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自宅を燃やした弟は、ADHDだった――「もっと早くわかっていれば」兄が法廷で語った後悔

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2020年01月25日 00:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

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殺人、暴行、わいせつ、薬物、窃盗……毎日毎日、事件がセンセーショナルに報じられる中、大きな話題になるわけでもなく、犯した罪をひっそりと裁かれていく人たちがいます。彼らは一体、どうして罪を犯してしまったのか。これからの生活で、どうやって罪を償っていくのか。傍聴席に座り、静かに(時に荒々しく)語られる被告の言葉に耳を傾けると、“人生”という名のドラマが見えてきます――。

【#006号法廷】

罪状:現住建造物等放火
被告:Y男(54歳)
逮捕に至る経緯:2018年9月15日午後3時ごろ、都内にある築40年の2階建木造スレートの借家から出火。午後4時半ごろには鎮火したものの、2階の柱などが焼失。住人である兄弟のうち、弟(Y男)が1階風呂場より救出されたが(兄は出勤していたため無事)、「自殺を試みて火を放った」と自供、逮捕。

 ADHD、社会不安障害、回避性パーソナリティ障害、社交不安障害、境界性知能などのため、仕事に就いても長続きしなかったという被告・Y男。勤務していたスーパーを17年末に退職したと、同居する兄(57歳)に言い出せず、9カ月間、貯金を切り崩して生活費の月6万円を入れていた。しかし、ついに支払いができなくなったことから、退職が発覚。それまでもY男は、詐欺に引っかかって借金を作るなどしていたため、兄からきつく叱責される。Y男はこれを機に、焼身自殺しようと思い立ち、ライターで室内に点火。弁護側によると、「犯行時、Y男は心神耗弱状態にあった」という――。

「死ぬしかない」Y男を追い詰めた生活費

 黒いスーツ、豊かなシルバーヘアのY男が手錠と腰縄をつけられて入廷。背が高く手足も長いのに、背中を丸めているので、どこかおどおどした感じでした。「生きづらさを抱えながら都会の片隅で孤独に暮らす男」といえば、どうしても映画『ジョーカー』の主人公、アーサー・フレックを重ねてしまいます。アーサーはダークサイドに堕ちてしまいましたが、Y男には兄という支えがあったので、辛うじて踏みとどまれたのでしょう。

 事件の1週間前、兄から生活費を請求されたものの、すでに蓄えが尽きていたY男。証人として出廷した兄によると、事件のきっかけになったのは「仕事を探したのか?」「ずっと寝てたのか?」と、Y男を責めたことだったといいます。「これでなんとかしてくれー!」と、「尋常じゃない様子で弟が500円玉貯金箱を差し出した」という兄の証言は、不謹慎ですが、映画のワンシーンのようでした。

 他人から見れば、たった1カ月だけ生活費を入れられないという些末なことでも、Y男は「自分はダメな人間、死ぬしかない」とまで思いつめていたわけで……。その空気の重さがヒシヒシと伝わってきます。実際に起きた事象には、フィクションを超えるものが時々あります。報道ではカットされるディテールがあらわになり、人々の思いに息が詰まる。これがたまらなくて、傍聴に足を運んでしまうんですよね。

 兄によると、10年ほど前、借金をつくった父親が実家を立ち退くことになり、Y男と一緒に自宅へ受け入れたのが、同居のきっかけだったといいます(母親はY男が30歳のときに死去)。その後、病に倒れた父親の介護をしつつ、兄は正社員として働きながら借金を返済。今から5年前に父親が死去し、兄弟2人だけの生活になったそうです。転職や無断欠勤を繰り返すY男を、兄は自分が勤める会社に入社させるなど、かなりがんばってサポートしてきたよう。証言台で淡々と語る言葉の端々から、兄の苦労がうかがえます。

 Y男は2歳の時、全身がけいれん・硬直し、白目をむいて口から泡を吹く「引きつけ」を起こしたそう。家族はこれにショックを受け、それ以来、Y男とは「腫れ物に触るように接してきた」とのこと。引っ込み思案で、人付き合いが苦手だったというY男。小学校ではいじめられていたものの皆勤賞で、性格はまじめだったといいます。

 兄は、Y男が40歳の時に「しゃべることが幼稚でおかしい」と気がついたそう。無断欠勤を叱ると幼児のように泣き、「人と会うのが怖くて、店頭にも出られない」との理由でスーパーの仕事を辞めたというY男。「早く(Y男の障害が)わかっていれば、もっと楽に生きられたのでは……と思います」と後悔を語る兄の姿は切なかったです。

 今回の事件がきっかけで精神鑑定を受け、Y男に診断が下されたことで、仕事が続かなかったり、人間関係がうまくいかなかったりなど、「モヤモヤしていたものが(わかって)ちょっとホッとした」と述べた兄。「出所後は施設に入れて、別々に住むことになるが、できるだけのことはしたい。(事件については)親戚にも言わない」といい、Y男はソーシャルワーカーのサポートを受けて、自立を目指すそうです。

 事件以来、久しぶりに会ったY男について、兄は「健康的になった。当時は気になるぐらい顔色が悪かったのでホッとした」と語り、心から安堵した様子を見せていました。この2人はきっと、これからも支え合って生きていくのでしょう。

「裁判員裁判」は傍聴初心者にオススメ

 ちなみに、今回は「裁判員裁判」でした。「裁判を傍聴してみたいけど、周囲に詳しい人がいない」という方には、裁判員裁判の事案がオススメです。普段は裁判官や検察官、弁護士といった法曹関係者のみでやりとりをするため、専門用語がわからなかったり、傍聴し慣れていなかったりすると、チンプンカンプンな点が多々あります。でも彼らは、裁判員がいると一般人にもわかるよう、きちんと説明しながら裁判を進行してくれるのです。いつもはものすごい早口でしゃべる検察官や弁護士も、ゆっくり話してくれますよ(笑)。

 また、普段は裁判長に提出するだけで中身は見られない証拠書類を、大きなモニターに映し出すなんていう優しさも。いつ・どんな裁判員裁判が開かれるのかは、裁判所に電話で問い合わせれば教えてくれますので、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

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  • ADHDっていうか境界性知能だろ。
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