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「たくさんあるよ。でも教えない」 王貞治を追いかけ続ける城島、不変の美学とは?

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2020年02月26日 16:00  AERA dot.

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写真会長付特別アドバイザーとして古巣に戻った城島健司 (c)朝日新聞社
会長付特別アドバイザーとして古巣に戻った城島健司 (c)朝日新聞社
 ハリケーンのような猛威をふるい、あっという間に去っていった。城島健司ソフトバンク会長付特別アドバイザーは、10日間のキャンプ視察で存在感をイヤというほど発揮した。

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「指導はしません」と事前には語っていたが、求められれば答えるのがこの男。感想や雑談という形で選手たちに適切な助言を与えていた。また連日、多くの選手たちと食事を共にしたことも明かした。肩書き以上の大きな働きであり、なにより本人が一番楽しんでいるように見えた。そして現役時代から一貫する姿勢もそこにあった。

「カッコいい」

 現役時代からことあるごとに口にしてきたセリフであり、求め続けてきたこと。今キャンプ視察後の会見を飾ったのも同じ言葉だった。

「男としてカッコいいな、と思いましたね」

 キャンプ初日、王貞治会長から「おいジョー、ときめくだろう?」と声をかけられた。世界記録保持者であり誰もが認める伝説の男が、いまだキャンプインに心躍らせる。そこに「カッコいい」と感じることこそが、変わらない城島自身の感性であり美学だ。

*  *  *
 城島の「カッコいい」の原点は、まさに王会長その人だ。子どもの頃、王会長に野球教室で指導を受けたことがある。

「僕は身体が大きかったから、会長に前へ呼ばれて『君、良いね。このまま大きくなったら巨人に入りなさい』と言われた。その時から真似して左打ちの一本足打法を練習した」

 王貞治になる、と思って左打ちを練習した少年は、プロに入っても打撃練習で左打席に立つこともあった。

「プロ入りしてやるのはバランスの修正が1番かな。でも左打席でもスタンドへ打てたらカッコいいしね」

 左打席で打ってスタンドまで運ぶセンスの良さを見せつけ、スタンドに詰めかけたファンからは大きな拍手を浴びた。

 さらに心を動かしたのは、メジャーリーグのスター選手たちだった。

「あんなカッコいい捕手いないですよ。あんな風になりたい。彼のプレーを見ていたら捕手になりたいって思うでしょ」

 いつも語っていたのはイヴァン・ロドリゲスのことだ。まん丸な体型から『パッジ』の愛称で呼ばれた強肩強打の名捕手であり、ゴールドグラブ賞13回というメジャー史に残るレジェンド。そのパッジのプレースタイルに影響され、ヒザをついたまま二塁送球の練習もした。

「どんな体勢からでも送球できれば大きな武器になる。まだパッジまではいかないですけどね」

 練習を重ねた送球方法はその後、たびたび試合中でも見受けられた。

 ダイエー時代に出場した2000年の日米野球、NPBの練習後も1人グラウンドに残ってMLBの選手を見ていた。文字通り、子どものように目を輝かせていた。

「人間ドキドキしないと成長しない。メジャーリーグはナンバーワンだと思う。そこで自分の力を試してみたいっていうのは当たり前」

 常に“カッコいい”を目指す城島が海を渡るのは必然で、FA権を行使して選んだ移籍先はシアトル・マリナーズだった。

「やっぱりどの選手もレベルが違う。その中で自分が結果を出せれば最高。誰もが知っているMLBの投手とバッテリーを組めたり、対戦できる。ちょっとだけ自分が『カッコいい』と思える。それに毎日、知らないばかりで自分が成長しているのも感じる」

 渡米前に宣言していたことがある。

「(今後もホークス一筋?)それはビジネスも絡むのでわかりません。日本ではお金の話をすると嫌われるけど、野球選手の評価ってお金だと思うんです。でも、これだけは言えます。たとえどこに行って野球をしようとも、最後は、引退する時は九州に帰ってきます。これだけは譲れません」

 実際には阪神で現役引退となったが、それでも巡り巡って今回、大好きな九州へ戻ってきた。


 城島は会見を終えた帰り際、王会長がコメントを求められている横を、何事もなかったかのように素通りした。そして待たせていた車の直前でUターンし、数人のファンにサインをすると、その後はまったく後ろを振り向かずに車に乗り込んだ。その姿から、続きがあることを確信した。

 城島は何年経っても輝いていて、魅力ある男だ。誰もがグラウンドに再び登場する日を待っている。

 今の城島が目指す『カッコいい』は見つかったのか? そう尋ねたら、ごまかされた。

「たくさんあるよ。でも教えない」(文・山岡則夫)


※記事内での過去コメントは、01年『Ballpark Volume.3』、02年『Ballpark Time! Vol.5』より

山岡則夫/1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍、ホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!公式ページ、facebook(Ballpark Time)に取材日記を不定期更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。

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