『テセウスの船』鈴木亮平を襲う村人たちの悪意 それぞれの“正義”が交錯し物語は最終局面へ

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2020年03月16日 06:01  リアルサウンド

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写真『テセウスの船』(c)TBS
『テセウスの船』(c)TBS

 音臼小事件を起こそうとした犯人の狙いは佐野文吾(鈴木亮平)だった。『テセウスの船』(TBS系)第9話で加藤みきお(柴崎楓雅)に呼び出された佐野は、何者かに襲われて意識を失う。田村心(竹内涼真)がかけつけた時、そこに佐野はおらず、パトカーに横たわるみきおの姿があった。


参考:竹内涼真と鈴木亮平にツッコミ多発注意報! 愚直な親子の掌で転がされる『テセウスの船』の楽しみ


 真犯人と思われたみきおが青酸カリ中毒で意識不明となり、新たに事件を捜査する県警の馬淵(小籔千豊)は、姿を消した佐野に疑いの目を向ける。同じ頃、駐在所の机には、心が未来から持ってきたノートがあった。ノートには12年前の1977年3月19日に行われた村祭りのチラシが挟まれていた。チラシを犯人からのメッセージであると考えた心は、チラシに名前があった校長の石坂(笹野高史)を訪ねていく。


 第3話で心が投げ捨てた「未来ノート」は、みきおが拾い、何者かの手に渡った後、持ち主の元に戻ってきた。ストーリー序盤でノートが犯人にわたったことは、心にとって大きな誤算だった。ノートを見ることで、犯人は計画が失敗しないように先回りして手を打つことができるからだ。音臼小事件が不発に終わった今、犯人の目論見は外れたようにも見える。しかし、追い込まれたのは心たちだった。


 犯人は、失敗する可能性のあるお楽しみ会での犯行を避け、次なる計画に向けて準備を進めていた。ここから起きるのはノートに記されていない事件であり、ノートはもう用済みだ。犯人はそう言っているように見える。また、チラシを使って心にヒントを出すなど、犯人には自己の犯罪を誇示する偏執的な面もあるようだ。


 音臼村に残る「因縁」も明かされた。石坂によると、12年前の村祭りで、徳本(今野浩喜)の母親が炊き出しのキノコ汁に入っていた毒キノコを食べて亡くなっており、前回放送で、田中正志(せいや)と徳本が話していた「あんなこと」はこの事故を指している。佐野も当時のことを覚えているようで、今回の事件とのつながりが気になる。


 みきおに代わる共犯者については、その正体をめぐっていよいよ問題の核心に入りつつある。共犯者は佐野に濡れ衣を着せるために、みきおをおとりにして佐野を呼び出しており、馬淵は監禁場所から脱出した佐野を留置場に入れる。その間、不法投棄されたゴミの中から「駐在日誌」というラベルの貼られたフロッピーディスクが見つかる。馬淵が佐野のワープロを調べると、一連の事件の犯行記録が保存されていた。そして青酸カリが佐野家の裏庭から見つかる。


 不法投棄を通報したのは田中正志で、監禁場所で犯人が握っていたナイフは徳本のものだ。心の正体を不審視していた石坂や、「図体でけえからなあ、あいつは」と意味深な言葉を発する井沢(六平直政)も含めて、村全体が佐野に向かってくるような錯覚に陥った。佐野に警察の目を向けさせ、そのタイミングで物証をそろえてすべての罪を佐野に着せる。確実に佐野を死刑にするため周到に張り巡らされた罠と、佐野に向けられた強烈な悪意に身震いした。


 ここに来てクローズアップされてきたのが「正義」という言葉。いかにも日曜劇場らしいテーマではあるが、佐野が生まれてくる心に付けようとした名前であり、馬淵が守ろうとするのも「警察全体の正義」である。また、みきおが佐野を憎むのは、鈴(白鳥玉季)にとっての「正義の味方」になるため。それぞれ正義を実現しようとしながらも、犯罪や権力の横暴にも結びつくという矛盾も抱えている。


 佐野が目指す正義は、家族や村の人の笑顔を守ることだ。最悪の事態が次々と起こる中で、唯一の希望は、警官に両脇を押さえられながらも家族に向けて佐野が見せる笑顔。なすすべなく佐野を見送るしかない心は、未来を守ることができるのだろうか?


(文=石河コウヘイ)


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