『D4DJ』全キャストから感じた未来への躍動 総勢20名で盛り上げた『D4 FES. -Departure-』を振り返る

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2020年02月20日 11:52  リアルサウンド

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Happy Around!

 『D4DJ D4 FES. -Departure-』が、1月31日にTOKYO DOME CITY HALLにて開催された。『D4DJ』は、ブシロードによるDJをテーマに、アニメ・ゲーム・声優によるライブなどを展開するメディアミックスプロジェクト。今回のライブは、現在メンバーオーディション中予の新ユニット・Lyrical Lilyを除く、同作の全5ユニット・キャスト総勢20名が揃い踏みした初の機会に。ライブ終盤には、スマホ向けアプリゲーム『D4DJ Groovy Mix(グルミク)』が、今年秋にローンチされることも明らかになった。


参考:D4DJが『2nd Live』で魅せた熱狂のステージ ユニットの個性を体現するキャスト陣の進化


 そんな同公演で印象的だったのが、『D4DJ Groovy Mix』にてプレイできる収録カバー曲のラインナップ発表時に聞こえてきた、フロアからの大きな歓声だ。『D4DJ』といえば、全ユニットがそれぞれのカラーと親和性の高い楽曲を、新規カバー曲としてライブのたびに披露している。そこで本稿では、彼女たちの歌うカバー曲に焦点を当てて、今回のライブ模様を振り返りたい。


 開幕を飾ったHappy Around!は「DAYS」を新たにカバー。そこからヒップホップ要素繋がりで、前回ライブでも披露した「ココロオドル」へとミックスしていく。またセット中盤には、メンバーがステージ上部のDJブースに乗り込み、他のメンバーとハグを交わし合うなど、まさに“パーティあるある”な光景を目撃することもできた。


 さて、この日は全ユニットとも、MCを挟まずに約20分のロングセットを披露したのだが、なかでも彼女たちのラップ歌唱パートは、一定のリズムから解き放たれて歌い回しが自由になる分、長時間の歌唱のなかで特段にアクセントとして輝いていた。ライブ全体の最後に、当日のオールキャストで歌い上げたHappy Around!のオリジナル曲「Dig Delight!」にもラップパートが用意されているだけに、Happy Around!が今後もヒップホップなサウンドを探求してくれることに期待したい。


 続く燐舞曲は、人気曲「Rising Hope」を歌唱。迷いを振り払う強い意志を提示する歌詞は、彼女たちのユニットカラーとも大きく重なるところだ。また、ピアノの細い旋律からAメロに向けて徐々にボルテージを高めていくのにも、アレンジの妙が光っていた。


 カバー曲からは少し離れるが、この日が初披露の新オリジナル曲「Horizontal Oath」では、大塚紗英(月見山 渚役)が待望の歌唱にも参加。スタンドマイクを前にギターを背負いながら、彼女が時に影を感じさせて悲しみに苛まれながらも、徐々に笑顔を取り戻していく姿には、まさに燐舞曲としての精神性が描き出されているようだった。大塚のステージでの存在感は、燐舞曲がさらに“らしさ”を発揮する上で重要な要素のひとつに違いない。


 3番手は、この日が4名全員での初ステージとなったPhoton Maiden。彼女たちのカバー曲「ブルー・フィールド」では、センターを務めた前島亜美(新島衣舞紀役)がカメラに近づいてフロアに耳を傾けたり、〈ほらまた愛で満たされる〉という歌詞で、フレームいっぱいにハートマークを描いたりと、レンズ越しでのコミュニケーションを試みていた。


 スペースチックなユニットカラーを押し出すPhoton Maidenは、フロアとコンタクトを取るだけでなく、全国のライブビューイングを観ているディグラー(D4DJ のファンの総称)へもレンズを通して呼びかけるような動きをみせた。レンズの向こう側をも意識したパフォーマンスは多くのディグラーを喜ばせたことだろう。


 次に登場したMerm4idは、人気カバー曲「キューティーハニー」のほか、90年代ユーロビートの代表曲「Gamble Rumble」を初披露。全ユニットの中でも、往年の名曲リバイバルを突き詰めているMerm4id。彼女たちの音楽性は、往年より多くのファンに愛され続けてきたものであり、それらが2020年代にリバイバルされることで、時に新鮮さを運んでくることもあるだろう。彼女たちがフロアを揺らすことができるのも、そんな“目一杯に踊ってみたい”という想いを後押しするサウンドがあるからなのかもしれない。


 最後は、こちらも4名全員での初パフォーマンスとなるPeaky P-key。彼女たちの前回ライブからのカバー曲「CYBER CYBER」では、“本家”と同じく曲中で腿上げエクササイズを繰り広げる。なかでも特筆すべきは、メインボーカルを務める愛美(山手響子役)の適応力の高さだ。同曲では、原曲を歌うアーティストのラップからハイトーンでのボーカル、さらには前述の運動量高めなダンスまでをもさらりとやってのける。ここからだけでも、愛美のステージ経験の豊富さをありありと示されてしまった。


 新規カバー曲のほか、ライブ内では新オリジナル曲も披露されるなど、楽曲の幅がぐんと増したことを実感した今回のライブ。各ユニットともに、約20分のロングセットをやり切るなど、非常にエネルギッシュなステージだったという印象も強い。また、カバー曲を含めて、全ユニットがそれぞれの音楽的なフィルターを通して、多岐にわたるジャンルの楽曲を繋ぎ合わせていたことも、ステージに感じた“DJプレイ”らしさを強めた要因のひとつではないだろうか。


 今回のライブタイトル「Departure」は、プロジェクトの黎明期を形容する上で、これ以上ないくらいに相応しいものだ。ただ、「Departure」は直訳すれば“出発”という意味なのだが、ここではあえて“臨戦態勢”という強めな言葉を選んでみたい。そう思えるくらいに、『D4DJ』が生み出す盛り上がりからは目を離せなくなってきている。(一条皓太)


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