ホーム > mixiニュース > スポーツ > 格闘技 > 炎鵬、照強、宇良が「真っ向勝負」を挑む深いワケ 常識を覆す小兵力士の強さの秘密

炎鵬、照強、宇良が「真っ向勝負」を挑む深いワケ 常識を覆す小兵力士の強さの秘密

5

2020年02月17日 11:30  AERA dot.

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AERA dot.

写真大相撲初場所13日目、小結阿炎と対戦した炎鵬。突いてくる相手をかわし、体を沈めて潜り込む。すかさず右足を両手で抱えて持ち上げると、炎鵬より50キロ以上重い155キロの阿炎の体が、フワリと持ち上がった (c)朝日新聞社
大相撲初場所13日目、小結阿炎と対戦した炎鵬。突いてくる相手をかわし、体を沈めて潜り込む。すかさず右足を両手で抱えて持ち上げると、炎鵬より50キロ以上重い155キロの阿炎の体が、フワリと持ち上がった (c)朝日新聞社
 徳勝龍の平幕優勝に沸いた大相撲初場所。その土俵を大いに盛り上げたのが、炎鵬ら小兵力士だ。相撲は大きい者が有利。小兵は技でかわすもの。彼らはそんな常識を「真っ向勝負」で覆す。AERA2020年2月17日号は、小兵力士の強さの秘密に迫る。

【土俵を大いに盛り上げた 小兵力士たちをフォトギャラリーでご紹介!】

*  *  *
「さ、ひっくり返そう。」──。元日、新聞の朝刊に、そんなキャッチコピーが躍った。西武・そごうの全面広告。中央に小さくまわし姿で立っていたのが、大相撲の幕内力士・炎鵬だ。

 身長168センチは42人の幕内力士で最も低い(平均は183センチ)。そんな炎鵬が大きな相手にひるまず挑み、劣勢をひっくり返して勝利をつかむ姿に、メッセージを重ねたのだ。

 1月12日に幕を開けた大相撲初場所の土俵で、そのメッセージは見事に体現された。

 初場所の炎鵬は自己最高位の西前頭5枚目。初の上位陣挑戦で、後の大横綱でも壁にはね返されて大負けすることの多い状況だ。しかし、炎鵬はそんな壁をヒラリと跳び越えた。

 高校の4年先輩で、「雲の上の存在」の遠藤や、大関豪栄道、大関候補ナンバー1の関脇朝乃山、前場所まで大関だった関脇高安、若手ホープの小結阿炎(あび)といった実力者をなぎ倒し、8勝7敗と見事に勝ち越したのだ。

 自身も小兵力士として活躍した元関脇琴錦の朝日山親方は、その要因を卓越した技にみる。

「小さな力士は、有利になっても体力勝負で負ける危険性が高い。炎鵬は、それを避けるのがうまいんですよ。例えばまわしをつかんで投げるとき、最後までまわしをつかんだままだと、体を預けられて潰され、ケガもしかねない。でも、炎鵬は、投げた後でまわしを離し、のしかかる相手をかわす。だから技も決まるし、ケガも防げるのです」

 投げを打つときに、頭を地面すれすれまで振り下げるのも特徴だ。遠心力が生まれ、投げが強力になる。柔道ではよく見られるが、足の裏以外どこでも土俵につけば勝負が決まる相撲では、逆に自分が手や頭をつくリスクが高まり、推奨されない。しかし、体の小さな炎鵬は、大きな相手を倒すために、そんなリスクをいとわない。

 阿炎戦では、相手の足を手で持つ「足取り」で、155キロの両足をフワリと浮かせた。普通は片手だけで持つケースが多いが、炎鵬は両手を使い、しかもいったんしゃがみ込んでから、スクワットのようにヒザを伸ばしている。下半身の力も存分に使ったからこそ、相手が浮いたのだ。

 炎鵬同様、小兵の業師として鳴らした元小結智乃花の玉垣親方が注目するのは、「押し」の強さだ。

「小兵力士は大きな相手の懐に入り、くっついてまわしを取って相撲を取るタイプが多いです。私も舞の海(元小結、相撲解説者)もそうでした。炎鵬もそういう相撲を取りながら、離れて、押しても取れる。今までになかったタイプだと思います」

 初場所も、遠藤、豪栄道、朝乃山戦の決まり手はいずれも「押し出し」だった。出てくる相手をいなして泳がせたりしながら、勝負どころでは正面から堂々と押して相手を土俵の外に運んでいた。炎鵬は押しの大切さを、野球にたとえてこう語っている。

「押しは投手のストレートのようなもの。ストレートが速くないと変化球も生きません」

 小兵だからこそ、真っ向勝負の押しを磨く──。それは、炎鵬と同じく幕内で活躍する小兵力士・照強にも共通する姿勢だ。

 照強は炎鵬とほぼ変わらない169センチだが、体重は約20キロ多い120キロ。その分、押しの威力も増す。ブレークしたのは昨年7月の名古屋場所。終盤まで優勝争いにからみ、12勝3敗の好成績で敢闘賞に輝いた。12個の白星のうち10個の決まり手が押し出し、1個が押し倒し。押しで11勝もつかんだ。しかも、大きな相手にまっすぐぶつかり、いなしたりせずにそのまま押し出す相撲も見られた。

 照強は炎鵬と同学年。1995年1月17日、阪神大震災当日に淡路島で生まれた。初場所6日目がちょうど25年の節目にあたり、話題にもなった。真っ向勝負の押しには、故郷の被災者を相撲で元気づけたいとの思いも込められている。

 2年半前、炎鵬と同じように幕内上位で小兵旋風を起こしたのが宇良だ。今場所、炎鵬が見せた足取りのほか、相手の懐に潜り込み、後ろに反り返ってひっくり返す「反り技」などを武器に活躍。土俵際の粘りも驚異的で、「アクロバット力士」と注目を集めた。

 ところが、そんな派手な相撲とは裏腹に、宇良自身は、自分の得意は押しだと語る。少年時代の指導者の方針で、徹底的に押しを磨いた。そんな押しの強さがあるからこそ、アクロバティックな技が決まるのだ。

 学生時代、宇良は関西学院大、炎鵬は金沢学院大と、いずれも西日本の2部の弱小校に所属し、1〜2年時の宇良は65キロ未満級の選手だった。しかし、一念発起して肉体改造に挑み、同学年のトップ選手の北勝富士(当時日体大、現在幕内)などを倒すほどの実力をつけた。

 2学年下の炎鵬も当時、そんな宇良の活躍に刺激を受け、金沢学院大を1部へと押し上げ、4年の時には西日本学生選手権で常勝・近畿大を退けて団体優勝を成し遂げている。

 宇良は、旋風を起こした後、ヒザのケガで休場が続いて番付を落とし、下から2番目にあたる序二段に陥落。しかし、あきらめずに努力を重ね、初場所は序二段で優勝した。このまま復活ロードを進み、やがて炎鵬や照強と幕内で小兵対決が実現することが期待される。

 初場所は、幕内最下位の徳勝龍の優勝という、予想外の展開で幕を閉じた。今、大相撲には波乱の風が吹いている。炎鵬のような小兵が、真っ向勝負の押しを磨いて幕内優勝をさらう日も、夢ではない。(相撲ライター・十枝慶二)

※AERA 2020年2月17日号

このニュースに関するつぶやき

  • 小兵力士だけに怪我だけはしてほしくないね。
    • イイネ!0
    • コメント 0件
  • 小さいから見てるとハラハラするのよね。
    • イイネ!9
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(2件)

あなたにおすすめ

ランキングスポーツ

前日のランキングへ

ニュース設定