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伊豆の別荘が“マイナス50万円”でも売れない? 空き家問題で増え続ける「マイナス価格物件」の実態

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2020年02月22日 10:33  ねとらぼ

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ねとらぼ

写真取材した1円の戸建。さらに売手がお金を出すため、実質的には“−50万円で売却”
取材した1円の戸建。さらに売手がお金を出すため、実質的には“−50万円で売却”

 2018年、「人気観光地・伊豆の温泉付き別荘が100円で販売されている」とネット上で話題に。取材したところ、実際の販売価格はたったの1円。不動産情報サイトが100円以下の販売価格に対応していなかったため、そう表示されていただけで、ホントは駄菓子よりも低価格だったのです。しかし、空き家問題が深刻化している日本ではこのような物件は珍しくなく、それどころか“マイナス価格”で販売されている物件が増え続けているといいます。



【こんなにキレイなのに……】“−50万円で売却”された別荘の内装



 つまり、お金を払うどころか数十万〜数百万円をもらって、家がゲットできるというわけ。今回はそんな“マイナス価格物件”を数多く扱ってきたリライト社を取材し、「−50〜80万円で“買える”のに、買い手が1年間つかなかった物件」を見てきました。



●−50〜80万円で“買える”のに、買い手が1年間つかなかった物件



 列車に揺られて、やってきたのは静岡県東伊豆町の物件の内覧会。ここは相模湾が一望できる風光明媚な土地で、近くには稲取ゴルフクラブも。バブル期は憧れの別荘地として知られていました。なぜその物件がマイナス価格で販売されているのか、UR(旧・日本住宅公団)で40年間勤務するなど、長年不動産業界に携わってきたリライトの相山和夫さんにお話を伺いました。



── かつて伊豆は別荘地の代名詞でしたよね。



相山:伊豆高原とかはもうすごかったですね、私もいっぺん買おうと思ったけれども、高くて手が出ませんでした。手ごろな物件は崖のところぐらいでね。



── それが今では、ちょっと年季の入った物件ばかりが目立ちますね。



相山:もうここで新築を建てられた方って、たぶんここ10年いないんじゃないですかね。隣の物件なんて屋根が半分崩れかけていて、ちょっと悲しいですよ。



── この物件は、いくらで買えるんですか?



相山:1円です。しかも売主さんがこっそり50〜80万円負担してくれるので、マイナス50〜80万円です。



── 問い合わせはどれぐらい来たんですか?



相山:500件じゃきかないです。



 「モーニングショー」(テレビ朝日系)で紹介されたときは150件超えました。内覧会も一番多いときで30組近く来たんですけど、結局それでも決まりませんでした。



 「決めた」と言う人も多いんですけど、「帰宅して考える」と言ったあとに……。



── 断られるんですか?



相山:そうですね。前回も2日来られて2日目で「絶対申し込むから」と言う方がいて。なかなか申し込みいただけないので1週間ギリギリになって聞いたら「やっぱりやめる」と。そういう方が多いんですよね。



── なぜですか?



相山:結局、管理費と初期費用がネックだったんでしょうね。初期費用が一番大きいんじゃないかな。



●−50万円で手に入れても、諸費用が300万円かかる



── 管理費や初期費用はどれぐらいかかるんですか?



相山:まず水道維持協力金が約43万円、登記費用が約10万円など全部ひっくるめて、初期費用が約100万円かかります。つまり、100万円あれば自分のものにはできます。



── 私も買おうと思えば買えますね。



相山:でも、浄化槽の問題がややこしくて。このエリアは別荘を作ったときに集中浄化槽を作ったらしいんですがそれがうまく機能しなくて、今は浄化槽を個別で作る必要があるけれども補助金が出ないんです。それを作るのに90万円はかかります。



 それから、駐車場を作るのに100万円はかかりますね。



── とすると、もろもろ合わせて約300万円。さらに自動車も必要でしょうね。バス最寄り駅の伊豆アニマルキングダムからは約2.2キロあり、Googleマップによると75メートル登って、111メートル降りるほどの上がったり下がったりの山道。これで徒歩はキツい。



相山:さらに、リフォームをどれだけやるかにもよっても初期費用が変わります。「そういった費用を50〜80万ぐらい負担してもいいから売りたい」ということで、マイナス物件になっているわけです。



●別荘を持たなくなった日本人



相山:この南熱川の別荘地も240区画あるんですけど、ちゃんと使われているのはたぶん3分の1くらいだと思います。



── 残りの3分の2は空き家ですか?



