問ですが、ハチローさんと息子さんの関係はどうですか? ちゃんとなんでも話してくれる関係ですか?

 それとも、思春期によくある「親をなんとなくうとんじる」関係ですか?

 それによって、解決へのアプローチは変わってくると思っています。

 もし、わりと友好な関係で、なんでもフランクに話せるのなら、率直に「いじめについて話したいんだけど」と声をかけることから始めるのがいいと思います。

 奥さんが心配するように、いじめはよくないと説教するのではなく、「どんなふうにいじめているのか」「それをどう思っているのか」をニュートラルに聞くのです。

 親をうっとうしいと思っていたら、「どう思ってる?」と聞くだけで、説教だと思われて反発するでしょう。

 お互いの関係が良好なら、焦らず、ゆっくりと「いじめていること」について、話し合うのです。

 息子さんはどんなふうにいじめに加担しているのか。どんな気持ちなのか。いじめる快感を持っているのか、深く考えないでいじめているのか、自分がいじめられないためにしょうがなくいじめているのか。

 それでね、ハチローさん。ここから、長く険しい闘いが始まります。

 あまりに困難で、あまりにエネルギーが求められるので、歩くことが本当に苦しい道です。

 でも、その道を歩く理由があります。

 それは、ひとつは、「息子さんがいじめに加わっていることに苦しんでいる場合」です。本当はいじめたくないのに、仲間外れになりたくないから、自分がいじめられたくないから、心を殺していじめているのなら、親は助けるべきです。中二ですから14歳ぐらいでしょうか。そんな若く柔軟な魂を傷つけてはいけないのです。

 もうひとつの場合があります。それは、息子さんから「どんなふうにいじめているか」を聞けたとして、ハチローさんが「それはひどい」と思っているのに、「息子さんがたいして気にしてない場合」です。

 自分が何をしているのか、どんなひどいことをしているのか、精神の未熟さと想像力の欠如と自分を守ることに精一杯で気付いてない場合です。

 この時も、息子さんのいじめをとめることが、親の仕事だと思います。若く柔軟な魂を汚してはいけないのです。

 それ以外の時は、奥さんの意見も正しいと思います。

 いじめに対する闘いは、学校の「ことなかれ主義」「隠蔽主義」「無責任主義」に阻まれて、本当に苦しいものになります。

 学校と教育委員会は、自殺者が出た後、デフォルトのように「いじめはなかった」「いじめは認められなかった」と発表します。それをくつがえすのは、自殺した生徒の親御さんの粘り強い闘いしかないのです。

 学校にいじめの問題を相談に行っても、担任が「◯◯さんをいじめているのは誰ですか?」などとノンキにクラス会で聞いたり、紙を配って「あなたの目撃したいじめを書いて下さい。名前は書かなくていいです」と、なんの解決にもならないことを提案したりします。子供達は、筆跡で名前がバレると予想し、それで呼び出されたらチクったのは自分だと思われて、またいじめられると怯えて「何も見ていません」と書くのです。

 ですから、息子さんがそれほど苦しんでなくて、そしていじめの実態も「そこまでひどくないか」と思えたら、奥さんの言うようにスルーする方法も、悲しいですがあるとは思っています。

 それは、繰り返しますが、「いじめと闘う道」は、本当に苦しくて困難だからです。奥さんが言うように、息子さん一人がI君をかばい、がんばることは、いじめをなくすことではなくて、息子さんが次の標的になることを意味するのです。

 そして、これも繰り返しますが、息子さんが苦しんでいたり、親として息子の魂を汚したくないと思ったら、どんなに困難でも、闘う道を歩くべきだと僕は思っています。

 ハチローさん。そう決心した場合、息子さんとの関係が友好なら、まず、クラスの雰囲気を聞いて下さい。

 クラスメイトは、I君へのいじめを知っているのか。どう反応しているのか。クラスには他にいじめられている生徒はいるのか。それともI君だけなのか。

 学校がいじめを隠せるか、隠せない規模なのかの確認です。

 次に、息子さんに担任の先生の印象を聞いて下さい。いじめに対して実質的に対応できる人なのか。ただの保身だけを考える人なのか。生徒の人物評は、わりと的を射ていることが多いです。

