「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『酔うと化け物になる父がつらい』

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2020年03月06日 20:02  リアルサウンド

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写真『酔うと化け物になる父がつらい』(c)「酔うと化け物になる父がつらい」製作委員会
『酔うと化け物になる父がつらい』(c)「酔うと化け物になる父がつらい」製作委員会

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、金麦を手放せない安田が『酔うと化け物になる父がつらい』をプッシュします。


参考:『酔う化け』の真摯な姿勢が誘う共感と感動 “やめられない”現実を人はどう乗り越える?


■『酔うと化け物になる父がつらい』
 原作は、秋田書店のWebサイト『チャンピオンクロス』にて連載され反響を呼んだ、菊池真理子によるコミックエッセイ。池田エライザ主演で映画に加え、MBSでドラマ化もされた『ルーム・ロンダリング』が話題になった片桐健滋監督がメガホンを取ります。


 主人公のサキは、酔うと“化け物”になる父のおかしな行動への悩みから、徐々に自分の気持ちに蓋をして過ごすようになる。自分とは正反対で明るく活発な妹や、学生時代からの親友に支えられ、家族の崩壊を漫画として笑い話に昇華しながらなんとか日々を生きるサキ。そんなある日、アルコールに溺れる父に病気が見つかってしまう。


 お酒を嗜む方なら、誰しも一度や二度くらいは忘れてしまいたいくらい恥ずかしい失敗をしたことがあるのではないでしょうか。記憶を飛ばしてしまったり、朝起きたら荷物が全てなくなっていたりといったことや、中には酔った弾みで誰かと喧嘩になってしまったりなど様々。“アルハラ”といった言葉が浸透し始めてしばらくが経ちましたが、お酒は人間関係を円滑にしたり日々の癒やしとなったりと便利なツールですが、様々なトラブルの火種にもなり得ます。


 本作で渋川清彦さんが演じる田所トシフミは、お酒を飲むと毎回記憶がなくなるまで飲んでしまい、泥酔状態で帰宅。娘との休みの約束はすっぽかして、飲み仲間と昼間からお酒を飲みながら麻雀に興じるなど、典型的なダメ親父です。さらに母のサエコは、新興宗教にハマっており、映画の序盤から一家はほぼ家庭崩壊状態です。


 観始めたときは、「なんて救いのない映画なんだ」と驚きました。実際、主人公のサキもそんな父に明確な反抗の意思を見せるわけでもなく、何が起きても「仕方ない」と思っているようにも見えます。母がいなくなった後お酒を控えるようになった父も、しばらく経つとボジョレー・ヌーヴォーの解禁とともに、自身もお酒を解禁します。


 それでも、そんな光景から目を逸らさずに誠実に映し続けることこそが、リアルを撮るということなのかもしれません。いくら努力しても歯車を正常に戻すことはできないし、それでも回り続けるのが、現実です。お父さんも、完全な悪役ではなくお酒の過ちを噛み締めながら、それでもやめられない苦しさを抱えています。


 そんな本作の現実感に大きく貢献しているのが、サキを演じた松本穂香さんです。昨年から『おいしい家族』『わたしは光をにぎっている』と主演作が続き、今年の秋には角川春樹の最後の監督作『みをつくし料理帖』でも主演を務める松本さんですが、日常に諦めを感じつつも、それでも現状の不満をどうすればいいのかわからない、そんな葛藤抱えながらスクリーンの中に確かに生きていました。だからこそ、サキが父に今まで抱えてきた激情をぶつけるシーンは本作の白眉であり、一見の価値ありです。


 先ほど「救いがない」と言いましたが、本作の最初と最後でサキが流す涙は、本作を象徴しています。その涙の解釈を、映画が終わった後も噛み締め続けることこそが、この映画の“救い”であり、私たちの日常と地続きになっている、外に拓けた作品であると感じるのです。(リアルサウンド編集部)


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  • あ〜、うちに近いなw糞親父はあるチューだったし、最後は、テメーが作り出した障害者残してせっせと死んだからなw
    • イイネ!2
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