相山:空き家というか、もう使われていない土地ばかり。管理費も払ってない状態になってるとか、相続されても全然手続きがされていないとか。



 相続人も行方不明になっちゃって、分かる範囲でやっているみたいです。本当は追いかければお金を取れるんですけど、管理会社もいちいちなかなかそこまで追っかけないので。そんな状態のところは次の人へ物件を処分しにくいって面はありますよね。



── かつての別荘像がガラガラと崩れていきますね。



相山:私も70なんぼですけど、昔、熱川は憧れの別荘地だったんです。



── 今は「別荘」という文化自体が薄らいでいるんでしょうか。



相山:ライフスタイルが変わって、家族で車に乗って別荘で1〜2泊していくことも減って。共働きで奥さんも別荘どころじゃない、子どもも塾や部活で忙しいから、家族みんなで土日に遠出するする行動パターンがなくなってきてしまったんですね。



── 若い人は車にも乗らなくなりましたしね。



相山:少子化だし車にも乗らない。別荘からはなおさら遠ざかりますね。



 田舎の普通の家だって、今はほとんどいらなくなってきてるわけじゃないですか。だから別荘地ってもう、売主さんが50万〜100万とか払わないと買ってもらえないんですよ。



●不動産サイトに隠れた「マイナス価格物件」



 取材後、この伊豆物件は売却が決定し、売主が50万円負担する形になったといいます。このように「マイナス価格でもいいから、誰かに物件の所有権を渡したい」という人は後を絶たないとか。その理由を、リライト代表・田中裕治さんに伺いました。



── 今、マイナス価格の物件って多いんですか?



田中:表示上はマイナスにできないのですが、“実質マイナス価格”の物件はあって。使っていなくても維持費がかかってしまうので、売却にかかる経費を払ってもいいから売りたい方は多いですね。



 何もせず毎年10何万円払うよりはマシということで、特に別荘地なんかはもうほとんど。



── ほとんどマイナス?



田中:ごく一部をのぞいてほぼマイナス価格ですね。軽井沢、熱海以外は厳しいです。



 例えば、伊豆半島はよっぽど管理費が安くて、しかも管理が行き届いているところじゃないと買い手が見つかりません。



── 伊豆、そんなに人気がないのですか?



田中:はい、那須、群馬の北軽井沢とかも。



── かつての人気別荘地ばかり……。



田中:うちが以前扱っていた北軽井沢の物件は、100円でも全然売れなかったくらい。「別荘地は売れない。200万円くれるなら引き取りますよ」という管理会社もけっこうありますね。



── 逆に、土地を持っている側が支払う、と。それでも手放したいんですね。



田中:日本の不動産って、もらってくれる人がいないと所有権が放棄できませんから。たいていの人は「市に寄付すればいいや」と考えるんですけど、自治体は物件の寄付を受け付けていませんし。



── なんとなく土地は寄付できるものと思っていますよね、軽く考えているけれども、実際は寄付を受け付けていないし困ってしまう。



田中:まさにそんな感じです。



●別荘地以外でもマイナス価格物件



── ……ちなみに別荘以外のマイナス価格物件はありますか?



田中:例えば、熱海の戸建てだったんですけど、山奥にあって屋根に穴が空いていて。



── 屋根の穴は直せないんですか?



田中:お金がかかりますし、そもそも建物が老朽化していて。



 あと、静岡県にあった火事の焼け跡の土地もマイナス5〜10万円での売却でした。残置物を撤去するために何百万円もかかっちゃいますから。



── (写真を見て)……これはヒドい。こんな惨状なのに、売れるには売れたんですか?



田中:焼けた家のまわりの土地が広かったので、静岡市内の残置物撤去業者の方が資材・車両置き場として、取りあえず空いているスペースだけを使うということでした。



── なるほど。そのままでも使えるから、マイナス幅が大きくならなかったと。



田中:それから、崖地はマイナス価格になりやすいです。道路から10メートルくらい低いような、道路にアクセスしづらい土地。



 あと普通の土地でも、田舎の20年ぐらい放置されているものはマイナス価格になります。前に熱海の山奥の別荘地があったんですが、そこは−150万円とか。



── −150万かぁ……。



田中:高知県の室戸岬で、−180万円ぐらいとかありますよ。



── それだけ田舎になってしまうと、マイナス額がふくらむんですね。



●お金を払ってでも、物件を手放したい



田中:でも売った方はすごく喜んでいましたよ。



── 「ああ、手放せた〜!」って。



田中:そうです。そのまま家が老朽化して、台風で屋根が飛んで隣の家に迷惑かけるなんて心配だし、生きているうちに処分しようという。



── 不安要素を消すために、多少お金を払ってもという……。



田中:田舎だと「売ってもせいぜい10〜20万円なのに、相続税評価額が1千万〜2千万円くらいになって、基礎控除の3000万円の枠を圧迫してしまうこともありますから。であれば、持っていない方がいいよね、という。



── これからもマイナス価格物件は増えますか?



田中:増える一方でしょうね。安い新築が増えているうえに、日本は新築の家を買うほうを助成していて、中古物件が売れないので。逆にリフォームに助成するなど税制度や仕組みを変えれば、風向きも変わるかもしれません。



── 暗い話で終わるのも何なので、最後にお聞きします。マイナス価格物件が増えている今は、買う方としてはチャンスですか?



田中:適材適所です。マイナス物件の特徴を見極めて、使う目的が決まっている人にはいいと思います。


このニュースに関するつぶやき

  • 「のんのんびより」第24(最終)話まで観た。最近、日本ではあのアニメのような田舎が急激に廃墟になってきているが、どう考えても政策の歪みが原因で田舎暮らしを維持できないからだ。
    • イイネ!2
    • コメント 0件
  • 「お金を払ってでも手放したい」分かるわーexclamationこの問題、放置するほど後からしんどくなると思う。
    • イイネ!97
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