プロレスラー&格闘家はYouTuber向き? 蝶野正洋のチャンネル開設、朝倉兄弟の成功から考える

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2020年02月13日 07:01  リアルサウンド

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動画サムネイルより

 プロレスラーの蝶野正洋が今年元日に、YouTuberデビュー。2月11日には個人チャンネル「CHONO Network」を開設した経緯を語る動画を投稿し、いよいよ本格始動するようだ。


(参考:格闘家YouTuber・朝倉未来、北九州市の成人式に突撃 ヤンチャそうな新成人に「みんな良い子だね」


 YouTuberデビューしてすぐに、カジサックことキングコング・梶原雄太とのコラボ動画を投稿して話題を呼んだ蝶野。今回の動画「チャンネル開設を記念して蝶野正洋が激白!開設の思いを語る!」では、これから自身のチャンネルで“啓発・プロレス・エンターテインメント”と3本の柱を軸にコンテンツを届けていくと発表した。


 まずは“啓発”。蝶野は「社会の中で伝えなければいけないこと、みんなが知っておかなければならないことを伝えていきたい」として、救命活動や地域防災に関する啓発活動を発信していきたいとした。具体的には“AED”などを広めていきたいようで、思いの根底にはレスラー仲間が若くして亡くなった経験があるという。


 ただ、「こうした固いことばかりやっていては若い人は見てくれない」とした上で、蝶野は、過去の試合やエピソードを振り返るプロレスについての動画を製作すると宣言した。


 最後に“エンターテイメント”。「YouTubeがどんなものなのか知るために、講習を受ける気持ちで、プロのYouTuberと積極的に絡んでいく」と方針を明かし、「もしかしたらやりたくないこともやらされるとかあるかも知れない。それを自分ができるのかできないのか不安なのですが、その辺のところもぜひ見ていいただきたい」と呼びかけた。動画の最後には、“時給日本一のYouTuber”を自称するラファエルとの対談動画、カジサックとのクッキング動画の予告編も流れ、視聴者の期待をあおっていた。


 本動画の再生時間は13分程度。その間、蝶野は終始真面目なトーンと丁寧な語り口で自身のビジョンを語っていた。毎年、大晦日の恒例特番『笑ってはいけない〜』(日本テレビ系)に登場しては、月亭方正にビンタをかましている姿とは180度違う、“大人な蝶野正洋”が映し出されている。


 有名人・著名人のYouTuberデビューが日曜茶飯事になっている昨今において、プロ格闘家YouTuberも存在感を示しつつある。その筆頭にあるのが、朝倉未来・海兄弟だ。


 はじめにYouTube上で頭角を現したのは兄の未来。未来がプロ格闘家としてだけでなく、YouTuberとしても注目されるきっかけになったのが、昨年6月に公開された動画「街の喧嘩自慢にプロ格闘家がスパーリングを申し込んだらやるのかやらないのか」だ。


 街をフラッと歩き、その辺にたむろしているヤンチャそうな若者たちに「この中で一番喧嘩強い人誰?」と話しかけていく未来。その中から腕に覚えのありそうな者をジムに呼び出し、1人残らず叩きのめしていく様はさすがの一言だ。それだけでなく、スパーリングの後には拳を交えた若者たちを居酒屋に連れていき、「将来の夢とかあるの?」と相談に乗るという、頼れるアニキ的な親しみやすさも動画の中で垣間見せている。


 そんな未来に続けとばかりに、弟・海も、ここ最近になって精力的に動画をアップしている。とりわけ人気なのが「格闘家がオタクの格好をして歌舞伎町でポイ捨て注意してみた」という動画だ。


 これは、秋葉系男子に扮した海が、たばこのポイ捨てをするマナー違反者を注意するというもの。当然、中には「もううっせぇからそっち行けよ!」と食って掛かるゴロツキもいるのだが、そこはプロ格闘家。海がチェックのシャツを脱ぎ捨て、鍛え上げた肉体を見せつけながらシャドーボクシングを披露して見せると、たちまち全員しおらしいしくなる。こうした修羅場の後に、遠くでムービーを回しているカメラマンとのことへ歩み寄って、「あぶね。マジで、殴られるかと思った! 本当にヒヤヒヤした(笑)」とへらへらしながら報告するという等身大の若者的落差もまた良い。


 配信者の人物像を深いところまで掘り下げられるのが、YouTubeのメリット。テレビ的な枠組み、とりわけ、バラエティ番組的な仕組みの中では、ワンポイントリリーフのような扱いになりがちなプロレスラーや格闘家も、YouTubeでは好きなだけ自分語りができ、企画次第で自然体な素顔をアピールすることもできる。最近、長州力のかわいらしいツイッターが話題になったことからも明らかなように、コワモテで屈強な男たちのポジティブな意味での意外な一面には、人を惹きつける力があるものだ。


 それに、YouTubeでは格闘家の商売道具である“強さ”を、最大限見せつけるようなセルフプロデュース的企画を発信しやすい。「強くて良い人」を嫌いな人などいない。その意味で、朝倉未来のスパーリング動画と、海のポイ捨て動画は、格闘家としての“強さ”と、テレビやリングの上ではなかなか見られない「本当は良い人感」をうまい具合に両立させた、格闘家YouTuberにおける成功のプロトタイプ的動画ともいえる。


 そして、プロレスリングの世界に止まらない影響力を持ち、普段の活躍とギャップのある真面目な一面とともに、それをエンターテイメントとして広く届けようという戦略すら明かしている蝶野正洋の挑戦は、あとに続くと思われるプロレスラー、格闘家YouTuberにとっての試金石になるだろう。世代の差はあれ、朝倉兄弟のような大きなバズを起こすことに期待したいところだ。


(こじへい)


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