ヒカルは“日本一のYouTuber”になれるのか 炎上騒動からグループ化まで、成り上がりの戦略を読む

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2020年02月10日 07:31  リアルサウンド

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動画サムネイルより

 ヒカルのYouTubeチャンネルが3周年を迎えた。YouTuber・ヒカルについてはあらためて説明するまでもないかもしれないが、当初はゲーム実況者(現在とは別チャンネル)として活動をスタートさせ、商品紹介や検証動画など、いわゆるYouTuberスタイルのチャンネルを解説したのが2016年のこと。馴染みのゲームショップの店長との掛け合い動画や胡散臭い自販機ガチャ検証動画が人気を博していたが、彼の知名度を不動のものとしたのは、翌年4月、屋台のテキ屋くじを(ありあまる金の力で)全部引いて、そのインチキを暴く動画がバズりにバズって現在までに4000万近い再生数を叩き出した。


(参考:宮迫博之、人気YouTuberヒカルとのコラボは「テレビ復帰」遠回りに?


 そして世間に(アレな意味で)彼の名前を知らしめたのは言うまでもなく「VALU騒動」だ。20107年秋、「VALU」(個人の価値を株式のように売買できるWEBサービス)にて、盟友・ラファエルたちと自分のVALUの価値を煽りに煽って売り抜けようとした結果、「インサイダー取引だ」と大炎上。これが本当の株式取引だったら、手が後ろに回っていた可能性もあるので、法律が整っていなかったブロックチェーンを使った新規サービスだったからこそ「炎上」で済んだわけだが。


 テキ屋にしても、VALUにしても、ルールのスキをついて注目を集めることが、彼の武器であったが、炎上から復活して以降、ダーティー路線から徐々にキャラクターイメージをスライドさせた結果、数字も回復。昨年は俳優の藤原竜也とも共演、雨上がり決死隊・宮迫博之のYouTubeチャンネルの初コラボ相手としても注目を集めている。当の対談動画では、終始口の減らない慇懃無礼な態度でありながら、自身の「炎上」経験を持ち出して懐に入り込む形となった。なお、例によって賛否は分かれているが。


 そんなこんなで、毀誉褒貶に事欠かかない、炎上系金持ちYouTuberのヒカルだが、大量のアンチを抱えつつもチャンネルは無事存続し、冒頭に触れたとおりチャンネル解説も3周年(おめでとう)。この日アップロードされた動画において、2月の間「1ヶ月3000万円生活」をすること、現在ヒカルチャンネルで活動中の、彼を中心にしたグループYouTuberの名を「新生NextStage」にすることが発表された。


 「1ヶ月3000万円生活」は、彼の従来のパブリックイメージである「金持ちYouTuber」としてのヒカルとしてのパフォーマンスを生かした動画になるだろう。そしてグループ系YouTuberは「炎上」以降、彼が模索してきた道である。模索してきた道とは何か? 自身のチャンネル動画で繰り返し公言してきているのだが、ここを読んでいる人は、おそらくヒカルの動画をつぶさに視聴していないと思われるので、ざっくり説明すると、「女性ファンが欲しい」に尽きる。


 もちろん、別に彼は単純にモテたいわけではなく(というか多分私生活では相応にモテモテでいらっしゃるに違いないのだが)、言い分はこうだ。「炎上」したときに、男性ファンは潮が引くように離れてしまった。「炎上」で離れていかないのは女性ファンであると。ちょっと発想がズレている気もしなくはないが(詐欺まがいのことをしたら女性ファンだって離れるし、犯罪ともなればワタナベマホトのように大量の女性ファンがいようがいまいが、謹慎は免れないだろう)、ヒカルはマジでそう考えているようだ。


 「女性ファン=水溜りボンドや東海オンエアなどのグループorコンビYouTuberが大好きである」という図式により、彼の周囲にいるYouTuberの中で、屈指のイケメンである怪盗ピンキーとともに、ボーカルユニット「カル×ピン」を始動させたのは昨年のこと。


