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藤原さくらの“今の声”を聞くーー新しいことへと挑み続けるモチベーションはどこから来るのか?

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2020年02月18日 12:02  リアルサウンド

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リアルサウンド

写真藤原さくら
藤原さくら

 2019年、藤原さくらが行なった『Twilight Tour 2019』を目撃した人は、きっと大きな驚きと喜びを同時に感じたことだろう。全編エレキギターを抱えた彼女が、新たなバンドメンバーを率いた全国ライブハウスツアー。ドラムス、ギター(×2)、ベースという編成により、音数を減らしたソリッドなアレンジで聴く馴染みの楽曲は、これまでとはまた違った新たな魅力を放っていたのだ。


 そんなツアーを経た藤原がデジタルシングル「Twilight」と「Ami」を、2月12日に同時リリースした。「Twilight」は夏フェスで彼女をサポートしたメンバーが、「Ami」はくだんの『Twilight Tour』を一緒に回ったメンバーがレコーディングにそれぞれ参加した楽曲。どちらもドラマ『100文字アイデアをドラマにした!』(テレビ東京系)主題歌に起用されており、すでに耳にしている人も多いはず。この2曲の振り幅の大きさからしても、来るべき彼女のニューアルバムは今まで以上にバラエティ豊かなものになること必至だろう。


 ツアーやフェスのみならず、劇団☆新感線の舞台『偽義経冥界歌』への参加や米国短期留学など、相変わらず新たな挑戦を続けている藤原。そのモチベーションはどこから来ているのだろうか。今回リアルサウンドでは、藤原さくらの「今の声」をお届けすると共に、新曲「Twilight」と「Ami」をさらに深く楽しむためのSpotifyプレイリストを作成した。本稿を読みながら聴いていただけたら幸いだ。


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■“エレキギター・モード”から繋がっていった新曲の制作


ーーさくらさんがエレキギターを持って、ロックバンドでライブハウスを回るツアー『Twilight Tour』を開催することはどのように決まったのでしょうか。


藤原さくら(以下、藤原):以前から東京・恵比寿LIQUIDROOMや、京都・磔磔のような、オールスタンディングで楽しめるライブハウスで演奏がしたかったんです。2019年は舞台もあり、音源をリリースする時間的な余裕がなかったのですが、だったらこの機会にバンドを組んで、地方を回るライブハウスツアーに挑戦してみたいと思いました。リリースツアーじゃないからセットリストも自由なイメージで、インディーズ時代の曲から最近の曲までをバンドメンバーに聴いてもらって、やりたい曲を一緒に選んで。アレンジも一からガンガン変えてやってみたら面白いんじゃないか、と。


 これまで私はずっとSPECIAL OTHERSやOvallのなどのバンドのメンバーとツアーやレコーディングをご一緒してきて。長く一緒にやってきていたので言わなくても伝わるというような抜群の安定感の中で歌わせてもらっていたんですけど、新たな試みのツアーだからこそ初めてのバンドメンバーと組んでみたいという思いもありました。


ーーメンバーはどんなふうに決まっていったのですか?


藤原:今回、インディーロックっぽいサウンドにしたいという気持ちがあって、スタッフと相談している中でミツメの名前が挙がったんです。それで、ドラムの須田洋次郎君にお願いして、彼の友人でもあるギターのayU tokiO君(猪爪東風)と、ベースの渡辺将人君(COMEBACK MY DAUGHTERS)を紹介してもらい、演奏を聴かせてもらったらめちゃくちゃカッコ良かったので「ぜひ一緒にやりたいです!」とお願いしました。まずはバンマスの洋次郎君と一緒に喫茶店に行って、どんなツアーにしたいのか、どんなサウンドにしたいのかをじっくりと話し合うところから始めました。


ーー初日の演奏を聴いたとき、ライブレポにも書いたのですが(“新しい藤原さくら”の姿に圧倒された一夜 新曲2曲も披露したライブハウスツアー初日を観て)、「The Black Keysをバックにラナ・デル・レイが歌っているような」、そんな印象を受けました。


藤原:なるほど、ありがとうございます。私がメンバーから「どんな感じにしたい?」と聞かれた時には、初期のビートルズのようなシンプルでかっこいいロックサウンドにしたいと伝えました。これまでのライブでは、いつも鍵盤を入れた編成が多かったんですけど、今回は最小限のギターアンサンブルだったので、音数もなるべく削っていきました。あと、『FUJI ROCK FESTIVAL ’19』でステラ・ドネリーを観た時、ずっとエレキギターを弾いていたのがすごくカッコよくて。そこから気持ちが“エレキギター・モード”になっていった気がしますね。夏フェスに弾き語りで出た時も「エレキでいいじゃん」ってなったし(笑)。


ーーエレキギターはayUさんのハンドメイドだと、ライブのMCでおっしゃってましたね。


藤原:そうなんです。テレキャス(Fender Telecaster)の形をした「アユトーン」というギターなんですけど、それとエフェクターを組み合わせた音が、バンドのアンサンブルにも合っていたので、お借りして弾くことになりました。週2で下北沢のリハーサルスタジオとかに通って練習して。みんなでエフェクターを買いに行ったりして、楽しかったですね。


ーーこれだけアレンジを変えたら、ライブを観た人も驚いたのでは?


