ホーム > mixiニュース > コラム > 安倍晋三と山本太郎はよく似ている? 2人が影響されたある経済学者とは

安倍晋三と山本太郎はよく似ている? 2人が影響されたある経済学者とは

21

2020年02月26日 17:00  AERA dot.

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AERA dot.

写真政治は右、経済は左で歴代最長総理になったが… (c)朝日新聞社
政治は右、経済は左で歴代最長総理になったが… (c)朝日新聞社
「安倍晋三首相と、れいわ新選組の山本太郎代表は、よく似ている」

 もし、こんなことを書いたら、「アタマがおかしい」と思われるかもしれない。

 安倍首相は、「保守政治家」を自任している。人によっては「右翼」と呼ぶ人もいる。首相に返り咲いてからの7年間、集団的自衛権の行使を一部容認する憲法解釈の変更や、いわゆる共謀罪の創設を含む改正組織的犯罪処罰法の成立などを、次々と実現した。憲法改正を「在任中に成し遂げたい」と強い意欲を示している。

 一方、山本代表は、「左翼」だと思われている。昨年4月にれいわ新選組を結党。3カ月後の昨年7月の参院選では、重度身体障害者、性的少数者などのマイノリティーなどを候補者に擁立した。圧倒的な庶民目線のメッセージが国民の支持を集め、一気に2議席を得て、国政政党の代表になった。

 2人は、お互いに、真逆の立場にいると思っているはずだ。国会でも、激しく対立している。

 だが、経済政策は似ていると言わざるを得ない。そんな「事実」を、アベノミクスのルーツをたどりながら、明らかにしたのが、拙書『安倍晋三と社会主義 アベノミクスは日本に何をもたらしたか』(朝日新書)だ。

 そのキーワードは「反緊縮」である。

 安倍首相は7年前に始めたアベノミクスは、「3本の矢」という政策で成り立っている。1本目の矢は「異次元の金融緩和」、2本目の矢は「機動的な財政出動」、3本目の矢は「民間投資を喚起する成長戦略」の3つだ。

 1本目の矢「異次元の金融緩和」で、日本銀行は、国の借金である国債を年80兆円分、買い支えている。これは、毎年、政府が新たに発行する国債の約2倍だ。政府はこの「金融緩和」によって得たお金を、「国土強靱化」のための公共事業など、2本目の矢「機動的な財政出動」につぎ込んでいる。

 この結果、円安が進んだ。日本経済の牽引役である輸出産業の交易条件が改善し、利益を大幅に増やした。外国人にとって、日本は「安い」旅行先となり、たくさん訪れるようになった。バブル期並みの雇用環境を生み出し、景気回復は戦後最長を記録している。

 だが、世界的にみて、保守派や右派の経済政策とは言い難い。海外の保守派や右派は、政府ができるだけ民間の経済活動に介入しない「小さな政府」を志向し、財政・金融政策では「緊縮」を好む。安倍首相のやっていることはまったく逆だ。

 一方、山本代表は、「コンクリートも人も 本当の国土強靱化、ニューディールを」というメッセージを掲げている。防災対策などの公共事業を積極的に行うとともに、「奨学金チャラ」「最低賃金1500円」「消費税廃止」など、日々の生活に困っている人々にお金を行き渡らせる政策を掲げている。

 政策の実現のために、どうやってお金をひねり出すのか。山本が理論的支柱としているのが、立命館大のマルクス経済学者、松尾匡教授だ。

 松尾は日本のマルクス経済学者の中では、「異端」だ。アベノミクスの1本目と2本目の矢、つまり、金融緩和をして財政出動をすること自体は「反緊縮」であり、「間違っていない」と公言する。

 安倍首相と違うのは、お金の使い道だ。松尾は「安倍首相は、せっかくひねり出したお金を軍事費や、大企業やお金持ちの支援に使っている」と批判する。それらを、医療や介護などの社会保障、教育などに振り向けて、国民の生活向上に役立てるべきだと主張する。

