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「もう限界」カサンドラ妻の悲鳴に困惑しつつも「変わりたい」 アスペルガーの夫の本音

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2020年01月23日 11:30  AERA dot.

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写真イラスト:古村耀子
イラスト:古村耀子
 昨年12月、掲載したアスペルガー症候群の特性を持つ夫の言動に絶望するカサンドラ妻の記事に大きな反響が寄せられた。AERA 2020年1月27日号では、妻の怒りにいまいちピンとこないながらも「変わりたい」と望む、夫側の声も聞いた。

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 シルバーグレーのコートに身を包み、待ち合わせ場所に現れたのは、見るからに上品な紳士だった。誰もが知る大企業で出世し、関連会社の社長を務めたこともあるこの男性(73)に「青天の霹靂(へきれき)」が起きたのは3年前。引退し、10歳近く年下の妻と悠々自適の老後を楽しもうとしていた矢先、別居を宣言された。

「家内いわく、鋭いナイフでスーッと心を切られるような毎日だったそうです。妻をカサンドラにしてしまった責任は全て私にあるんです」(男性)

 カサンドラ症候群とは、アスペルガー症候群(AS)の特性を持つ人との間でコミュニケーションが取れないパートナーが、心身に支障をきたす状態。割合としては男性がASで女性がカサンドラとなる場合が多い。

「たとえばどんな振る舞いが妻を傷つけたと思いますか」

 そう問うと男性は何度も首をひねり、困惑の表情を浮かべた。

「具体的にと言われると難しいですが、面白かった新聞記事のコピーを『読んでみて』と渡したとか。彼女も日々忙しいので困ったんじゃないですか。あとは急に不機嫌に黙り込むとか」

 不機嫌になる原因を尋ねるとまたしばし考え、「嫌なことを話題にされた時、ですかねえ」。

「(ASに多いという)こだわりは強いみたいです。そうだなぁ、焼きそばにはビールとか」

 2時間近く話したが、出てくるのは、先ほどの「ナイフうんぬん」とはどうにも結びつかないエピソードばかり。男性は「悪いのは私」と繰り返すが、だんだん、男性はごく普通の夫で、妻のほうが神経質で度量の狭い人物のように思えてくる。

 取材後、男性の了解を得て、妻に電話した。すると「夫は三重人格みたいな感じなんです」と妻。一つ目の人格は、「エリートなのに腰が低く、温厚で誠実な人」。記者が抱いた印象そのものだ。妻もそこに尊敬の念を覚え結婚したが、間もなく「怒りっぽく」「幼児性の強い」人格が顔を出してきたという。

「他人と一緒にいれば、怒る時にも『加減』というものがあると思うんですが、ASの特性で他者認識がないんでしょうね。自分の『不快』をモロに出し、怒りが全身からあふれ出す感じなんです。しかも何に怒っているのか本人もわからないみたいで、聞いても答えられない」(妻)

 妻がASについて知ったのは3年半前。それまでの数十年は、夫の機嫌が悪くならないよう「寒くない?」「何が食べたい?」と気遣い、世話を焼き続けた。夫はなんでも察してくれる母親に甘える幼児のように振る舞う一方で、妻の求めは無視、拒否、見下すことも多かったという。 

 たとえば「雪道の運転は嫌だと伝えたのにスキー旅行の運転を強要する」「ネクタイを選んでと言いつつ提案は全て却下」「ホームパーティーで、妻の手料理で場が盛り上がったところで突然、関係ないネタで妻をこき下ろす」など、夫への取材とは対照的に、次々とエピソードが出てくる。

 ささいなすれ違いであっても、それが毎日、何度も繰り返されるうちに、妻は「磁場が狂ってくるような感じ。おかしいのは夫なのか、自分なのかさえわからなくなった」。5年ほど前には突発性難聴に、やがて起き上がることもつらくなり、最後は夫にスリッパを投げつけ「もう限界」と泣き叫んだ。

 夫婦は今、ASなどの発達障害と夫婦関係を専門とする臨床心理士の滝口のぞみさんにカウンセリングを受けている。妻は数カ月に1回。夫は2週間に1回。「家内のような女性は他にいません。また一緒に暮らしたい」と話す夫は、自らの言動を改めるため滝口さんと「過去の検証作業」を続けている。

「ASの人は他者の気持ちや言外の意図を想像するのが苦手ですが、そこを想像してみる。『口うるさくガミガミ言っている』と受け止め反撃してしまったことについても、ただ謝るのではなく、妻の言葉の裏には愛情や思いやりがあったことに気づく必要があります」(滝口さん)

「検証」で一度理解したつもりになっても、「応用」ができないところにも難しさがある。その理由について、どんぐり発達クリニックの宮尾益知院長は、「ASの人は物事をうまく概念化できないから」と指摘する。同医師によれば、定型発達の人が新しい出来事にうまく対処できるのは、目の前の事象と過去の事象が同じようなことだと理解し「多分こんなことだな」と「概念化」できているから。だがASの人は毎日違うことが起きていると捉えてしまうため、過去も現在もバラバラの点として存在し、線や面にならない。

「外の世界ではうまくいっている人もいます。社会性は周囲の人の状況を自分に置き換えて考えることで形成されますが、彼らはそれを『損得』で身につけてきたと言います。仕事は基本、損得の世界ですし、情に流されないほうがうまくいく面もある。要は定型発達とASの人では『認知パターン』が違うのです。ASはマイノリティーではあるけれども、それ自体が悪いわけではない」(宮尾医師)

 しかし、カサンドラになった妻にすれば、「だから理解してあげて」と言われても到底納得できない。自分たちが受けた深い傷や悲しみを夫にも社会にも理解されず苦しんできたからだ。(編集部・石臥薫子)

※AERA 2020年1月27日号より抜粋

このニュースに関するつぶやき

  • そもそも夫はアスペルガーではなさそう。
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  • こんな男性多いと思いますよ。
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