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初回で褒められ…ゴルフ歴四十年の黒川博行、今年も変わらず“安定”

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2020年01月23日 16:00  AERA dot.

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写真黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する (写真=朝日新聞社)
黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する (写真=朝日新聞社)
 ギャンブル好きで知られる直木賞作家・黒川博行氏の連載『出たとこ勝負』。今回はゴルフについて。

*  *  *
 去年の暮れ、芸大卒業生(京都・今熊野の雀荘に集まった麻雀仲間)の忘年会で、珍しくゴルフに誘われた。いつものメンバーのひとりが腰痛で参加できず、その交代要員だという。

「いつなんや」わたしは訊(き)いた。「一月の中旬」「そんな寒いときに、なにが悲しいてゴルフなんぞするんや」「ゴルフは年中できる。二月になったらもっと寒い」「おれ、一年以上してへん」「あほでもできる」

 あほ、という言葉がひっかかった。しょっちゅうやっているこいつらはもっとあほやんけ──。

 実は、わたしのゴルフ歴はけっこう古い。初めて行ったのは二十代の後半、京都のスナックで友だちと飲んでいて、その店のコンペに誘われたのだ。会費は五千円、豪華な景品(テレビやホットプレート)があるという。──そう、当時は飲み屋のゴルフコンペが流行(はや)った。会費の五千円は、いま考えると高いが──。「おれ、ゴルフなんかしたことない」「球を地面においてクラブを振るんや」友だちがおもしろがっていう。「クラブも靴も持ってへん」「おれのクラブとゴルフバッグをやる。靴とボールは買え」

 そんなこんなで千五百円の靴とロストボールを買い、前日は友だちの家に泊まってコンペに参加した。

 当日は快晴、入念な素振りをし、生まれて初めて打ったティーショットはきれいにスライスしてよく飛んだ。「ナイスショット。テニスより簡単かもな」

「OBです」「なんで?」「コースアウト」

 OBも知らずにコースに出たのだった。

 コンペのスコアは百三十だった。空振りは一度もせず、ボールは五、六個なくした。「あんたはセンスがある。ちゃんと練習したら、すぐに百は切れる」と同行のメンバーに褒められた。

 その日の帰り、車の中で友だちにいった。

「大の男が一日遊んで、五千円は安いな」
「五千円……? グリーンフィーは」
「なんや、それ」
「ゴルフ場に払う金」
「払うてへんけど……」
「しゃあない。おれがマスターに渡しとく。一万円もあったら足りるやろ」

 その金をポケットから出したらキーが落ちた。

「なんと、ロッカーのキーも返してへんかったんか」
「だって、知らなかったんだもん」
「分かった。知らんかったで、世の中のたいていのことは片が付く」

 運動神経がいいだの、パットが巧いだのと褒めそやしておきながら、その友だちからゴルフに誘われることは二度となかった。

 それからは、もらったクラブと千五百円の靴で、年に一、二回はコースをまわった。スコアはいつも百三十そこそこで、百二十を切ることはない。まことに低値安定というべきか。

 二十年ほど前、出版社主催のゴルフコンペに誘われ、「おれのクラブはパーシモンで、グリップは革巻きやで」と自慢したら、さすがに編集者も哀れに思ったのか、知り合いの会社オーナーからクラブセットとバッグをもらってくれた。そのコンペは作家Oといっしょだったが、なんと、彼は七十五でまわったから驚いた。ぶっちぎりの優勝だった。パーティがよかったのかもしれない。

 ゴルフ歴四十年にしてコースは五十回ほどまわったが、練習場へ行ったのはせいぜい五回か。いま使っている靴ももらいものだ。

 で、先日の新年ゴルフ。前半六十二、後半六十二と、みごとに安定していた。

※週刊朝日  2020年1月31日号

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