藤原:これまでずっと私のライブを観てくれているファンや家族のみんなは、イントロを演奏し始めてもしばらく何の曲か分からなかったと言っていました(笑)。でも、私自身は同じ曲をずっと同じアレンジで演奏し続けていたら、きっと飽きてきちゃうと思うんですよね。お客さんはびっくりするかもしれないですけど、音源をたくさん聴き込んでくださっている方たちにこそ喜んでもらえたら嬉しいし、実際喜んでくれていたと思ってます。


ーー確かに驚いていましたけど皆さん楽しんでいましたよね。違うアレンジで聴くと、その曲の良さを再発見する楽しみもあるなって。


藤原:そうなんです。ただ、(リハーサルと同時期の)夏フェスはYasei Collectiveのメンバーと回ったので、そこでもアレンジをかなり変えたから頭がこんがらがるかと思いました(笑)。「Sunny Day」とかアレンジが2つあって、リハーサルを進める一方ではフェスにも出ていたから最初はパニックでした(笑)。今回「Twilight」と「Ami」は、そんな2つのバンドと一緒に演奏した2曲です。


ーーでは、その新曲について聞かせてください。まず「Twilight」はどんなふうに作ったのですか?


藤原:この曲、実は2年くらい前から原型があったんですよ。それを一旦取り払ってデタラメ英語みたいな感じで歌ったバージョンのデモを作ってから、Yasei Collectiveのメンバーと一緒にリハーサルスタジオに入ってヘッドアレンジをしました。実はもう1曲、このタイミングで同じようにYasei Collectiveのメンバーとアレンジした曲があるのですが、それは次のアルバムに入る予定です。


ーーYasei Collectiveのメンバーとのレコーディングはいかがでしたか?


藤原:Shingo Suzukiさん(Ovall)がプロデュースしてくださった「You and I」で、松下マサナオさん(Dr)や当時Yasei Collectiveのメンバーだった別所和洋さん(Key)が参加してくれたことはあったのですが、こんなふうにがっつりバンドに入ってもらったのは初めてだったので、とても楽しかったです。メンバーみんなでスタジオに入り、その場でアレンジを考えながらのプリプロダクションは、SPECIAL OTHERSの時と似たような感覚もありましたが、今までと違ったのは、自分が自宅で作ったデモを用意していったことでした。そのデモに入れた、例えばブラスセクションのフレーズとかが採用になったりもしているんです。


ーーアレンジにさくらさんのアイデアが採用されているわけですね。一方、「Ami」はライブハウスツアーでも演奏していた曲ですよね。


藤原:はい。さっき話したように、今回初めて全編エレキギターを持って、エフェクターを踏んで演奏するツアーだったので「そういう雰囲気にふさわしいロックな曲が欲しいね」とメンバーと話して、スタジオに入って作った曲です。ツアー初日(2019年9月27日)にLIQUIDROOMでお披露目した演奏と、音源ではアレンジも全く変わっています。グッとテンポも落としているし。


ーーこの曲も、まずさくらさんがデモを作ったのですか?


藤原:はい。実は昨年6月くらいからずっと私だけでスタジオに入ってデモを作り続けていたんです。気づいたら10数曲くらいになっていて、その中からピックアップした曲をバンドメンバーに「これ、ライブでやりたいです」って伝えて。それがライブでも披露した「Ami」と、お姉ちゃんの結婚式用に作った曲だったんです。


ーーそうやって自分一人で多重録音を試すようになったのは、mabanuaさんの影響も大きかったですか?(藤原の前作『green』と『red』はmabanuaプロデュースの二部作EPで、トラックも全てmabanuaが手掛けている)


藤原:そうですね。mabanuaさんはなんでも出来る人だし、自分もそうなりたいという気持ちがあったので、それをディレクターに相談したら「スタジオに入る時間を設けましょう」と言っていただいて。以前はボイスメモに弾き語りしたデモを録って、それをディレクターさんに送り続けるという「数打てば当たる戦法」で、アレンジャーさんにお渡しする時も、どんな雰囲気にしたいのかだけを伝えていたのですが、今回のデモの作り方は今までと全然違いましたね。


ーー「Ami」をバンドアレンジする時も、これまでとだいぶ違いましたか?