 担任がダメな人なら、ハチローさんがいじめを告発したと簡単に生徒に知らせてしまうでしょう。校長がダメでも同じです。

 まず、「学校はどれぐらい誠実にいじめに対応するか」を知ることが重要です。「I君がいじめられている」という匿名の電話で動いてくれる学校なのか、いじめ問題を担当するスクールカウンセラーがいるのか、いなくてもいじめ問題を担当する教師はいるのか、その人とちゃんと話せるのか。

 つらいことですが、I君の親御さんに会うことも必要になるでしょう。一緒になって、いじめをとめるために闘うのです。

 I君のLINEを見せてもらうように頼みましょう。息子さんは、母親にLINEの文章を見つかって以来、いじめの文章を送信しては削除している可能性があります。「送信取消」ではなく、「削除」の場合は、息子さんのスマホには消した痕跡は残りませんが、I君のスマホには残ります。悲しいことですが、それは「いじめの証拠」になります。

 奥さんが言うように、本当にX君が中心人物かどうかも確認しないといけません。

 学校側と交渉するのは、LINEの文章以外にも、さまざまな証拠を集めた後です。クラスメイトの証言やI君のメモなんかも重要な証拠です。

 学校側がのらりくらりと逃げるようなら、第三者に早急に入ってもらいます。弁護士やカウンセラー、教育委員会の知り合いでもいいです。とにかく、教師と親の密室関係にしないことです。

 ね、ハチローさん。大変なことでしょう。でも、すべては息子さんの魂のためです。

 もし、息子さんとの関係があまりうまくいってなくて(思春期では、それは珍しいことではありません。ハチローさん自身や息子さんを責める必要はないです)、どんないじめをしていて、どう思っているのか、うまく聞けない場合は、まずは、息子さんとの関係を築くことが必要だと思います。

 全く口もきかないという断絶ではなく、ただ「うっとうしい」と思っているぐらいなら、真剣に「話したいことがあるんだ」とアプローチすれば、やがて、会話は始まるんじゃないでしょうか。

 ハチローさんの文章だと、完全に断絶しているようには感じませんが、もし、そうだった場合は、母親を通じていろいろと情報を収集して(母親に「いじめていることをどう思うか」を穏やかに聞いてもらって)、対策を練る必要があります。場合によっては、I君の親御さんに会う必要もあるでしょう。

 ただ、断絶している場合は、いじめの解決と親子の関係回復という二重の困難がありますから、まずは、断絶に対してアプローチする方がいいと思います。

 どうですか、ハチローさん。

 大変なことですが、自分の子供のことで、親として全身全霊を込めて向き合うというのは、人生の中でそうないことだと思います。普通の親なら、人生の中で一回か二回、あるかないか。それが、今だということでしょう。

 とにかく、穏やかに冷静に、息子さんと話すことから始めてみませんか。そして、険しい道を歩き出すかどうかは、息子さんの状況次第だと思います。

 がんばれ、お父さん。

 追伸。いじめと闘うことは、そんなに大変なことなの?と驚いたでしょうか。ここで自分の本を出すのも気が引けるのですが、現代のいじめを題材に『青空に飛ぶ』(講談社文庫)という小説を書きました。子供達が、どういじめを巧妙に隠して、親や先生にばれないようにいじめを楽しんでいるのか、最新の事情を描写しました。参考になるかもしれないので、あげておきます。

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このニュースに関するつぶやき

  • 予測する力、察する力が弱い。虐める側はパッと見有利に思うけど、その気質って必ず後々になっても影響する。今で言えば自殺されるかもしれないし
    • イイネ!0
    • コメント 17件
  • まぁ、お母さんの言葉で、息子がいじめに加担するタイプだと分かるわな。。。優位な流れにのる人間だよ。
    • イイネ!399
    • コメント 13件

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