 そして今年からスタートした、ヒカル、スタッフの名人、後輩のロケマサ、実兄でスタッフでもあるまえっさんで構成される、4人組グループYouTuber「新生NextStage」だが、やはりこれも先述したとおり「グループYouTuberは女性に人気がある」という動機で行っているように見える。


 しかし、待って欲しい。いち女性YouTuberファン(※38歳中年女性)として物申したいのだが、グループYouTuberにおいて、1番大事なのはルックスではない。「関係性」だ。個性豊かなメンバーだからこそ、その間に様々な関係性が生まれる。そう、文脈がなければ、関係性は生まれないのだ。ヒカルと3人に関係性がないとは言わないが(付き合いは長いし、実の兄だっている)、知名度の差もありどうしても「舎弟感」が出てしまう。


 人気YouTuberと無名の若者といえば、はじめしゃちょーのサブチャンネル「はじめしゃちょーの畑」があるが(というか、ヒカルの活動も「畑」に着想を得たのだと思われる)、はじめしゃちょーのコミュニケーションの仕方は、無邪気というか、登録者数日本一のYouTuberとは思えないほど頼りない面もある。だからこそ、知名度に差のある若者相手でも、そこに威圧的なものは感じられない。


 しかしヒカルは、どちらかというとヤンキー的な気質の持ち主である。これが宮迫やオリエンタルラジオ・中田敦彦のような「格上」だと、慇懃無礼なヤンキーコミュニケーションもエンタメとして成立するが、「格下」相手だとどうしても威圧感が出てしまう。彼が島田紳助をリスペクトしていることもあってか、どうしても「上から下」へのコミュニケーションになってしまうのだ。「畑」が「はじめしゃちょーと愉快な仲間たち」なら、「新生ネクステージ」は「ヒカルとその舎弟」に見えてしまう。


 そもそも、「NextStage」とは、以前彼が所属していたYouTuber事務所名ではあるが、単なる事務所の名前というよりは「仲間」という印象が強い。やたらめったらPS4やMacBookTwitter上でプレゼントしていただけの存在ではなく、当時ノリにのってたヒカル、ラファエル、禁断ボーイズ、かす、怪盗ピンキーの「関係性」によってファンは熱狂したのではないだろうか。


 ヒカルは何故「グループYouTuber」に固執するのか(再生数をみると、別に突出して数字があるわけでもない)。3周年動画でも熱く語っていたように、彼は今でも日本一のYouTuberを目指しており、そのためには、グループYouTuberであることが必要だと考えている。


 日本一のYouTuberというのは、再生数なのか、登録者数なのか、世間的な知名度とイメージの話なのか定かではないが、そこにヤンキー的な「成り上がり」の精神を感じるのだ。彼はことあるごとに「自分は(兵庫県)姫路市出身の田舎者」であることを強調する。「そんな自分が日本一をとるところを見ていてほしい」と。


 姫路市に隣接する明石市出身であるエミリンは、ヒカルとの対談動画で「ヒカルさんは姫路のヤンキーの星」だと語っていた。これはおべっかではなく、実感として本当にそうなのだろう。一部の若者にとってヒカルの存在は、ある種の立身出世物語として機能している(それが果たして良いことなのかどうかはさておき)。


 その期待にこたえるように、3周年動画でもこんな風に語っている。


 「もう日本一をとるって言葉はね、言わなくてもいいと思うんです。言ったところでそんなん無理だって言われるだけなんで。それでも言っときます。どうせとるんで。とった時に言いたいんで。有言実行やったやろって」


 自分のキャラクターについての「文脈」はここまで理解してるのに、なんでかグループに関してはそれを活かしきれてないんだよなあ……。彼が本当にメンバーの個性を生かしたグループYouTuberを作れた暁には、「日本一」も夢ではないと筆者は考える。


(藤谷千明)


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  • YouTuberも飽和状態。生き残るの大変。
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