伊藤健太郎が目に溜めたいっぱいの涙 『スカーレット』親子3人の時間が動く

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2020年02月20日 12:22  リアルサウンド

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『スカーレット』(写真提供=NHK)

 面と向かって仕事の話もできるようになった喜美子(戸田恵梨香)と息子の武志(伊藤健太郎)の関係。それに武志は、離縁した両親である喜美子と八郎(松下洸平)の関係性についても、ずっと気を遣っていた模様だ。彼は喜美子にとって子どもであることに違いないが、思っている以上に“大人”なのである。


【写真】父・八郎と息子・武志


 連続テレビ小説『スカーレット』(NHK総合)第118話では、そんな母子のもとに八郎がやってくる。そして彼は、川原家に泊まることになった。


 喜美子の幼なじみの照子(大島優子)が持参した高級なお肉を食べそこねた武志が、母のもとへとやってきた。母の手料理のウマさに唸るあたり、彼はやはりまだ子ども。もちろん、美味しいものを口にしたときに素直に反応を示すことができるのは、彼だからこそできるものなのかもしれないが、やはりここにいるのが母子二人きりというのも大きいだろう。


 喜美子も喜美子で、気の置けない間柄である幼なじみの照子や信作(林遣都)、元夫の八郎、そしていま一番の友達・小池アンリ(鳥丸せつこ)ら大人たちだけでの集まりで、まるで“子どものように”無邪気に楽しむのもいいけれど、ときに大人然とした態度で息子と接するのもいまの楽しみの一つなのではないだろうか。母子水入らずの時間である。しかし、そうはいっても武志も大人。ここは演じる伊藤健太郎自身の持つ“愛らしさ”が“愛嬌”として絶妙に効いているところだが、少し引いたところから見れば、彼がもう幼子でないことは明らかだ。母譲りの自身の信念に従って、やりたいことを見つけ、その世界に飛び込み、いま自活しているところでもある。


 正直、彼が“いつ”大人になったのか分からないくらいだ。気がつけば劇中では大きな時間が流れ、武志の演じ手も子役から伊藤にバトンタッチしていた。母である喜美子の自己実現に向かう姿や、父母の関係、そのなかでの武志自身の居場所ーーそんなところにまで考えをめぐらせてみると、彼はかなり早い段階で大人になっていたように思えるのだ。


 そこへ現れた、父・八郎。武志はかつて父が手がけた大皿を手にし、感動する。これは初めて八郎が賞を獲り、陶芸家として認められた作品でもある。いわば彼の原点だ。これにいま武志が触れるというのは、何か大きな意味があるのだろう。物語的にいえば、今後の展開のある種の“布石”とも見て取れるかもしれない。そんな武志に影響を与える八郎だが、いまは陶芸をやっていないのだという……。八郎は名古屋に戻ると頑なに主張していたが、武志の懸命な引き止めと、父子の会話の流れから、結局泊まることに。それを聞いた武志の目には、いっぱいの涙が溜まっていた。そして、「これは涙じゃなくて、目から出た汗だ」とでも言わんばかりに平静を装おうとする。彼はやはりまだ、親の前では“子ども”なのである。


(折田侑駿)


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