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佐々木朗希は待つ喜びを教えてくれる。逸材は実戦登板へスロー調整

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2020年02月20日 06:42  webスポルティーバ

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 すべての人間にとって贅沢な時間だった。

 北谷公園野球場に隣接するブルペンはマウンドが8カ所も設置されており、8人もの投手が同時に投球練習できる。その広々とした空間を、中央部のブルペンに立ったひとりのルーキーが独り占めしていた。

 捕手の後方ネット裏にはロッテの井口資仁監督をはじめ、評論家がズラリと並ぶ。その端では中日の選手たちまで興味津々の面持ちで座っていた。ブルペンの両サイドに設置された観覧席には、鈴なりの報道陣約100名が囲う。

 ともすると、「大事なルーキーを見世物にして」と批判を浴びてもおかしくない状況でもあった。だが佐々木朗希は、そんな小市民的な心配を吹き飛ばすような大きな存在だった。

 ブルペン捕手の小池翔大を立たせて24球。リズムをつけて左足を高々と上げ、捕手に向かって体重移動して右腕を上から叩きつける。おそらく力加減としては8割程度だろう。それでも、爆発力のあるリリースから、小池のミットを粉砕するような剛球を投げつける。ブルペンは小池の捕球音以外、ただただ静謐(せいひつ)な時間が流れていた。

「前よりもしっかりと、納得のいく球が増えたと思います。全体的にまとまっていました」

 ブルペン投球を終えた佐々木は、そう総括した。

 1年前の4月6日、佐々木は高校日本代表研修合宿の紅白戦で163キロを計測している。その登板後、本人は「変な力が入った」と語ったが、見る者をしばらく放心状態にさせるボールだった。殺気を帯びたあの投球を思えば、ある程度セーブして投げている現在は嵐の前の静けさを思わせる。

 研修合宿の直後、佐々木は骨密度など身体の内部を精密検査している。その結果、佐々木の肉体はまだ成熟していないことが判明した。大船渡高の國保陽平監督は「163キロは出てしまいましたが、まだ球速に耐えられる体ではないということです」と説明している。その後、昨秋に佐々木がプロ志望を表明した際にも、國保監督はまだ成長段階であることを明かした。

 前代未聞の素材だろう。160キロを軽々と超える馬力だけでなく、190センチの大きな体をイメージどおりに動かす身体操作性。肩甲骨、股関節を頻繁にほぐす練習中のふるまいを見ていれば、取り組みにも独特のこだわりがあることはすぐに察知できる。ドラフト前、あるスカウトは冗談交じりにこんな言葉を漏らしていた。

「本音を言えば、佐々木を獲るのは怖いですよ。とんでもない夢がある反面、育てきれなければ猛烈に叩かれるわけでしょう」

 佐々木が入団したロッテは、佐々木のために30ページにわたる育成マニュアルを作成したという。井口監督は1月11日の新人合同自主トレ初日に「育成プランはありますが、公開するようなものではないので、これから見守ってもらえれば」と語っている。

 ロッテがいかに慎重に佐々木を育成しようとしているかは、そのスローペースな調整から見ても明らかだ。ブルペン入りは石垣島でのキャンプ最終日の13日。中1日空けた15日の北谷公園野球場での練習では、サブグラウンドで遠投をし、わざわざ平地で立ち投げをしたあとにブルペンに入っている。

 この平地での立ち投げの意味を聞くと、佐々木は「肩を温めるためです」と答えている。また、高校時代は「メリットを感じないから」という理由でやってこなかった遠投も、プロに入ってこなすようになった。佐々木は「プロに入って、いいものは取り入れていきたい」とも語っているだけに、さまざまなことを試しながら自分に合うものを探しているのだろう。

 今後の調整の見通しを聞かれ、佐々木は「無理はしないですけど、徐々に強度を上げていけたらと思います」と語っている。

 ファンの前で、実戦マウンドに立つ日はずっと先になるだろう。だが、待ち遠しくはあっても、急かす感情はまったく沸いてこない。佐々木朗希は、野球ファンに待つ喜びを教えてくれる。

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