「同性カップルにも異性の事実婚と同じ法的保護」二審も認める、同性婚訴訟にはずみ

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2020年03月04日 17:42  弁護士ドットコム

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アメリカで結婚し、日本で7年にわたり同居していた女性の同性カップルが、異性の法律婚に準じた「事実婚」として認められるのか注目を集めていた裁判の控訴審判決が3月4日、東京高裁(秋吉仁美裁判長)であった。


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東京高裁は、同性カップルへの法的保護を認めた1審・宇都宮地裁真岡支部の判決を支持し、「同性同士でも、婚姻に準ずる関係として法的に保護されるべき」として、同性カップルにも異性同士の事実婚と同じ権利があると判断した。



この裁判で訴えていたのは、関東地方に住む30代女性。パートナーだった女性と第三者の男性との不貞行為によって、事実婚関係が破綻したとして、2人を相手取り、損害賠償を請求。宇都宮地裁真岡支部は昨年9月、元パートナー女性に対し、110万円を支払うよう命じた。これを不服として、元パートナーの女性が東京高裁に控訴していた。



原告代理人の白木麗弥弁護士は3月4日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見。「東京高裁でこの判決が出たことに意義がある」と語り、現在、各地の地方裁判所で同性婚の制度実現を求める訴訟への影響を示唆した。



●「単なる同居ではなく、婚姻に準ずる関係」

訴状などによると、女性と元パートナー女性は2010年に同居を開始、2014年にアメリカで結婚式を挙げた。2015年には、国内で人前式も行なっている。しかし、2017年に元パートナー女性と第三者の男性の不貞行為が発覚、女性との関係が破綻した。



裁判では、原告側は同性事実婚であっても異性カップルの事実婚同様、法的保護を受けるべきだと主張。一方、被告側は同性婚については現在、法整備がされておらず、同性事実婚についても、貞操義務や法的保護に値する段階にないとして、全面的に争っていた。



東京高裁は判決で、女性と元パートナー女性が「7年間同居していたこと」「アメリカで婚姻登録証明書を取得して結婚式を行った上、国内でも結婚式を挙げ、披露宴も行っていること」「子育てをすべく、マンションの購入も進めていたこと」などの事実を認定した上で、女性と元パートナー女性との関係を次のように認めた。



「単なる同居ではなく、同性同士であるために法律上の婚姻の届出はできないものの、できる限り社会観念上、夫婦と同様であると認められる関係を形成しようとしていたものであり、男女が協力して夫婦としての生活を営む結合としての婚姻に準ずる関係にあったということができる」



●「社会情勢を考慮すれば保護される利益は否定できない」

また、同性カップルの貞操義務については、「同性カップルにおいても、両者の合意により、婚姻関係にある夫婦と同様の貞操義務などを負うこと自体は許容される」とし、次のように結論づけている。



「世界的にみれば、令和元年5月時点において、同性同士のカップルにつき、同性婚を認める国・地域が25を超えており、これに加えて登録パートナーシップなどの関係を公的に認証する制度を採用する国・地域は世界中の約20%にのぼっており、日本国内においても、このようなパートナシップ制度を採用する地方自治体が現れてきているといった社会情勢を併せて考慮すれば、同性同士であるということだけで法律上、保護される利益があることは否定できない」



●「立法による解決がなければ、司法で」

白木弁護士は会見で、「東京高裁の判決は、具体的にどのような場合に同性カップルが事実婚として法的保護にあたいするのか指示していますので、他の同性カップルにも適用されるように示唆されているのかなと思いました。かなり影響力のある判決を出してくださったと思っています」とその意義を語った。



また、全国で展開している同性婚訴訟への影響も指摘。「同性カップルが暮らしていく中で、別れもあり、色々な不都合を被ることがありますので、やはり立法による解決がないのであれば、司法による解決しかないと思います。それが一歩進んだことが大事です」と話した。



原告の女性は白木弁護士を通じて、「性別が異なることのみで、実際は異性婚と変わりない状況だったので、認められてほっとしています。自分としては、相手の人(元パートナー女性)には当事者の権利を狭めることはしてほしくないと考えています」とコメントした。


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