日向坂46「ソンナコトナイヨ」とAKB48楽曲の類似性 “歌謡”を押し出した作風を考察

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2020年01月29日 13:02  リアルサウンド

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日向坂46 『ソンナコトナイヨ』初回仕様限定盤TYPE-A(CD+Blu-ray)

 リアルサウンド編集部から「日向坂46の新曲がAKB48楽曲のような仕上がりだと話題になっている」と聞いたのですが、一言でいえば、日向坂46の新曲「ソンナコトナイヨ」は、1970年代〜1980年代の歌謡曲っぽいのだと書いたほうが正確でしょう。結論から書いてしまいました。


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 「ソンナコトナイヨ」は、イントロからして、楽曲の音楽的なコンセプトを一気に提示するかのようなサウンドです。ブラスセクションの音色が鳴り響き、ギターもうなります。いかにもシンセサイザー然とした音色が鳴るのも特徴的。コーラスが厚く、間奏ではギターソロも展開されます。そうしたサウンドに加えて、サビからDメロにかけてのメロディの持つ憂い、翳りは往年の歌謡曲を強くイメージさせます。


 ではなぜ「AKB楽曲のような仕上がり」だという声が出てくるのか? それは48グループも歌謡性を重視してきたという点が指摘できます。有名曲で挙げるならば、「365日の紙飛行機」における1960年代〜1970年代のフォーク歌謡のような手触り、「フライングゲット」のラテン歌謡的なアプローチなどが思い浮かびます。日本人がポピュラーミュージックにおいて愛好する歌謡性をしっかりつかんできたのが48グループです。それは、乃木坂46が「インフルエンサー」で哀愁に満ちた歌謡性を押し出してきたこととも通底しているでしょう。いかにも日本人好みの哀愁だと感じたのです。


 ただ、「ソンナコトナイヨ」と48歌謡の類似性を指摘する声に関しては、サウンドに関する類似性も大きいのではないかと思います。48歌謡は、ストリングスやブラスセクションの音色を多用し、ギターも全面に出し、さらに男声も含めた厚いコーラスで包む傾向があります。こうした点の多くは「ソンナコトナイヨ」のサウンドとつながるものがあります。


 一方で、この原稿の執筆時点で公開されている『ソンナコトナイヨ』のカップリング曲たちは、表題曲とかなり雰囲気が異なります。日向坂46のメンバー全員が出演するドラマ『DASADA』(日本テレビ系)の主題歌でもある「青春の馬」は、サビにおけるドラムのリズムパターンが昂揚感をもたらします。「窓を開けなくても」は、ビートやファンキーなギター、なによりメロディの開放感が「ソンナコトナイヨ」と大きく異なります。MVが3曲公開されただけの段階で、かなり多彩です。


 振り返れば、日向坂46のデビュー曲である「キュン」もメロディはかなり歌謡曲的です。ところが2ndシングル曲「ドレミソラシド」では、爽快さを感じさせるメロディと強いビートを押しだし、3rdシングル曲「こんなに好きになっちゃっていいの?」ではせつないラブソングへ。今回の「ソンナコトナイヨ」へのさまざまな声も、日向坂46が作品ごとに変化を続けているからだと言えるでしょう。これだけ多くの音楽性を打ち出す日向坂46ですが、実は2019年3月27日の『キュン』のリリースから、まだ1年も経っていないのです。(宗像明将)


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