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元サッカー日本代表・巻 誠一郎が引退試合後に語った「オシムの教え、日本代表、第二の人生」

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2020年01月29日 06:32  週プレNEWS

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写真1月13日に、最後の所属チームであり地元でもあるJ3・ロアッソ熊本の本拠地で引退試合を行なった巻 誠一郎
1月13日に、最後の所属チームであり地元でもあるJ3・ロアッソ熊本の本拠地で引退試合を行なった巻 誠一郎

サッカー日本代表でも活躍した巻 誠一郎(まき・せいいちろう)の引退試合が、1月13日、巻が最後に所属したJ3・ロアッソ熊本の本拠地である「えがお健康スタジアム」で開催された。

現役引退発表からおよそ1年。巻自身がイチから企画したという引退試合には、福西崇史、中田浩二、小笠原満男といった元日本代表のメンバーをはじめ、約40名が集結。ジェフユナイテッド市原・千葉や熊本のメンバーを中心とした「巻フレンズ」と、サッカー日本代表で巻と共にプレーした「元日本代表ドリームチーム」に分かれ、90分の対戦形式で行なわれた。

それぞれのチームの選手として45分ずつ出場した巻は、代名詞のヘディングでのゴールを含む5得点。その活躍をこう振り返った。

「試合ではシュートやPKも外しましたが、それも僕らしい引退だったかなと思います(笑)。この日集まってくれた皆さんが、本当に楽しそうにしている様子が伝わってきたことがうれしい」

試合後のセレモニーでは、1万970人の観衆を前に「(地元でもある)熊本でスパイクを脱げることを誇りに思う。今まで支えてもらった人を、これからは支えていきたい」と挨拶し、セカンドキャリアにも意欲をのぞかせた。

駒澤大学卒業後の2003年にジェフユナイテッド市原に入団し、巻のプロ選手生活がスタートした。このときに出会ったのが、「サッカーを教えてくれた恩師」と話す、元日本代表監督のイビチャ・オシムだ。

「オシム監督からは『もっと野心を持て! おまえたちは代表選手になりたいとか思わないのか?』と言われていました。当時はベンチで過ごすことが多かったですが、ピッチの中でできるプレーを少しずつ増やしていこう、という意識で練習していました。選手としての成長が一番感じられた時期でしたね」

へディングとハードワークという武器を磨いた巻は、徐々にチームでポジションをつかみ、ナビスコ杯連覇(05年、06年。現ルヴァン杯)をはじめ、チームの躍進に貢献。05年7月には、オシム監督の言葉に導かれるように、日本代表に初選出された。

「日本代表でのプレーを意識したのは、実際に選ばれたときでした(笑)。よく『プレッシャーを楽しむ』とコメントする選手がいますが、そんなことは一度もありませんでしたね。もちろん代表に選ばれるのは光栄ですけど、FWの僕が得点を決めないとチームは勝てない。国民の期待を背負うすさまじいプレッシャーを感じました」

06年には"ジーコジャパン"の一員として、ドイツW杯に出場。23人目で名前を呼ばれた巻の「サプライズ選出」も話題になった。しかし本番では、1分け2敗で予選敗退。"黄金世代"と呼ばれた選手たちが円熟期を迎えていたはずの日本代表は、決勝トーナメント進出を逃した。巻は敗退の理由を次のように分析する。

「サッカーは個性や個人の能力をつなぐ作業が大切。それがうまくいけば、『1+1』から可能性が広がって、10にも20にもできる。選手個人の能力は本当に高かったですが、互いの良さを知り、能力を引き出すようなプレーが少し足りなかったように思う」

巻自身も3試合目のブラジル戦に出場。「大舞台であればあるほど、ゴールが獲れる選手」と自らに言い聞かせて臨んだものの、結果は1−4の惨敗に終わった。

「本当に何もできませんでした。世界有数の選手たちを相手に自分ができたことを挙げるなら、ハードワークと前線からの守備。普段から得意としているプレーだけでしたね。日々の積み重ねの大切さを痛感させられました」

W杯のピッチで過ごした60分間(後半15分に交代)をこのように語った巻。くしくもそれは、オシムが日頃から巻に伝えていたことでもあった。

その後、オシム監督就任後の日本代表にも選出されたが、徐々に代表から遠ざかっていった。南アフリカW杯が行なわれた10年には海外挑戦を表明。その後、J2・東京ヴェルディに移籍して国内復帰を果たすと、14年に熊本に入団し、5シーズンプレーした。

巻は故郷・熊本に戻ってきたとき、地元のスポーツへの関心の低さに愕然(がくぜん)としたという。そこから、「スポーツには夢があって、選手もきちんと社会と向き合っていることを発信したい」という思いでプレーを続けていた16年に、熊本を大地震が襲った。

故郷の危機に、巻は自ら復興募金サイトを設立。避難所を回ってサッカー教室を開くなど、復興に尽力した。今回の自らの引退試合でも、クラウドファンディングを利用して被災した子供たちをスタジアムに招待するなど、支援活動を継続している。

引退の挨拶のなかで「これからは心の中でボールを蹴りながら、皆さんとコミュニケーションを取り、第二の人生を歩みたい」と語った巻。現在は熊本県で会社の運営に関わり、障害者の就労支援をはじめとする多くの社会的事業に取り組んでいる。

そんな彼には思い描いている夢がある。

「ビジネスの世界に足を踏み入れてみて、サッカーで培った経験が意外と社会でも役立つことがわかりました(笑)。例えば、『個人の長所を伸ばし、他人を生かす』ための方法は、オシムさんから学んだもの。サッカーで養ったものを還元し、セカンドキャリアでの成功例をつくれるように頑張っていきたいです」

そして最後に「皆さんを支えられるような社会人になりたい」という言葉で現役生活に別れを告げた巻の、セカンドキャリアの活躍にもエールを送りたい。

■巻 誠一郎(Maki Seiichiro) 
1980年8月7日生まれ、熊本県出身。ポジションはFW。駒澤大学からジェフユナイテッド市原(現ジェフユナイテッド市原・千葉)に加入し、2006年ドイツW杯に出場。その後、海外などでのプレーを経て、14年にロアッソ熊本に移籍。19年1月に現役引退を発表した

取材・文/白鳥純一 写真/(C)makiphoto

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