介護予防のキーワードは「楽しく集える場を作る」こと。高齢化社会のいま、取り組むべきこととは?

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2020年01月30日 07:31  JIJICO

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超高齢社会に突入した日本で介護予防は一大関心事です。厚生労働省は、「介護予防活動普及展開事業(平成28年・2016年)」を発足するなど、生涯現役社会の実現に向けた取り組みを全国規模で行っています。自治体で、健康講座や体操教室などのさまざまな施策を実施するものの、参加率が伸び悩むケースが多いことが課題となっています。


最近では、あえて介護予防を前面に出さずに、まずは楽しい場を作り多くの人に集まってもらうことから始め、介護予防への関心を喚起することに成功する事例が増えています。介護予防において、楽しく集える場を作ることがなぜ重要なのかを解説します。


人と人がふれあう社会的交流が介護予防の第一歩


介護予防に対する意識が高まる中、「フレイル」という概念が注目を浴びています。フレイルとは、加齢に伴い心身が衰え始めた状態を意味します。高齢者の多くがフレイルの段階を経て要介護状態に移行すると考えられ、介護予防のためには、フレイルに早めに気づき、対処することが重要です。


フレイルには、身体機能の衰えを示す「フィジカル・フレイル」、心理面の衰えを示す「メンタル・フレイル」、さらに社会的交流面の衰えを示す「ソーシャル・フレイル」があります。


最近の研究では、身体機能の衰えに先立って社会的交流面の衰えが兆候として現れる傾向が強いことが明らかになっています(※1)。社会的交流面の衰えとは、「一人で食事をする孤食が増えてきた」「気持ちが憂鬱になることが増えた」「人との交流が減った」といった状態を意味します。


健康長寿のために重要な三大要素は、「栄養・運動・社会的交流」です。これらは密接に関連しています。


社会的交流の減少に伴い孤食が増えると栄養状態が悪くなりがちで、心身の不調を感じやすくなります。また、人との交流が減ってくると、どこかに歩いて出かけることも少なくなります。趣味の園芸やスポーツなどに熱心に取り組めば十分な運動になりますが、そういった機会が減ってくると、体力の低下が懸念されます。定期的に人の集う場に足を運び、交流を絶やさないことが「介護予防の第一歩である」と言っても、決して過言ではありません。


参加率を上げるためには対象を絞らず参加者を募ることがポイント


介護予防は日本全体の課題であり、健康診断受診の促進、体操教室、健康講座などのさまざまな施策を全国の自治体が実施しています。一方で、参加率が低いケースも多く見られます。特に定年退職をした男性の参加率の向上が課題です。


介護予防に関する施策の大半は、将来要介護認定を受けるリスクが高い人を対象に実施されています。しかし、介護予防の必要性は理解しつつも、自分自身のリスクが高いことを簡単に受け入れることができない地域住民も少なくありません。自尊心を考えれば仕方ないことです。


そこで、あえて介護予防を前面に出さずに、まずは対象を絞らず多くの人が参加できる楽しい場に集まってもらい、各種施策への関心向上へ結びつけていく事例が増えています。社会的交流が介護予防の第一歩であることから、多くの住民を対象とした楽しい場を自治体が主体となって作ることは、非常に理にかなった施策と言えるでしょう。


男の料理教室やブラックジャックなど、「楽しく集える」場の実例


自治体が取り組む楽しい場作りの実例をいくつか紹介します。


全国の自治体で開催が増えているのが、地域交流サロンです。愛知県武豊町の「憩いのサロン」は、先駆的な事例として世界からも注目されています。


「憩いのサロン」は、おしゃべりや体操などにより楽しい時間を過ごすことを目的としており、住民ボランティアが主体となって運営しています。サロンに参加する人は、参加しない人に比べて要介護認定に至る率が半分以下に抑制されたことが明らかになっています(※2)。そのため、一人暮らしの高齢者を対象とした昼食会の開催も増えています。


定年退職後の男性が集いやすい場として全国で人気があるのは、「男の料理教室」です。料理を通じて栄養についての理解も深まり、一石二鳥です。落語会の中でロコモティブシンドローム(運動器症候群)を予防する体操を一緒に行う事例や、ブラックジャックやルーレットなどのゲームを実施する例もあります。


楽しいことは無数にありますので、知恵を絞ればまだまだ新しいアイデアが生まれてくるはずです。各地にユニークな「楽しく集える場」が増えていくことを願います。



(田久 朋寛・ヨガ・ピラティスインストラクター)
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