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業界をザワつかせた話題の映画『さよならテレビ』ラストでわかる”テレビって結局…”

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2020年01月25日 11:30  AERA dot.

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写真話題の映画『さよならテレビ』(C)東海テレビ放送
話題の映画『さよならテレビ』(C)東海テレビ放送
 1月2日に公開された映画『さよならテレビ』が密かに話題になっている。本作はもともと名古屋のローカル局である東海テレビが制作するテレビ番組として放送されたものだ。オンエアされてから、その内容はテレビ業界内で大反響を巻き起こし、番組を録画したDVDが業界関係者の間で流通していたという。今回その番組に新たなシーンが加えられ、映画として全国公開されることになった。

 東海テレビ制作の『さよならテレビ』は、自社の報道部にカメラを向けた異色のドキュメンタリーである。報道の名のもとにさまざまな取材対象者にカメラを向けてきたはずのテレビ制作者たちは、いざ自分たちが撮影される立場になると、あからさまに戸惑い、怒り、抵抗を見せた。本作では、そんな彼らの姿を映すことを通して、テレビの現場の空気感を生々しく伝えている。

『さよならテレビ』ではスポットを当てている主役級の人物が3人いる。局の看板番組を担当する男性アナウンサー、契約社員のベテラン記者、派遣社員の新人記者の3人だ。

 アナウンサーは、スタッフからもっと番組内で自分の意見を言うことを求められているが、なかなかそれに応えることができず、当たり障りのない話に終始してしまう。ベテラン記者は青臭いジャーナリズムを振りかざし、社会問題を積極的に取り上げようとするが、思うようにいかないことも多い。新人記者は見るからに頼りない人物で、ミスを連発して上司に怒られてばかりいる。派遣社員という不安定な立場に置かれているため、結果を出そうと焦るあまり、さらに致命的な問題を起こしてしまう。

 テレビ局を「マスゴミ」などと批判する人は、その中に悪意をもって悪事を働く「悪者」がいるはずだという漠然としたイメージを持っているかもしれない。だが、本作にはそのような分かりやすい悪者の姿はなかった。

 報道部のフロアには、上からの理不尽な要求や命令に苦しみ、日々の仕事をこなすことだけで精一杯のサラリーマンがいるだけだ。彼らが考えていることや悩んでいることの中身は、一般企業のサラリーマンとさほど変わらないだろう。

 私自身は制作会社でテレビ番組の制作に携わっていた経験があるため、本作で描かれていた現場の雰囲気は何となく理解できる。その意味では、異業種の世界を覗き見するという楽しみはそれほどなかった。ただ、懐かしい感じがした。私自身がテレビの現場を離れてから随分経つが、その空気感は本質的にはあまり変わっていないように感じられた。ああ、そうそう、テレビってこういう感じだよな、と思った。

 私は本作を、テレビ制作者が作ったテレビ制作現場の「あるあるネタ」として楽しんだ。ああ、あるある、こういうことってあるよね、こういう人っているよね、というのが第一の感想だ。

 ただ、その意味では、本作は中途半端な出来ではないか、と途中まで見た段階では感じていた。確かにテレビの空気感は伝わってくるのだが、肝心なところが十分に説明されていないではないかと思ったのだ。

 だが、その疑問は最後に解けた。ネタバレを避けるために具体的なことは伏せるが、ラストシーンで私が考える「テレビの最もテレビらしいところ」が明かされていた。それを見て私は、今までよりさらに深くうなずき、そうそう、テレビって結局こうなんだよな、と思った。

 本作は人によって評価が分かれるだろう。ジャーナリズムのようなものに価値を置いている人にとっては、本作のアプローチはテレビの自己批判としては踏み込みが甘くて物足りないと感じられるかもしれない。また、純粋な娯楽映画として見た人にとっては、分かりやすい結論やメッセージ性がないところが不満に思えるかもしれない。ただ、そのように見る人によって感想が異なり、気になるポイントが違うのは、本作が優れたドキュメンタリーである証だ。

 自分で自分をくすぐるのは難しい。テレビ制作者がテレビそのものを批評するのが難しいのもそれと同じだ。だが、この映画では、奇跡的にある程度までそれに成功しているように思える。それは、本作の作り手が、生ぬるい理想論や分かりやすい対立構造に落とし込むことなく、一歩引いた立場でテレビの本質を切り取ってみせたからだ。

 皮肉にも、テレビに「さよなら」を告げている本作こそが、滅びゆくテレビに残る数少ない希望であり、最後の良心なのだ。(ラリー遠田)

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