「ZOZOMAT」はサイズ計測精度向上? "あの"スーツの悪評判を払拭し、靴専門モール「ZOZOSHOES」は成功なるか

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2020年03月22日 19:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

――ファッションライター・南充浩氏が、いま話題のファッションニュースに斬り込む!

 2019年夏前に発表され、同年秋冬に送付を開始する予定だった足の計測器「ZOZOMAT(ゾゾマット)」が、当初の予定より約半年遅れで、先頃から配布が開始。これと連動して3月4日には、衣料通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」内に靴販売の専門モール「ZOZOSHOES(ゾゾシューズ)」がオープンしました。

 昨年夏、ZOZOがYahoo!に買収されたことによって、立ち消えになったかと思われていたゾゾマットですが、開発は継続していたということになります。

 今回発表されたゾゾマットは、マーカーが印刷された紙という形態です。紙を床に広げ、印刷された足型に自分の足を合わせて置き、その周りのドット柄のマーカーをスマホで読み取ることで、ミリ単位の3D計測ができます。

 足のサイズというのは、縦の長さのことを指すと思われているかもしれませんが、それだけが重要ではありません。足の幅、甲の高さも重要で、全てが合った靴でなければ、フィット感は得られないのです。例えば、ナイキやアディダス、プーマといった欧米ブランドのスニーカーは、幅狭めかつ甲が低く作られている場合が多く、それは欧米人の足型の特徴に合わせているから。しかし、幅広で甲高という足型の特徴がある日本人は、これらのスニーカーを履く際、縦の長さのフィット感を求めると、足の幅と甲の高さに窮屈さを感じてしまいます。縦の長さが長くなるに従って幅は広くなり、甲は高くなるので、通常より0.5〜2センチくらい大きなサイズの物を選ばなくてはなりません。

 つまり完全にフィットする靴を見つけるためには、縦の長さだけでなく、幅の広さ、甲の高さを、3D計測でしっかり把握することが必要になるのです。

 さて、そんなゾゾマットの計測精度を考察していきたいと思います。皆さんは以前発表され、不評の結果廃止となった採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」を覚えているでしょうか。これは、スーツにプリントされた水玉柄のマーカーを読み取ることにより、体型サイズをミリ単位で正確に計測する技法が用いられていました。ゾゾマットは、ゾゾスーツと基本的な仕組みは同じだと言えますが、ゾゾマットの方が、計測精度は高いと思われます。

 ゾゾスーツは、計測サイズに誤差が頻繁に起きたと言われており、その理由は、水玉柄のマーカーが着用時にズレたり伸びたりしてしまうからだと考えられます。もし、ゾゾマットが水玉柄のマーカーをプリントした「靴下タイプ」だったら、同じように計測ミスが頻発されたと推測できるのですが、実際のゾゾマットは、先述した通り、印刷された紙を床に置き、そこに足を乗せるタイプなので、マーカーの位置がズレる心配はほとんどありません。ですからサイズの計測ミスがスーツに比べて低くなると考えられるというわけです。

 そもそも靴は、洋服以上にサイズが命。というのも、靴は5ミリでサイズピッチが刻まれていて、5ミリ小さいだけでも足入れさえできなくなるため、ミリ単位の正確な計測が求められるのです。思い返せば、ゾゾスーツも「ミリ単位の計測」を謳っていましたが、結果的に計測の誤差が多発。顧客の信用回復という意味でも、ゾゾマットではさらに高い計測精度を実現させなければいけなくなったとも言えます(ちなみにゾゾスーツに関してですが、はっきり言って、ほとんどの衣服にミリ単位の精度は必要ありません。なぜなら生地は伸びるから。1〜2ミリの差なんて、服でいうなら許容範囲の誤差でしかなく、当初からその狙い自体がズレていたとしか言いようがありません)。

 ZOZOサイドも、精度向上は必須という認識だったようで、同社の伊藤正裕取締役COOは、国内・海外の最新ファッションニュースを配信する「WWDジャパン」のインタビュー記事で、「技術検証は6万回、時間にして延べ5000時間と、時間も手間もかなりかけたことも遅れた原因だ」と語っています。見切り発車感の強かったゾゾスーツとは雲泥の差です。加えて、靴ではPB(プライベート)は作らないことも明言しているのですが、これもゾゾスーツと連動させたPB服が、まったく売れなかったことへの反省が生かされていると言えます。

 そんなゾゾマットは、靴のネット通販にどのような影響を与えると考えられるのでしょう。

 そもそも靴は、少々小さくても着用できることが多い服とは違って、少しサイズが小さいだけで、痛くて歩けないことすらあり得るもの。もちろん、「返品交換無料」という商品やサイトもありますが、それとて、その手続きが面倒くさく、やはり最初から実店舗で試着して購入するほうがはるかに楽ですから、ネット通販で靴を買うのは、従来「非常にハードルが高い」とされてきました。

 もし躊躇なくネット通販で購入しようとすると、その靴や、そのブランドのサイズ感を完全に把握しなければなりません。例えば、昨年私は、5,000円前後に値下がりしたナイキの「エアマックスシリーズ」をAmazonで4足買いましたが、これは以前、ナイキのエアマックスインビガープリントというスニーカーを購入した経験があったからです。そのときは、27.5センチを購入し、着用はできたものの、どうも少し小さめだと感じました。我慢して何カ月か履いたのですが、長時間履くと足がすごく疲れてしまい、やっぱり「少し小さめ」という結論に至ったのです。ですから、エアマックスシリーズの商品を買う際は、0.5ミリ大きい28.0センチが自分の適正だということがわかりました。そこで念のため、28.0センチのエアマックスフレア50という商品を試しに買ってみたところ、想像通りのサイズだったため、確信を持って、ネットで買うようになりました。つまり、ここまでの経験と類推がないとネットで靴を買うのは至難の業なのです(まあ、足の痛みなど気にしないという人を除けばですが)。

 そう考えると、ゾゾマットの登場は、試着なしのネット通販による靴の購入を大幅に促進できる可能性があります。多くの人が期待しているのも理解できます。

 しかし、実は、ゾゾスーツよりは圧倒的に少ないものの、ゾゾマットの「計測ミス」がネット上で報告され始めているという実情もあります。「ゾゾシューズ」の成功、ひいては靴のネット購入の拡大に、ゾゾマット自体の改良修正は必要不可欠であり、急務だと言えます。それなしではゾゾスーツの二の舞となってしまう可能性も低くありません。ZOZOには真摯に課題点の修正に臨むことが期待されます。
(南充浩)

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