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『スカーレット』マツ(富田靖子)は幸福だったのか? 柔和な笑顔で川原家の精神的支柱に

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2020年02月16日 06:01  リアルサウンド

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写真『スカーレット』写真提供=NHK
『スカーレット』写真提供=NHK

 陶芸家・川原喜美子(戸田恵梨香)の歩みを描く『スカーレット』(NHK総合)第110話で、喜美子の母マツ(富田靖子)が天国に旅立った。常治(北村一輝)の妻、また三姉妹の母として川原家を支えたマツの人生を振り返ってみたい。


参考:伊藤健太郎、作り手に求められる俳優に 『スカーレット』武志役で見せる“理想の息子像”


 大阪の大地主の娘マツは常治と駆け落ちして結婚。恋文を紙飛行機のようにそっと塀の中に投げ入れるという、なんともロマンチックな恋路の末に結ばれた2人は、幼い三姉妹の手を引いて信楽にやってくる。


 常治とマツは典型的な夫唱婦随の夫婦だ。家父長制が未だ残るこの時代にも珍しいものではないが、家族ぐるみで付き合いのある大野夫妻の忠信(マギー)が、陽子(財前直見)の尻に敷かれっぱなしだったのとは好対照である。マツは一歩引いた位置から夫や娘たちの背中をそっと押してきた。


 控えめで決して前に出ないマツは、必ずしも良妻賢母とは言えない部分もあった。毎晩のように飲み歩く常治に対しては無力そのものだったし、家計の事情から喜美子を大阪から呼び戻したり、まだ幼い百合子(福田麻由子、子ども時代:住田萌乃)を自分の薬を取りに病院へ使いにやったエピソードでは、常治とともに視聴者から毒親とも称されることもあった。


 しかし、マツに悪意があったかと言われると、必ずしもそうは言い切れない。第100話で穴窯に執着する喜美子をなぜ止めないのかと聞く百合子に、「止めたら元に戻る?」とマツは返す。横暴に見える常治の行動が、家族を思うがゆえの空回りの結果だったのと同じように、一見すると受け身なマツの態度も、夫や娘たちの性格をよく理解した上で受け入れる包容力あってのものだった。


 柔和な笑顔のマツは、恋愛の機微に通じた縁結びの達人でもあった。喜美子が八郎(松下洸平)に思いを打ち明けた第60話。八郎がお見合い大作戦に参加すると知ったマツは、喜美子に「八郎さん、ええ感じの人やった。あんな人やったら、お見合い大作戦でええ人すぐにみつかるやろな」と言い、それとなく八郎への関心をくすぐることで恋愛に疎い喜美子を八郎の元に走らせた。


 また、大野家との親密なネットワークを生かして、なかなか進展しない百合子と信作の関係をサポート。自身の経験をもとにさりげなく助言するなど、三女の結婚を後押しした。そうかと思えば、二女・直子(桜庭ななみ)とともに金を無心しに来た鮫島(正門良規)に「結婚は許しません」とキッパリ告げるなど、常治が逝ってからは母として毅然とした姿を見せることもあった(のちに直子と鮫島は結婚)。


 娘たちの笑顔の中心にいたマツは川原家の精神的支柱だった。喜美子が女性陶芸家として周囲の反対にめげずに挑戦を続けることができたのは、変わらずに寄り添い続けた母の存在があってこそ。穴窯での7回目の窯焚きでは、直子や百合子夫妻も加わって、一家総出で窯焚きを2週間続け、見事に自然釉の再現に成功した。


 お嬢様育ちで鷹揚な性格のマツは、貧乏と苦労続きの川原家にあってオアシスのような存在だった。荷物を取りに来た八郎に、茶碗を「大事にしまっとこうか」と伝え、帰ってくる場所があることを知らせる心配りはマツの細やかな人柄を表している。


 病弱だったマツは夫の死後も生き抜き、三姉妹の行く末を見つめながら、親友の笑顔に見守られてドラマの舞台を去った。マツは幸福だったのだろうか? 「昭和の母親」を体現したようなマツだが、娘たちの進学を応援し、窯焚きの費用が足りない喜美子に自分の貯金を渡すなど、娘たちの味方でい続けた。世が世なら、きっと喜美子や直子のように自分の意志でさまざまなことに挑戦したはずだ。


 マツ亡き後、息子の武志(伊藤健太郎)が家を出た川原家は、実質的に喜美子が家長になった。独り身となり、自身の人生と向き合う喜美子にとって、地縁や血縁に縛られない関係性が終盤にかけて大きな比重を占めていくと予想される。


 何かを成し遂げた人の陰には必ずそれを支えた人の存在がある。時代とともに変わる家族のあり方を描いた『スカーレット』で、マツの微笑は幸福な記憶とともにあり続けるだろう。


■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。


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  • この時代の女性は,前に出て行動はしないのだろう。「毒親」と思ったことはないが,そのような評価?があったのか。幸せだったかどうかは本人が考えることだろう。
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