子どもの野球肘障害を減らすため、全軟連が7つのルール改定を提案

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2020年01月24日 18:00  ベースボールキング

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1月18日、19日に群馬県前橋市のALSOKぐんま総合スポーツセンターで、「ぐんま野球フェスタ2020」が開催された。昨年は1日だったが、今年は2日間にわたり多彩なイベントが催された。



「野球肩肘検診」は18、19日の両日行われた。18日は小中学生の野球選手を対象に埼玉西武ライオンズアカデミーによる「野球教室」、19日は小学生を対象に、県内8校の高校球児群馬県高野連公認の「野球あそび」。
さらに「野球コーディネーション」「お母さんに役立つスポーツ栄養の話」「野球傷害のほんとうの話」「園児〜小学校低学年の野球体験教室」「AED使用体験」「ベースボール5体験」なども行われた。



これと並行して、県内の少年野球チームの指導者を対象にした「指導者講習会」も行われた。

「昨年やってみて、親御さんからは通常やる野球肩肘検診よりも丁寧にやってくれるので非常にありがたいといわれました。ただ時間がなくて、中身も密度がありすぎて。それで2日に分けて分散した次第です。指導者講習も、単体でやっていたときは指導者しか来なかったものが、フェスタにしたことで保護者もきてくれるようになった。情報や意識を共有できたのが大きいですね」
主催者の古島弘三整形外科病院スポーツ医学センター長は語る。

「指導者講習会」は、県内の少年野球指導者760人が出席。
午前中は古島弘三医師が野球少年の肩ひじの障害が起こるメカニズムについて、写真や動画も交えて詳細に説明。OCD(離断性骨軟骨炎)や、トミー・ジョン手術の動画に、息をのむ指導者もいた。また古島医師は視察したドミニカ共和国の野球環境についても紹介した。



午後は各講師が野球の様々な側面について話をした。
一般社団法人スポーツメディカルコンプライアンス協会の中英行理事は「スポーツパーソンシップ」という考え方について実例を交えながら紹介した。「スポーツ」と「体育」の違いを説明しスポーツパーソンシップとは「スポーツを通じて身に着ける総合的な人間力」だとした。

堺ビッグボーイズ中学部監督で、NPO法人BBフューチャー理事長の阪長友仁氏はドミニカ共和国と日本の少年野球の育成システムを比較。MLBに2019年も152人もの選手を輩出したドミニカ共和国の育成システムは「今」ではなく「未来」を見据えていることを力説した。

全日本軟式野球連盟の宗像豊巳専務理事は、昨年、この席上で学童野球の「70球」の球数制限を打ち出して大きな反響を呼んだが、今年は野球肘障害を減らすため、さらなるルールの改定(案)として、

1.試合回:6回制
2.試合数規制:年間80試合以内
3.投捕間距離の改正:16メートル → 15メートルへ
4.盗塁数規制:1試合3〜5回、パスボールでの進塁なし
5.ホームベースの拡大化:大人用と同じサイズ
6.大会:トーナメント制からリーグ制へ移行
7.カウント:ワンストライクから始める

を提案した。





最後にディスカッションが行われた。
古島医師が司会進行をして、阪長氏、宗像氏、スポーツメディカルコンプライアンス協会の中野司代表、「野球消滅」の著者でスポーツライターの中島大輔氏、群馬県スポーツ少年団野球部会長の加藤満氏が議論を交わした。

1. 野球今昔、海外との比較
2. 野球競技人口の減少について
3. 野球傷害について
4. 子供を守るためのルール作り
5. 指導体制について
6. 少年野球の今後の課題

というテーマでコメンテーターが意見を述べた。

指導者講習会は、休憩をはさんで6時間に及んだ。参加者の中には「自分たちが長年やっていた野球がこんなに変わってきているのか、と実感できた」という指導者もいた。
古島弘三医師は「まだ時間が足りない」と語った。

盛りだくさんなメニューから見えてくるのは、「問題を共有したい」という主催者の強い思いだった。
プロ野球選手と小中学生、高校生と小学生が一緒に野球をする。保護者や指導者が、野球肩肘障害について学ぶ。野球界の現状と未来について知る。フェスタのチラシには「対象」として「野球に興味のある方すべて」と書かれていた。
全国的に「野球離れ」が進行する中、群馬県の野球界が垣根を越えて野球振興に力を合わせに、なければ、という意気込みが見て取れた。

古島弘三医師は
「来年は1月23日です。施設すべてを借り切って、1日でやります」と話した。
このイベントを通じて、群馬県の野球界は一つになろうとしている。(取材・写真:濱岡章文)

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