『シロクロ』清野菜名の魅力は「声」にあり? 一人二役で存分に発揮する演技力

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2020年01月26日 08:01  リアルサウンド

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『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』(c)読売テレビ

 日曜ドラマ『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』(読売テレビ・日本テレビ系)で、横浜流星とW主演を務める清野菜名。これまで『TOKYO TRIBE』や『今日から俺は!!』(日本テレビ系)などでアクション女優としても名を馳せた清野が、本作ではアクションはもちろん、一人二役という新たな難役に挑戦している。


参考:清野の華麗なアクションはこちらから


 『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』は、驚異的な身体能力を持つ謎の女・ミスパンダ(清野菜名)と彼女を操る男・飼育員(横浜流星)が、Mr.ノーコンプライアンス(佐藤二朗)からの依頼を受け、世の中のグレーな事件にシロクロつけるため、警察やマスコミが触れない「隠れた真相」を大胆に暴いていくという物語。ミスパンダの正体である加藤レンは、かつては“天才美少女棋士”と騒がれたが、10年前のある事件をきっかけにネガティブな性格になり、成績が伸び悩んでいる。一方ミスパンダに変身した時は、レンとは対照的に超ポジティブでテンションの高い人物になり、悪事を徹底的に断罪し公開処刑していく。白髪ウィッグに黒いアイマスクを着用して「ミスパンダ」というエキセントリックな風貌と行動から、熱狂的なファンもいるダークヒーローだ。


 2020年1月期ドラマで、13才〜19才の男女に一番見られているドラマが『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』(※ビデオリサーチ社調べ)だという。若い層に特に厚い支持を得ており、ミスパンダの言動にツッコミを入れたり、ミスパンダのイラストを描くなど、現実世界においても熱狂的なファンを獲得しつつある存在なのだ。そして、それはミスパンダがアクションとしてだけではなく、そのキャラクター自体に大きな魅力があることを意味する。


 そんなミスパンダを演じる清野。清野は、清楚なイメージながらも、女優の中で1、2を争うほどのアクションが特徴だ。同枠で放送されていた『今日から俺は!!』でも、おしとやかで美人だが合気道の使い手、女番長と誤解されるほどの強さを持つ女子高生役を演じるなど、喧嘩や戦いとは無縁そうな風貌で激しいアクションをこなしてしまうギャップが、他のアクション女優にはない彼女の魅力。ただ決してアクションに頼っているわけではなく、映画『パーフェクト・レボリューション』では人格障害を抱えた風俗嬢という難しい役を感情豊かに演じ、黒柳徹子の半生を描いたNHK朝ドラ『トットちゃん!』では天真爛漫に、『半分、青い。』(ともにNHK総合)では純粋で瑞々しい演技を見せるなど、作品によって臨機応変に対応する演技派として活躍。様々な役を演じるが一貫しているのは上品さ。今回は繊細で大人しいレンと、自由奔放で明るいミスパンダを使い分ける役柄で、まさに清野の良さを余すところなくデフォルメ化したキャラと言っていいだろう。


 激しいアクションは想定内だが、今回印象的なのは清野の声の良さ。ドラマ内でも名前が出た『名探偵コナン』を意識した口調なのかも知れないが、いつアンパンマンの声優をしてもおかしくない少年のような口調とハッキリとした声質が、マスク姿以上に非日常的なヒーロー感を演出しているように思う。一種のトレンドとも言えるジョーカータイプのアンチヒーローであるミスパンダの怖いところは、モラルやルールを無視して悪事を暴いていくところで、会議や葬式に突然乱入しては、人の注意など聞くけど構わず任務を続行していく狂気。


 普通なら距離感を抱くが、清野の声の良さと、マスクをしていても滲み出る上品な立ち振る舞いで、登場人物たちと同じく視聴者も翻弄されミスパンダの話に聞き入ってしまう力がある。それが笑顔でグイグイ迫る恐ろしさは、清野のキャリアがあるからこそできる演技。番組公式インタビュー(https://www.ytv.co.jp/shirokuro/topics/)で「私としてはアメコミのヒーローのように、ダイナミックなイメージで演じています。やっていてすごく楽しいですし、新しい自分を発見できた気がします」と感想を述べている。


 そんな、モラルや秩序を無視して自分なりの正義で戦うミスパンダだが、自分の中で作っている勝手な正義感は彼女自身もコントロールされているところが、このドラマの興味深いところ。ダークヒーローの勧善懲悪は表向きで、真のテーマは、レンが変わってしまった10年前の放火事件の真実を思い出して(暴いて)いくこと。レンの姉妹・リコはこの事件で亡くなり、自分が生き延びた代わりにリコが死んでしまったと罪悪感を抱き、PTSDを患い、火に怯える繊細で内気な性格に変わってしまった。


 そしてレンを溺愛する母親は事件がきっかけで療養施設で治療を受けている。第二話の最後に「リコが死んでくれて良かった」と黒く塗りつぶされたリコの写真を指でこする母親(山口紗弥加)の姿を見たレンは、小さい頃に母親が1人の娘を溺愛し、檻の中にいるもう1人の娘にバナナを投げつける姿を思い出す。レンは精神科医に治療を受け、何らかの暗示をかけられ過去の記憶を変えられてるような会話があったが、檻=パンダで、そのトラウマがミスパンダを生み出した一つの理由だと考えると、今生きているレンは本当はリコで、自分を隠してレンを演じている可能性がある。また、ミスパンダは直輝によってコントロールされ変身しているが、真実を追求するために実は催眠術にかかったフリをしている可能性も。いずれにしろ、レンとミスパンダの性格が真逆なのは、レンのトラウマやストレスから生み出されたものなのは間違いないだろう。


 この日曜ドラマ枠は『あなたの番です』や『ニッポンノワールー刑事Yの反乱ー』など、ミステリーとミスリードに溢れた展開が多いが、どの作品も「人の二面性」が重要になってくる。今作は、清野がレンとミスパンダの分かりやすい二面性だけでなく、実はリコパートの繊細な二面性の演技が一番の見どころで、今後はレンとリコという姉妹の関係をどう演じ、視聴者にさりげなく伝えていくのか。過去と現在、レンとリコ、そしてレンとミスパンダ、様々な人格と向き合う女優・清野菜名の腕の見せどころである。


(文=本 手)


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