「発育発達学に基づくコーチング〜年齢に応じた野球が上手くなる心と体の作り方〜」講演レポート(前編)

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2020年02月21日 17:21  ベースボールキング

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2月15日、東京農業大学応用生物科学部の勝亦陽一准教授が、神奈川県の立花学園高校で同県西部の高校野球、少年野球指導者を対象に講演を行いました。講演のテーマは「発育発達学に基づくコーチング 〜年齢に応じた野球が上手くなる心と体の作り方〜」。今回は講演の中から「心と頭の鍛え方」のお話を中心にご紹介します。



「共通性のない言葉」を伝えることの難しさ
講演の初め、勝亦先生は、言葉を理解して伝えることの難しさを実演を交えて紹介しました。
まず、同校の野球部員達をステージ前に集めると二人一組で向かい合わせに立たせました。勝亦先生は一方の選手の背中側後方にまわり、そこで様々な動作やゼスチャーを行います。その動きをもう一方の側の選手が見て、動きを見れないもう一方の選手に言葉だけでその動きを伝え、同じ動きを再現してもらうというものです。

右手を回す、左足をあげる、四股を踏む、ラジオ体操の動きなど、比較的簡単な動きは選手達も再現できましたが、複雑な動きになると選手達の動きがバラバラで揃わなくなり、会場からは笑い声が溢れました。

このことに対して勝亦先生はこのように解説してくれました。
「(多くの選手が再現できた動きは)『四股』や『ラジオ体操の二番目の動き』といった、『言葉の共通性』があるから(相手に)伝えやすいんです。しかし、共通性のない言葉になると伝えることが難しくなります」

「共通性のない言葉」、これを野球に置き換えてみます。「肘を上げる」という言葉は野球の指導の現場でよく聞く言葉ですが、「肘をあげる」という言葉を聞いて頭の中で思い描く動作は人によってそれぞれです。同じように、投球やスイングの際の『間(ま)』や『壁』といった言葉も、言葉だけで正しく伝えることが難しいことがわかります。

言葉で伝えることが難しいからこそ、「間(ま)というのはー」、「壁というのはー」と、きちんと説明してあげることがとても大切であると、勝亦先生は説きました。


展開期・自立期(中学生)で身に付けたい「PDCAサイクル」
野球を始めた小学生の頃を「導入期・継続期」とすれば、この時期に大切なことは、とにかく子どもに「野球は楽しい!」と思ってもらうこと。そして野球だけではなく色んな能力を満遍なく伸ばしてあげて「器を大きくする」ことだと勝亦先生は言います。

そして「甲子園に出たい」というようにに、その子の目標が明確になってくる時期が「開期・自立期」になります。
目標を山に見立て「どうやってこの山に登るか?」ということを本人が考えなければいけない時期なのだそうです。
「(展開期・自立期に指導にあたる)指導者は、どうやって山に登るチームなのかを選手に説明できなければいけません。そういう風にしていくと、PDCAという逆算的発想という方法になります。計画性(目標を明確に)、効率性(目的に合うように)、確実性(目標に到達できるように)、客観性(他者の意見を取り入れる)というのがこの段階になります」

こういった段階を踏んでいかないと、自分で目標を達成するための行動を起こせなくなるのだと勝亦先生は言います。
「私が教えている大学の学生たちも、私が『自主練』と言った瞬間にフリーズして何もできなくなります。『今日は自分たちで練習内容を考えて3時間やって』と言っても全然できません。そんな選手たちがプロ野球選手になって活躍できるでしょうか? 社会に出て活躍できるでしょうか?」

PDCAを自分でうまく回していけるようになることが野球の発展や技術の向上、そして目標を達成することにも繋がる。だからこそ、展開期・自立期の子どもを預かる指導者の方にはそのことを「頭の片隅に置いて欲しい」と勝亦先生は言います。

後編では、子どもの生まれ月が野球に及ぼしている影響などを中心にご紹介します。

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