「婚姻に準ずる」同性カップルの不貞慰謝料判決、同性婚法整備への道は開けるか

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2020年03月11日 10:52  弁護士ドットコム

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同性カップルの間で不貞行為があった場合にも、異性カップルの内縁関係と同様の権利が認められるかどうかが争われた裁判の控訴審判決が3月4日、東京高裁で言い渡された。


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秋山仁美裁判長は「同性同士でも、婚姻に準ずる関係として法的に保護されるべき」として、不貞行為をした元パートナーに110万円の損害賠償を命じた一審・宇都宮地裁真岡支部判決を支持。同性カップルにも「婚姻に準ずる」権利があると判断した。



今回の判決がもたらす影響について、森伸恵弁護士に聞いた。



●同性カップルだから保護しないのは差別だと解釈している

今回の裁判のポイントはどこにあるのか。



「同性カップルの関係も、内縁関係(事実婚)としての保護を受けるか、という点です。



高裁は『他人同士が生活を共にする単なる同居ではなく』、『夫婦と同様であると認められる関係を形成しようとしていたものであり、男女が相協力して夫婦としての生活を営む結合としての婚姻に準ずる関係にあった』と述べました。



要は、同性カップルであっても男女の事実婚(内縁関係)と同様に、婚姻に準ずる関係にある場合には、不貞をしたパートナーに慰謝料を請求できると判断しました。



さらに、『事実上の夫婦でありながら、異性と同性とで法律上の保護に値する利益の差異を設けることは性別による差別の取扱いである』と判示し、同性婚を認められていない同性カップルだからということで保護しないのは差別と解釈しており、踏み込んだ判断と言えます」



●同性間だから慰謝料の金額を下げるわけではない

今回、一審判決と同様に、110万円の損害賠償が認められた(請求は310万円)が、どう考えればいいのか。



「日本では同性婚は認められていませんが、高裁は『性別によって差異を設けているのではなく』、『婚姻に準ずる程度とその保護の程度は、それぞれの関係の実態に基づいて判断する』と判示しました。



同性間だからということで異性婚の不貞慰謝料よりも金額を下げるのではなく、それぞれのカップルの関係性の程度に基づいて慰謝料の金額を決めると判断しており、現在、立法よりも司法の判断の方が進んでいると考えます」



●高裁の考え方に立つと、憲法論に踏み込む必要がない

一審判決では、「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」するとした憲法24条1項について、憲法制定時は同性婚が想定されていなかったからにすぎず、同性婚を否定する趣旨とまでは解されないとの見解を示していたが、控訴審判決では、憲法解釈については踏み込まなかった。一審と控訴審判決の違いをどうとらえているか。



「一言で違いをあらわすと、一審判決は法律重視、控訴審判決は実態重視ということでしょう。



一審判決は、『現在の法律上では認められていない同性婚の関係であることからすると』、『法的保護に値する利益の程度は、法律婚や内縁関係において認められるのとはおのずから差異がある』と法的安定性を重視していました。



他方、控訴審は、同性婚が法制されていなくとも、二人の関係が事実婚といえるほどの強い関係の場合は保護されるとし、二人の実際の関係性、生活実態をもとに判断し、さらに、保護を認めることは、現在のパートナーシップ証明制度が増えている現在の社会の実態から見ても法的安定性を失うことにはならないと判断しました。



つまり、高裁の考え方に立つと、二人の関係が婚姻に準ずる関係にあるかという点のみ判断すれば足り、憲法論に踏み込む必要性はありません。



とはいえ、一審判決も控訴審判決も、パートナーの不貞により同性カップルの関係を壊されてしまった原告を保護するという価値判断を持っていてくれていたことは同じです」



●「婚姻に準ずる関係」の判断要素

今後の法整備の動きにどんな影響を及ぼすのか。



「今後、本裁判と同様に、婚姻に準じる関係にある同性カップルのパートナーが不貞を行った場合、不貞をされた側は同じように損害賠償請求をするケースが増えると考えられます。



その際、自分たちが『婚姻に準ずる関係』といえるか分からない方もいるかもしれませんので、判断要素をお伝えしておくと、



【婚姻に準ずる関係といえるかの判断要素】 ・交際開始時期、交際期間 ・共同生活の期間 ・地方自治体のパートナーシップ証明の取得、パートナーシップ契約の有無、海外での同性婚 ・任意後見契約や遺言の有無 ・二人の関係を周囲の人に明らかにしているか ・結婚式や披露宴の有無 ・一緒に暮らす住宅の購入 ・共同して子供を育てる約束、若しくは既に一緒に子育てをしているか 生活費の分担等 等になります。



同性カップルの場合、自由恋愛(浮気は問題ない)と考える方もいますが、今後、同性カップル間においても貞操義務を負っているという社会通念ができていくかもしれません。



さらに、本裁判は、同性カップルにおいても婚姻に準ずる関係にある場合は保護されるべきと司法が判断したわけですから、日本における同性婚の法整備にもプラスの影響を及ぼす(場合によっては日本での同性婚の法制度化も早まるのでは)のではと考えます」




【取材協力弁護士】
森 伸恵(もり・のぶえ)弁護士
東京弁護士会所属。主にLGBT法務(婚姻契約書・パートナーシップ契約書作成、同性カップルの浮気・関係解消、友情婚、アウティング対応、フレンドリー企業サポート)、エンターテインメント法務(タレント、芸能プロダクション、知的財産)等を扱う
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/


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