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“携帯ブラック”から抜け出せない人たち 連絡取れず、バイトに就けない、家も借りられず

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2020年02月21日 11:30  AERA dot.

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写真セーフティーネットとしてレンタル携帯を展開する一般社団法人「リスタート」は2月21日午後7時から、東京・豊島区のとしま区民センターで、就労支援や更生保護に関わる人などを対象にした勉強会を開催する。参加無料※写真はイメージです(Getty Images)
セーフティーネットとしてレンタル携帯を展開する一般社団法人「リスタート」は2月21日午後7時から、東京・豊島区のとしま区民センターで、就労支援や更生保護に関わる人などを対象にした勉強会を開催する。参加無料※写真はイメージです(Getty Images)
 職場で急なめまいを感じ、嘔吐した。建設業で働くタカシさん(仮名、39歳)は、仕事を休んで病院へ行くと、そのまましばらく検査入院することになった。日常的にふらつきと吐き気があり、あらゆる検査をしても理由がわからない。結局、入院は1ヶ月に及んだ。

 就職氷河期世代で、高校卒業後に警備会社や飲食店で非正規の職に就いた。30歳で父を亡くし、3年後に母も他界。自暴自棄になり、それまでの貯金をすべて使い果たしていた。両親が遺した家で暮らしながら日払いの仕事をしていたため、休職とともに収入も途絶えた。独身で頼れる親戚もいなかった。

 神経系の難病だとわかったころには、携帯電話が止まっていた。慌てて院内の売店でテレホンカードを買い、公衆電話から携帯会社へ電話すると、割賦払いにしていた機種代を含め5万円を超える負債を抱えていることがわかった。支払いたい気持ちはあったが、強制解約に。携帯電話のない生活が始まった。

「通院しながら自宅療養しているときも、日常的に吐き気やめまいがありました。1人暮らしで自分がいつ倒れるかわからない状況で、緊急の電話ができないのはものすごい恐怖です。すぐに病院に行ったほうがいい状態なのか、様子をみていていいのか、医師に相談することもできませんでした」

 携帯電話がない――。ただそれだけのことで、危機に陥る人たちがいる。連絡が取れない、インターネット上にある情報にアクセスできないなどの直接的な問題だけでなく、社会的な信用を失い、就職や部屋探しができないなど、生活再建に向けての大きなハードルになることもある。さらに業界では、大手キャリアや格安スマホを展開する企業など約40社が不払い者情報を交換しているため、1社で未納があると他社でも契約ができない状況となり、なかなか“携帯ブラック”から抜け出せないのだ。

 携帯各社が不払い者情報を交換するようになったのは1999年。複数の携帯会社で料金未納を続ける「渡り」や「使い捨て」が横行し、それに対抗する目的で始まった。電気通信事業者協会(TCA)によると、不払い者の氏名や生年月日、住所などの情報は完済された場合を除き、契約解除から5年間は残り、新規契約などの審査の際に活用されているという。件数などの詳細は非公表。信用情報機関のシー・アイ・シー(CIC)が2013年にまとめた統計によると、携帯端末代の支払いが滞ったことでブラックリストに載った件数は同年12月で274万9千件、契約数の3%にのぼっていた。ITジャーナリストの三上洋さんは「3%というのはかなり大きな数字ですが、現在も横ばいまたは微減している程度だと考えられる」と指摘する。


「未払いには、真面目に払うつもりで滞ってしまうケースと、最初から転売目的の犯罪グループによるものの2パターンあります。10万円を超える価格帯がメインになるなど端末代が高額になっている今、割賦販売での審査が厳しくなり、支払いが難しくなりそうな人が買えなくなるという現象が起きていると想定できる。携帯電話の販売台数は右肩下がりですが、NTTドコモの決算では端末の債権の金額が全体としては大きくなっていると報告されているので、犯罪によるものが同程度かやや増えているということでしょう」(三上さん)

■身に覚えのない携帯で20万円滞納

 料金を払っていても、意図せずに“携帯ブラック”になってしまう人もいる。フリーランスで働きながらシングルマザーとして子育てをしていた30代のアキコさんもその一人。節約のために別のキャリアに乗り換えようとしたところ、審査が通らず、ブラックリストに載っていたことが発覚した。インターネットや電話は近くの公衆電話や無料Wi−Fiを使う生活になり、仕事の得意先は半分以上が離れてしまった。

 支払いの滞納などしたこともなく、身に覚えがなかったアキコさんは、弁護士に相談して情報開示を依頼。その結果、契約していないはずの携帯会社に20万円滞納していたことがわかった。使っていたのは、かつての女友達だった。10年以上前、クレジットカードの支払いが滞り、携帯電話が契約できなくなったと泣きつかれ、名義を貸していたという。

 セーフティーネットとしてレンタル携帯を展開する一般社団法人「リスタート」の高橋翼さんは、スマートフォンなどの端末が高額になり、割賦払いが定着したことなどから、「若い人の間でも、携帯ブラックと呼ばれる“通信弱者”が増えている」と指摘する。

「ゲーム課金や職場がブラック企業で体を壊すなど、携帯料金が未納になる事情は人それぞれですが、働いて返済したいと思っても、連絡先がなければ就職どころか、日雇いのアルバイトにさえ就けないのが現実です。多くの場合、銀行口座の開設、住居の契約もできません」

 同社の個人向けのレンタル携帯は、独自の反社会的勢力チェックを経て、月4980円(通話は無制限、パケット通信5Gまで、ゲーム課金不可)で契約でき、既に約300人が利用しているという。そのほか首都圏の就労支援や生活支援を担う行政の窓口約50カ所と連携し、生活再建をサポートしている。

 服役経験のある男性(58)は「連絡先がないと日常的に困ることがあった」と話す。

「銀行で口座を開くこともできませんし、遠方の家族に急ぎで連絡したくて高額の電報を打ったこともあります。役所に電話で問い合わせるときでも、折り返しの連絡を受けることもできません。何分後にかけますと約束してかけ直しますが、担当者が席を外していたりして、かなり時間を使います」

 高橋さんはこう指摘する。

「働く意欲のある人たちでさえ、一度携帯ブラックに陥るとなかなか抜け出すことができず、生活保護などの福祉に頼る生活になってしまいがちです。携帯電話やスマートフォンは既にライフラインになっているにも関わらず、国は娯楽品だとみなし補助はプリペイド携帯に限られているため十分とは言えません。レンタル携帯は新たなセーフティーネットとして必要なサービスだと考えています」

 冒頭のタカシさんは、就労支援の担当者からレンタル携帯を勧められ、新たな仕事を見つけることができた。現在、復職の準備を進めているという。

 誰もがスマートフォンや携帯電話を持つ時代だからこそ、セーフティーネットとして支援の対象にもなり始めている。便利な半面、安易に考えてはいけない物であることも確かだ。(AERA dot.編集部・金城珠代)

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  • 中古端末を使えばいい。私は、そうしている。販売店はいやがるけど。
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