嵐 松本潤の“もう一つの仕事” 『ARASHI’s Diary -Voyage-』日本史上最大規模のドームツアー裏側を見て

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2020年02月17日 05:01  リアルサウンド

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 嵐が、Netflixで配信しているオリジナルドキュメンタリーシリーズ『ARASHI’s Diary -Voyage-』。1月28日に、第2話となる「5×20」が公開された。2020年12月31日をもって活動休止を発表している彼ら。その背景にどのような想いがあったのか、カメラが見続けてきた。


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 時は遡ること、2018年9月5日。史上最多50公演、237万人を動員した『ARASHI Anniversary Tour 5×20』に向けて、入念な打ち合わせが繰り広げられる。楽曲名がズラリと書き記されたホワイドボードをじっと見つめるのは、松本潤だ。


 「ジャニーズJr.のときに、タッキー(滝沢秀明)から聞いて、大阪で舞台やってるから、コンサート作れないんで代わりに(演出を)やっといてと。そのとき、タッキーの家で、いっしょにMDコンポで音楽の編集とかしてたりしたんですよ。中3ぐらいのときかな」。2018年1月に『A-Studio』(TBS系)へ出演した際、松本がコンサートの演出を手がけるようになったきっかけを、こんなふうに振り返っていた。


 「そのときの僕はタッキーから、ジャニーズJr.のコンサートを任されたという使命感のもと頑張るんですけど、全部タッキーが指示してて、やったという気持ちだけを経験させようと。それがなかったらやってないんじゃないんですかね」。その後、嵐としてデビューするとすぐに、単独ライブでスタッフたちと共にセットリストを考えるようになっていったという。


 ファンを楽しませたい。その想いが強いゆえに、打ち合わせは11時間に及ぶことも。「嵐っぽいっていうか、キャッチーさみたいな抜け感のあるところにいってほしい」「言葉がすごい入ってくるような感じにしてほしい」と、ときには、スタッフに対して難題を課すこともある。「やれ」の一言で片付けず、「○○してほしい」「頑張ろうよ」と盛り上げていく松本の言葉選びも印象的だ。ステージに立つ人間でありながら、その裏側までケアするのは、至難の業。それを20年もの間、手がけ続けてきた松本に改めて敬服してしまう。


 セットリスト、メンバーの動き、ライトの当たり方、衣装の生地、着替えのタイミング……松本がこだわるのは、楽曲の良さを活かすこと。そして何より嵐のメンバーの魅力が最大限に光ること。演出に絶対的な正解はないからこそ、松本は悩む。緊張感が走る会議室。沈黙の中、松本は大野智に「どういうダンスやりたい?」と尋ねる。


 急な問いかけに、大野はちょっと笑いながら「最初なんかゆっくり……で、いきなりバーンってなる感じ」と直感的に答えた。すると松本は「その“ゆっくり”の場合は、ゆっくり踊る? ゆっくり出てくるみたいな感じ?」と大野のイメージを丁寧に紐解いていく。「なんかムーンウォークじゃないけど、不思議な動きみたいな」と、ちょっとだけ具体的になっていく大野の言葉に、「ああ、なんかブァーンとしたやつね」と今度は松本が擬音語で反応するのが微笑ましい。


 「餅は餅屋」。松本がスタッフと熱く議論を交わす中で、櫻井翔はそんな言葉を口にしていた。松本が考えてくれた演出の中で、最高のパフォーマンスをすること。そのぶん、ラップのレコーディングやピアノの練習など、人知れず努力を続ける。


 「リーダーが出てきてカッコよく踊るさまが見たい」とダンスセクションを託された大野もまた然り。二宮和也は体調不良な相葉雅紀のため、振り付け動画を送ってさり気なくフォローする。松本の仕事に、リスペクトとプライドを持って、4人も自分のできる限りで応えていく。それぞれの頑張りを肌で感じ取り、自分も頑張ろうと奮起する。一生懸命もがく中でも、じゃれて笑い合い、相手を思いやる余裕は忘れない。それが嵐の20年だ。


 そんな20年の集大成となる『ARASHI Anniversary Tour 5×20』の準備期間から、すでに5人は活動休止へのカウントダウンが始まっていた。区切りが見えるからこそ、1日1日がより愛しくなる。一緒にいられるのは、こんなふうに何かを共に作れるのは、決して当たり前じゃないのだと噛み締める。それは、このドキュメンタリーを見ている私たちも同じだ。嵐として走り抜ける5人の“今”を、一瞬たりとりとも見逃せない。(文=佐藤結衣)


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