ホーム > mixiニュース > コラム > 感染拡大する新型コロナ 医師が語る「コウモリがヒトにウイルスを感染させる理由」

感染拡大する新型コロナ 医師が語る「コウモリがヒトにウイルスを感染させる理由」

27

2020年02月23日 07:00  AERA dot.

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AERA dot.

写真新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真 (c)朝日新聞社
新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真 (c)朝日新聞社
 新型コロナウイルスの流行拡大が止まらない。そんな中、無責任にSNSで煽るような人々もいて、WHOはインフォデミック(情報の流行)という言葉でこれを批判している。だが、実際の臨床やウイルス学を知らない“自称”専門家も、その一翼を担っている(PCRの感度を上げていけば潜伏感染もわかるなど)。

【コロナウイルスに便乗した悪意あるメールも! こんな文面で届く】

 武漢では患者増加はやや鈍化し、中国の他の都市では武漢より患者数も死亡率も低い。生物兵器の流出などといった荒唐無稽な陰謀論を拡散する前に、中国の疾病対策で何が成功して何が失敗だったか、また、不幸にして亡くなった方はどのような要因が関与しているのかなど、日本での流行抑制に重要なことがあるだろう。

■中国でのコウモリの存在

 さて、新しい感染症の流行はたいていの場合、動物の感染症がヒトに宿主を広げることで発生する。『銃・病原菌・鉄』で有名な米国のジャレド・ダイアモンドは、自然宿主である動物の感染症(多くは無症状)がヒトに感染性を獲得することで人獣共通感染症となり、さらにヒトヒト感染を獲得することで新興感染症となるという典型的な疾患の成り立ちを提唱している。

 今回の新型コロナウイルス感染は、まさにその経過をたどったものといえるであろう。当初、コロナウイルスはヘビに由来するとされたが、その根拠はあやふやで、結局はコウモリだった可能性が強まったようである。

 コウモリというと、お化けやカボチャや黒猫と共にハロウィーンの定番である。夜、音もなく敏捷に飛翔し、昼間は洞窟や屋根裏で逆さまになって休むなどあまり良いイメージはない。ただ、中国ではコウモリは慶事、幸運のしるしで、たいそう縁起がいいものとだそうである。その根拠は漢字のコウモリ「蝙蝠」の「蝠」の字が「福」と同音であるためだそうである。

 特に、5匹のコウモリの絵は「長寿、富貴、健康、子孫、繁栄」の「五福」だそうである。日本でもゴールデンバットという両切りの安たばこがあった。薄緑の箱に黄色のコウモリ模様が描いてあったと思う。太宰治が『富岳百景』で、雁坂峠(かりさかとうげ)の茶屋で「とりとめのない楽書をしながら、バットを七箱も八箱も吸ひ」というのはこれである。国籍不明なこのデザインは、中国市場を意識したものらしい。

■コウモリ宿主のウイルス

 コウモリの絵やたばこだけなら実害はないが、中国ではコウモリも重要な食材らしい。困ったことに世界中の多くの国でコウモリを自然宿主とするウイルス感染がヒトにも広がるという事例がある。エボラ出血熱やハンタウイルス感染症、ヒストプラズマ感染症、そして狂犬病を含むリッサウイルス感染症など枚挙にいとまがない。

 なぜコウモリは人にウイルスを感染させるのか。興味深い論文があった。

 哺乳類の中で唯一、長距離の飛翔を行うコウモリは、酸化ストレスにより細胞内に多くの核酸断片を生じる。断片化した核酸は通常では細胞内の分子センサーに認識され、細胞にウイルス抵抗性を与えたり、他の免疫細胞を活性化するインターフェロンという物質が誘導されたりする。しかし、コウモリはこのようなインターフェロン応答を欠き、結果、多くのウイルスに持続感染しているという。

 彼ら自身は未知のメカニズムでこれらのウイルスに抵抗するが、他の動物に媒介して疾病を引き起こすため、人獣共通感染症の原因となっている。空を自由に飛べるコウモリはその数が多く、世界では1000種に達する。多くは夜行性のため目が退化し、自ら発射する超音波の反射により餌や障害物など外界を探知する。

 コロナウイルスの多くがコウモリを宿主としているため、過去にも今回のようなパンデミックがたびたび生じ、そのたびに人類やその祖先は治療薬がなくても獲得免疫の力でこれを撃退してきたのであろう。実際、SARSやMERSは今では跡形もないし、今回のCOVID−19も数カ月のうちに消えていくであろう(と信じたい)。その結果、残ったのが、感冒の原因となる4種類のコロナウイルスである。

■流行中は禁煙減煙を

 今般流行している新型コロナウイルス(SARS−CoV2)は、現時点では特効薬もワクチンもなく、国内流行が始まりつつある現在、手洗いなどの個人衛生に努めるしかない。もう一つ、最近気になった論文は、喫煙が肺胞細胞のコロナウイルスレセプターACE2の発現を誘導するというものである。

 これは健常者の肺組織を用いた研究で、実際の患者さんの予後は未知数であるが、禁煙でウイルス結合性が低下するのであれば、少なくとも流行中は禁煙減煙するにこしたことはない。

○早川智(はやかわ・さとし)/1958年生まれ。日本大学医学部病態病理学系微生物学分野教授。医師。日本大学医学部卒。87年同大学院医学研究科修了。米City of Hope研究所、国立感染症研究所エイズ研究センター客員研究員などを経て、2007年から現職。著書に『戦国武将を診る』(朝日新聞出版)など

※AERAオンライン限定記事

このニュースに関するつぶやき

  • 特効薬は コウモリだけが知っている https://mixi.at/a3BZmzh
    • イイネ!2
    • コメント 0件
  • 新型コロナウイルス 「研究所から流出」説の真偽を追う https://bit.ly/38MY0mW
    • イイネ!35
    • コメント 3件

つぶやき一覧へ(22件)

あなたにおすすめ

ニュース設定