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クレーマーに対し、満足度の高い対応をするスキルの難しさ

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2020年01月23日 16:00  AERA dot.

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AERA dot.

写真(C)榎本まみ
(C)榎本まみ
 新卒で督促業界に入ったOLが、毎日、怒鳴られ、脅されながら、年間2000億円の債権を回収するまでを描き15万部のベストセラーとなった「督促OL修行日記」(文藝春秋刊)。その後も都内のコールセンターに身をひそめ、スキルと経験を積んでパワーアップした督促OLがクレーマー、カスハラ(カスタマー・ハラスメント)に逆襲する術を伝授する。

*  *  *
 コールセンターではよく「応対品質」という言葉が使われる。そして多くのコールセンターではそれをとても重要視している。応対品質とはなにかを一言で表すのは難しいが、私は「電話に出たオペレータがどれだけスムーズかつ正確に、印象よく(相手を怒らせることなく)満足させながら受け答えをしたか」ということをひっくるめて表す言葉だと思っている。重要なものなのだが、応対品質を上げることはとても難しい。

 まず正確に応対品質を数値で測ることが難しい。コールセンターによってはクレームの数やお客様からのお褒めの言葉、また電話がつながるまでの時間や呼損(電話に出られなかった数)によって応対品質を測っているところがあるが、それで正確に応対の良し悪しを測れているかと言われると疑問がある。

 また応対品質は研修で上げることが難しい。計測がしにくいということは、具体的に何が高い応対品質と言われているのか表すことも難しいということだ。研修では業務知識や敬語や丁寧語などの言葉遣いを教えることはできても、「応対品質向上」と銘打った研修はせいぜい模範とされるベテランオペレータの音声を聞くくらいだ。

 だから今のコールセンター業界では、応対品質の良し悪しはオペレータの資質に頼りがちになっている。高い応対品質は一種の個性や才能であるとみなされているのだ。

 受け答えの上手なオペレータが入ると「いい人が入ってラッキーだね」と言われ、クレームを起こしがちなオペレータが入ると「あの人はお客さんを怒らせちゃうんだよね」と問題児扱いされる。教育によって応対品質を向上させることが難しいので、問題のあるオペレータはなぜ自分がお客様を怒らせるのかがわからないまま、怒鳴られることに疲れて辞めていってしまう。

 応対品質というのはなんだかつかみどころが無いものだが、私は新人オペレータだったころ「応対品質を上げたい!」と強く願ったことがある。私も問題児と言われるオペレータと同様に、毎日お客様を怒らせ怒鳴られていたからだ。

 私が働いていたコールセンターは督促という支払いが滞ったお客様に入金のお願いするという特殊なコールセンターで、業界内でもトップレベルのクレーム率と言われている所だった。お金がないと人は余裕がなくなり、余裕がなくなると些細なことで怒りやすくなる。そんなお客様に「お金を支払ってほしい」と言いづらい電話をかける督促は、「忙しいときにかけてくるな!」「お前の言い方が気に食わないんだよ!」と罵声が飛んでくることがしょっちゅうだった。

 応対品質を上げたいというよりは「怒られたくない」という一心で、私はどうすれば相手を怒らせることなく満足させる電話ができるのかということを研究したのだった。

 そして新人時代から10年以上が経ち、私の応対品質は劇的に向上した。いまや電話口でお客様を怒らせることは皆無で(最初から怒っているクレームは別としても)、新人研修では私の電話音声が模範音声として使われているし、お褒めの言葉をもらう率はトップだったこともある。自慢のつもりではないし、私は自己評価が低いので自慢に聞こえることも言いたくはないのだけれど、ただ、どうしても、高い応対品質を生み出すものは資質でも才能でもない、ということを言いたかったのだ。

 高い応対品質を生み出しているものはなんなのか、私はそれを血眼で探した。そしてそれがいくつかの能力に起因しているのではないかと思い至ったが、その代表的なものが「自信」だった。