藤原:違いました。なぜか、昔からずっと一緒に組んでいるバンドと、初めてスタジオに入って録音してるようなノリで作れたというか(笑)。


ーーさくらさんのボーカルにはショートディレイがかかっていて、ちょっとジョン・レノンっぽいですよね。


藤原:ボーカルにエフェクトをかけることは以前から挑戦してみたくて、今回はいろんなパターンを試させてもらいました。「LOVE PSYCHEDELICOやボイ・パブロみたいなエフェクト処理をした声もかっこいいかもね」なんて言いながら、最終的にこんな声に仕上がりました。


■劇団☆新感線の舞台、アメリカ留学……藤原さくらは“未知”に挑み続ける


ーー来るべきニューアルバムは、どんな感じになりそうですか?


藤原:今までとは毛色がかなり違うと思います。自由度が高いし自分の趣味に走りまくっているし(笑)。以前だったら「ここまで振り切ってしまって大丈夫かな?」と思っていたところまで、今回は挑戦しています。ジプシージャズみたいな曲もあれば、ラップみたいな曲もある。まだできてない曲もありますが、全体的にかなり攻めた内容になるはずです。


ーー期待しています。インタビューの冒頭で舞台の話が少し出ましたが、劇団☆新感線『偽義経冥界歌』に出演することになった経緯もきかせてもらえますか?


藤原:劇団☆新感線の舞台は、これまで観客として何度も観に行っていたんです。最近だと『メタルマクベス』や『髑髏城の七人』も観ました。福岡にいたときは舞台公演というと劇団四季にしか行く機会がなかったんですけど、上京してからは、友人が出ている小劇場などにも足を運ぶようになって、舞台を観る機会が格段に増えました。


 ただ私の中でミュージカルって、お腹の底から声を出すイメージで、私が出演するなんて絶対にないことだと思っていたんです。それが今回、歌を歌う女の子役の候補として、出演のお話をいただきました。


ーーどう思いました?


藤原:最初は「絶対に無理です……!」という感じでした(笑)。でも、私も好きで観に行っていた劇団☆新感線の舞台ですし、いい経験になるはずだと。今までも、ドラマ(月9ドラマ『ラヴソング』)への出演なんて絶対にないと思っていたし、『ポンキッキーズ』のMCも「まさか自分が」という感じだったけど、どれも「歌」が繋げてくれたというか。歌が自分を別の世界へ引っ張っていってくれている感覚があって、それが今回は舞台だったのかなと思うようになっていきました。


ーー実際に演じてみていかがでしたか?


藤原:楽しかったです。舞台って、半年近くみんなでずっと一緒に過ごすんですよ。そうするとキャストもスタッフもみんな家族みたいになってくる。それって今までに味わったことのない感覚でした。


ーーツアーとも違う?


藤原:全然違いました! ツアーは全国を回るといっても、何日かインターバルがあったりするじゃないですか。でも舞台は文字通り毎日一緒にいて毎日ご飯を食べに行くんです。特に劇団☆新感線は規模も大きいから、何百人が一緒に動いているんですけど、自分はその中の一人でしかない。「藤原さくら」としてツアーを回るときとでは全然違うことばかりです。


ーー観客として観ていたときと、役者として舞台に立った後では見え方や感じ方も変わりましたか?


藤原:私は今、漫画を描いているんですけど、実際に描いてみると背景の描き込みとか「うわあ、大変だなあ!」って思うんですよ。読んでいる時って、そこまで背景って気にしてなかったなあと。だけど、実はすごく重要だし描くのも非常に手間がかかる。舞台もそれと同じで、観客として観ているときは単純に「わあ、面白い!」って思っているんですけど、装置とかの細かい工夫がたくさんあって。


 例えば私が弾く楽器も、実際に演奏できるものと、ただ単に持っているだけのときはレプリカで、叩き壊すシーンで使うものも別に作ってあるんです。スペアだけで、舞台裏には何本もの楽器があるのだけど、そういう細かいところで色んな方が動いているんだなと、舞台に立ってみてより強く感じました。もちろん、ライブやレコーディングも同じなんですけど、舞台という初めてのチャレンジによって、それをすごく意識しました。


ーー人前で演じるというのは、ドラマともライブとも違う経験でしたか?


