佐藤千亜妃が同性から支持を得る理由は? 『バズリズム02』特集から考える

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2020年02月29日 08:01  リアルサウンド

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佐藤千亜妃『PLANET』

 バカリズムが司会を務める音楽番組『バズリズム02』(日本テレビ系)の、2月21日放送回テーマは「女子が好きな女性アーティスト」。これまで同テーマで鈴木愛理や緑黄色社会などが出演してきたが、その第3弾としてみゆなとともに佐藤千亜妃が出演した。


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 きのこ帝国のボーカルとして2015年にメジャーデビューした佐藤千亜妃。10代の女子を中心にカバー動画が公開されることも多く、同じくスタジオゲストとして登場したみゆなもきのこ帝国のカバーをしており憧れのミュージシャンの一人だという。


 毎日曲を作って常に音楽のことを考えているという佐藤だが、今時女子にどんな所が刺さっているのか“好きポイント”をファンに聞いたところ「夜に聴きたくなる歌詞」という回答が多かった。また、佐藤の歌詞にどハマりしているというYouTuber芸人のフワちゃん。一見意外な組み合わせの二人だが、佐藤がSNSでフワちゃんについて「面白い」と反応したことがきっかけで今では遊びに行く仲でもあるのだそう。フワちゃんは佐藤の歌詞について、「毎回新鮮な曲になっていて、“伊坂幸太郎”のよう」だと表現。作品ごとに全く違うカラーがあり、ウィットに富んだ言い回しや言葉選びをするところは、確かに両者の作品に共通するところがありフワちゃんのコメントは言い得て妙だと感じた。


 また、『ViVi』の専属モデルや女優として活動するemmaと佐藤はオンラインで公開された映画『CAST:』で共演した仲。emmaは佐藤千亜妃の楽曲「Summer Gate」を自身のラジオで紹介する際に初めて聴いたといい「その時はどんな人が歌っているのかわからなかったが、音楽を聴いて一瞬で好きになった」とコメントし、照れ臭そうにはにかみながら「(共演したあとも)「Summer Gate」が好きすぎて毎回カラオケで歌ってます」と語った。また、emmaは佐藤と話していると「自然と恋バナになる」そうで、恋愛相談に乗ってもらうことが多いとも明かしていた。


 地上波の番組に出演することも珍しく、番組内では意外な一面も覗かせた佐藤。「女子が好きな女性アーティスト」が今回のテーマだったが、多くの同性が惹きつけられる理由の一つ“歌詞”に注目してみたい。番組内でフワちゃんが「〈コンビニ〉というワードがよく出てくる」と語っていたが、ほかにも〈交差点〉〈国道〉など、佐藤が描く歌詞は具体的な情景描写が多く、一瞬で景色を思い浮かべられるため自然に歌詞の世界観に感情移入していけるのではないだろうか。一方、たとえば『PLANET』(2019年)の中にははっきり〈大キライ〉(「大キライ」)と言っていたり、〈笑顔が下手な私でいいの?/傷つけたくない 初めてそう思った〉(「空から落ちる星のように」)と二人の関係が深まることを躊躇しているような歌詞が出てくるが、いずれも「本当に相手のことが好きで好きでたまらなかったんだろうな」と想像できる歌詞だ。逆の言葉を並べているのに「好き」という気持ちを連想させる、いわば“行間”を読む女心の描写が秀逸な佐藤の歌詞が共感を得ているのだと感じる。


 また、番組では彼女の多才さもフィーチャーされていた。19歳のときにきのこ帝国を結成し、ボーカル・作詞・作曲を担当しており、他アーティストのサウンドプロデュースを務めるなど音楽面での手腕は言わずもがなだが、前述の『CAST:』のほか映画『包帯クラブ』、ドラマ『ホタルノヒカリ2』など演技の実力も持ち合わせており、さらにモデルとしても活動するなどマルチな活躍を見せている。音楽ファンのみならず数々のミュージシャン、タレント、俳優からも支持されている佐藤千亜妃が番組内で見せた等身大の姿には、多くの女性が親近感を抱いたのではないか。きのこ帝国の活動を経てソロアーティストとしてどんどん新たな表現に向かう佐藤千亜妃は、今後も私たちの目も耳も惹きつける存在となっていくのだろう。(神人未稀)


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