 聞かれたことに正確に答え、相手に不安を与えない堂々とした受け答えをする。応対品質、もしくは顧客満足度が高い応対というのはつまりオペレータに「自信」のある応対なのである。

 その自信を生み出しているのは知識や経験だ。だからコールセンターでは社歴の長いオペレータほど応対品質が高くなる。けれどまれにコールセンターが初めての新人でも、すばらしく応対品質の高い応対をしているオペレータがいる。そんな人に話を聞くと人生経験が豊富な人が多かった。なかなかない修羅場を経験していたり、なにかしらの武勲を持っていたりする。彼らは自分に根拠のある自信がある人たちだったのだ。


 でも「いい応対=自信がある応対」とはわかっても、一朝一夕で自信をつけることは難しい。10年以上コールセンターで働いた今でさえ、私は自分に自信があるかといわれると微妙なところだ。

 けれどコールセンターで働くだけなら、自信は本当に持ってなくてもいいのだ。幸いコールセンターは音声だけでのやり取りだし、お客様は一期一会の方ばかり。だから、どうすれば自信があるように聞こえるのか、その技法だけを知っていればいい。私はそう考えて、どうすれば自信がありそうに聞こえるのかということを、加えて研究していった。

 それをいくつか紹介していきたい。

 まず、低い声でゆっくりしゃべる。高い声や、早口でしゃべると自信がありそうには聞こえない。電話口というのはついつい早口で声が高くなりがちだが、そこを意識して低くゆっくりしゃべる。

 そして、絶対に言い切る。わからないことはわからないと言い、調べてからまだ電話をする。電話口で慌ててしまうのは自分が知らないことを聞かれた時や、相手に「それでいいんだな!?」と詰め寄られる場合だ。言い切れることは言い切ること、そして自信がないことやわからないことがあれば「今は回答できないので確認してから連絡する」と電話を置く。

 もちろん悪意のあるお客様の場合「そんなこともわからないのか、今答えろ!」と言ってくることが多いが、それに絶対に乗ってはいけない。

「不確かなことは言えないので、確認してからお答えします」と折り返すのだ。

 そして、ダメならダメだ、でも何とかなる。ということを知っておく。私はお客様に怒られてばかりの頃「失敗してはダメだ」と思っていた。だから突っ込まれるとパニックになり、しどろもどろになって相手に攻撃される隙を与えてしまっていた。

 自信のあるオペレータさんたちは、窮地でも「自分はなんとかなる、大丈夫だ」と思える人々だった。死ぬほどつらい修羅場を経験し、それを乗り越えた人は実感を持ってそれを知っている。

 コールセンターにかかってくる電話は無理難題が多い、必ず何とかなるものだ。ものすごい失敗をやらかしてもどれだけ相手を怒らせても最後には収束するし、どうしようもない時は会社や上司がリカバリをしてくれる。そう思えるようになってから、私の怒られる回数は少しずつ減っていった。

 もう一度言うが、応対品質が高い応対とは自信がある応対、そして自信がありそうに見える(コールセンターなので聞こえるだが)応対のことなのだ。本当の自信は、経験が与えてくれるものだと思う。でも今電話口だけでも自信があるようにふるまいたいのなら、今回紹介した方法は少し役に立つと思う。

 私は今でも自信満々とは言えないが、10年前よりは確実に自信がついている。それは自信があるふりを続けた結果、昔より怒られることなくなって、応対品質がいいとさえ言われるようになったからだ。

 本当に自信がつくその日まで、それがあるように振る舞えば、それがいつか本当になっていくのかもしれない、と最近は思っている。(榎本まみ)

※週刊朝日オンライン限定記事

【おすすめ記事】クレーマーの長電話を強制終了する シャットアウトフレーズ“3連コンボ”


このニュースに関するつぶやき

  • クレーマーなんぞ所詮憂さ晴らしかごね得狙いだもんな。
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  • 久しぶりに「良い(内容のある)記事」だ!
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