藤原:最初のうちは「同じことを1日に2公演とか毎日続けるのってどんな感じなんだろう?」と思っていたんです。役者さんによっても「同じことを何度もやりたくない」とおっしゃる方もいれば、「繰り返すたびに新しい発見がある」とおっしゃる方もいて。私はどちらかと言えば前者の考えだったんですけど、実際に演じてみたら「前回の時にはこの感情はわからなかったな」と思う瞬間が結構あって、それはすごくびっくりしたし面白いなと思いました。繰り返すことで見えてくる景色があって、「次はこうしてみよう」なんて少しずつ新しいことを試すこともできるんですよね。そこはライブとすごく似ているかもしれない。ライブも、明日も明後日も、来週も同じ曲を歌うわけじゃないですか。その中で新しい発見があったり、前回とは違うことを試してみたりするところは一緒だなって。


ーーお客さんの反応や、共演者の方の間合いなども毎回違うでしょうね。


藤原:そうなんです。自分では意図しなかったところでお客さんが爆笑することもあって。それで、自分のお芝居の軌道を修正することもあります。そういう意味では、私はお客さんにかなり助けられている気がしますね。お客さんがいてくれた方が、やりやすい……(笑)。


ーー舞台をやったことで、シンガーソングライターとしての活動に何かフィードバックする部分はありますか?


藤原:今回、ライブハウスツアーで、バンドの音もアンプからガンガン出していたんですけど「舞台を終えてからの方が、声が出てた」ってPAさんに言っていただきました。確かに、舞台の前はメンテナンスをしたり、筋トレや柔軟をやったりしていたから。あまり意識はしてなかったけど変化はあったかもしれないですね。


 私が舞台で演じたのは、大陸からやってきた「歌唄い」の役で、戦いで亡くなった人の弔いの歌を歌っているんです。それは、私自身が自分を落ち着かせるために歌詞を書くことに近いのかなって。例えばじいちゃんが亡くなった時に、悲しかったけどそれを歌に昇華した経験だったりとか。


ーー今までご自身が無意識でしてきたことの意味を、架空の役を演じたことで再確認した。


藤原:そうですね。シンガーソングライターの人は、皆さんやっていることなのかもしれないけど。


ーー先日、リーガルリリーのたかはしほのかさんにインタビューをしていて(参照)、自分の思いを歌詞にすることは、ある意味「供養」なのかもしれないという話になったんです。そのことをちょっと思い出しました。


藤原:確かにそうかもしれないですね。私はそんなに強い人間ではないので、何か辛いことがあった時に歌詞にすることで気持ちを鎮めていますし、同じような心境にいる人がその歌を聴いて、「しんどいわあ」と思いつつ明日も頑張れるような作用があったとしたら、私自身はすごく報われると思いますね。「歌があってよかったな」と。


ーーあと、昨年はアメリカに短期留学されていたんですって?


藤原:はい。ロサンゼルスに3週間、ニューヨークに1週間。アメリカは初めてで、ブロードウェイで舞台をたくさん観てきました。キャロル・キングの舞台(『Beautiful: The Carole King Musical』)とか、先日トニー賞を獲ったギリシャ神話をモチーフにした『Hadestown』とか……めちゃくちゃ面白かったです。


 LAにいたときは、語学学校に通いながらギターのレッスンに行ったり、いろんな楽器屋さんを巡ったりもして。学校では友達ができて、放課後みんなで食事したりもしました。スイス、ドイツ、韓国、ベルギーから来た子達と、日本で今まで通り過ごしていたら絶対に出会わない組み合わせで普通に恋バナなんかをしたりして。どこの国で暮らしていても、みんな恋に悩んでるんですね。あと、クラブとか日本でも行ったことなかったのにラスベガスで初めて体験しました(笑)。


ーー(笑)。昨年はリリースこそなかったけど、新しいことにたくさんチャレンジした1年だったんですね。


藤原:ほんとそうですね、濃かったなあ。ただ、それは別に自分が「変わりたい」と思ってやっているわけじゃなくて、ただやりたくてやっていることなんです。自分が興味を持っていることに対してはもちろん、「自分なんかに出来るはずがない」と今まで思っていたことでも、仕事を通して有り難いことにお話をいただくこともあるので、思いがけない経験をしてまた視野が広がっていく、その繰り返しのような気がします。昨年は、ライブハウスツアーは自分で新たに切り開いたチャレンジで、舞台などは別のところからぐいっとドアを開いてもらったチャレンジ。両方できたのはすごく刺激的だし、ありがたいことですよね。


ーー未知の領域に踏み込むことに「怖さ」はないですか?


藤原:「人は何かを得ると怖くなる」っていうじゃないですか。「お金持ちになりすぎると保身に走る」とか。多分、私はまだまた夢がいっぱいあって、失うものが何もない状態なんだと思います。だから怖くないのかもしれないですね。今の時点で現状維持なんて考えていちゃダメだと思うし、やれることがあるなら、「やってほしい」と言ってもらえることがあるなら、なんでも楽しみながらチャレンジしていきたいですね。(黒田隆憲)


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