 松尾は、2019年2月、市民運動「薔薇マークキャンペーン」を立ち上げた。「(お金を)ばらまく(薔薇マーク)」と引っかけたネーミングだ。この年は12年に1回の「亥年選挙」の年。この年に行われる参院選では自由民主党が苦戦を強いられると言われているため、春の統一地方選と夏の参院選を前に、松尾らの主張に賛同する野党の候補者に「薔薇マーク認定」を与えて、支援しようと企画した。

 この運動にいちはやく呼応したのが、山本代表だった。山本は、れいわ新選組の政策に松尾の主張を全面的に採り入れた。

 松尾の主張は、ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授が提唱する新しい貨幣理論「現代金融理論(MMT)」の影響を受けている。これは、海外の左翼の間で、流行している理論だ。

 この理論を、かいつまんで説明すると、「独自の通貨を発行している国の政府は、自国通貨建てでいくら借金しても、通貨を増発すれば良いのだから、デフォルト(財政破綻)に陥ることはない」ということを主張している。

 2020年の米国大統領で、民主党の候補者の一人となっているバーニー・サンダースは、ステファニー・ケルトン教授を経済顧問に迎え、理論武装をしている。「反緊縮」を掲げ、政府が主導して公共事業を行って、仕事を作るべきだと訴えている。

 英国労働党のジェレミー・コービン党首も、「人民の量的緩和」を提案している。イングランド銀行が供給するマネーを国立投資銀行に提供し、ここを通じて、住宅建設などに投資しようと訴える。

 山本も松尾も、こうした海外の左翼の潮流に乗っている。日本政府は、日本円建ての政府債務残高をどれだけ増加させても、必要なお金は、通貨を増発して賄える。だから、もっと政府は借金をして、お金を使うべきだ、と考えている。

 安倍首相は、この理論に明確な同意はしていない。MMTに関する見解を問われると、「危機があれば日本の言わば円が買われるということでありますから、日本の信用は十分にあるということでありますが、同時に、財政再建は進めていきたい」(2019年4月4日、参院決算委員会)と言葉を濁している。

 とはいえ、やっていることの土台は、MMTとほとんど変わりがない。

 7年間、これだけ大規模な財政出動と金融緩和を続けてきたにもかかわらず、当初掲げていた目標は達成できていない。ゆるやかな景気回復は続けているものの、物価上昇率2%にはほど遠く、最大の狙いであったデフレ脱却はできていない。

 2020年には、東京五輪・パラリンピックが開催される。終了後は、五輪に向けたインフラ整備の需要はなくなる。外国人観光客の増加もアタマ打ちになるかもしれない。東京五輪という大イベントをターゲットにして、進められてきた街づくりなどのプロジェクトが一段落すれば、景気が一気に悪化する可能性は否定できない。

 日本政府の財政状況は、悪化の一途をたどっている。政府の借金(公債発行残高)は、2020年3月末に897兆円になる見通しだ。7年前の安倍政権発足直後から約200兆円も増えている。安倍首相が、財政再建よりも、公共事業や国民へのばらまきを優先してきた結果だ。

「安倍1強」と言われる状況のなか、政府の借金の増加を食い止めようという政治勢力は、与野党を通じてほとんどいなくなった。政治的には「反安倍」であるれいわ新選組は、経済政策で安倍首相に極めて近い。旧民主党の系譜を受け継ぐ立憲民主党や国民民主党の中にも、れいわ新選組に歩調を合わせて、消費減税を求めるグループが勢いを増している。

 右も左も究極まで突き進むと、ぐるっと回って同じ境地に行きつく。日本の政界は、経済政策においては、右も左もなくなり、与野党が「反緊縮」一色になった。政府が返済のことを考えることなく、際限なく借金し続ける。そんな国に、どんな未来が待っているのだろうか。(朝日新聞記者・鯨岡仁)

【おすすめ記事】「美智子さまが安倍首相を痛烈批判」 誕生日文書裏読みの真相


このニュースに関するつぶやき

  • にてるなら大事にしてやれよ、AERA(笑)
    • イイネ!22
    • コメント 5件
  • にてるなら大事にしてやれよ、AERA(笑)
    • イイネ!22
    • コメント 5件

つぶやき一覧へ(17件)

あなたにおすすめ

前日のランキングへ

ニュース設定